支援の実績

今西事件

ある日、2歳のA子ちゃんは、家で遊んでいる際中に突然「うっ」と言って苦しみ始め、救急搬送された病院で亡くなりました。A子ちゃんの頭蓋内に出血が確認されたため、今西さんは何もしていないにもかかわらず、A子ちゃんの頭部に暴行を加え死なせたとされ、傷害致死罪で起訴されました。

医学的にみて、頭蓋内の出血が心肺停止を原因として生じることは十分に考えられます。そして、乳幼児が感染症や心臓疾患から突然の心肺停止に至る例は数多く報告されています。A子ちゃんの場合、数日前から感染症の徴候が認められた上、心臓からは心筋炎の痕跡が発見されていました。A子ちゃんの突然の心肺停止は、何らかの病気、とりわけ心臓に起因する可能性が高いのです。逆に、検察側医師が外力の根拠とした医学的な所見は、新たな弁護側鑑定でいずれもその存在が否定されています。今西さんは、事件当初から一貫してA子ちゃんに暴行を加えたことはないと無実を訴えています。

A子ちゃんは、救急搬送時、足にギプスをしていました。約1か月前に今西さんと公園で遊んでいた際に骨折したのです。今西さんは、この骨折についても傷害罪でも起訴されています。さらに、A子ちゃんの肛門付近には、1cm程度の傷がありました。A子ちゃんは皮膚が弱く、肛門周囲の皮膚も荒れた状態で、日常生活の中でも十分にできる可能性のある傷でした。しかし、今西さんは、A子ちゃんの肛門に異物を挿入したとして強制わいせつ致傷罪でも起訴されています。

一審では、すべての嫌疑について、医学の専門家の意見が対立しました。その結果、傷害罪については無罪判決が下されましたが、傷害致死罪、強制わいせつ致傷罪について懲役12年の有罪判決となりました。現在、今西さんは控訴審で無実を訴えています。

2022年4月、イノセンス・プロジェクト・ジャパンは今西事件の支援を決定しました。2022年4月22日には今西弁護団、龍谷大学犯罪学研究センター、国民救援会、SBS検証プロジェクトとシンポジウム「虐待えん罪を考えるー今西事件」を共催しています。今後もIPJ学生ボランティアや他の支援団体と連携しながら支援を進めていきます。

湖東記念病院事件

2020年3月31日、大津地方裁判所は、いわゆる「湖東記念病院事件」について、再審公判で無罪判決を言い渡しました。検察官は控訴を断念し、無罪判決が確定しました。
イノセンス・プロジェクト・ジャパンは、2018年1月から、この事件を支援してきました。
この事件では、一人の女性が15年以上ものあいだ自由や尊厳を奪われました。それは、警察の見込み捜査、供述弱者への配慮を欠いた不当な取調べによる虚偽の自白、自白に依存した裁判所の事実認定、不十分な証拠開示(証拠隠し)、不適切な科学的証拠などの、典型的といえるえん罪原因によるものでした。再審請求段階で証拠開示の制度がないことや、検察官による再審開始決定への抗告が認められていることによって、無罪判決までに非常に長い時間がかかり、司法による救済が遅延するという結果になってしまいました。

大阪AHT事件

2020年1月28日、大阪高等裁判所は、女児(事件当時1歳11か月)の頭部に暴行を加えて死亡させたとして、一審で無罪判決を受けていた男性に対して、一審の無罪判決を支持する判決を言い渡し、その後に確定しました。
この事件は、いま各地で無罪判決が相次いでいる「虐待による頭部外傷(Abusive Head Trauma、 AHT)」が問題になった事件です。この事件でも、医学的な証拠の背後にある理論の科学的根拠や、証言のあり方が問題になっていました。イノセンス・プロジェクト・ジャパンは、AHTや、その一類型である「揺さぶられっこ症候群(SBS)」について、諸外国で医学的観点から議論されている状況をふまえて、一審段階からこの事件を支援し、弁護団に加わりました。
この事件の弁護活動は、その後、別のえん罪救済組織である「SBS検証プロジェクト」の設立にもつながりました。

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