
今西事件

今西事件
今西事件とは何か
現代医学界の都市伝説

1971年、イギリスのある医師が、1つの仮説を唱えました。
赤ちゃんの頭部に怪我がないのに、頭蓋内出血が生じている例がある、揺さぶりが原因なのではないか、と。たった2頁の論文でした。そして、著者自身が、あくまで仮説にすぎないと断っていたのです。
ところが、その仮説がいつの間にかアメリカで揺さぶりによる虐待だ、という話に結びつきました。そして、医学的にもっともらしい説明が加えられていったのです。
乳幼児に3つの徴候(硬膜下血腫、網膜出血、脳浮腫)がそろった場合、頭部に「強い回転性の外力」が加えられたことが原因だというのです。
外から見て怪我が見当たらないのは、痕跡が残らない「暴力的な揺さぶり」(虐待)だったからだとされました。
この議論は、揺さぶられっこ症候群(Shaken Baby Syndrome=SBS)あるいは虐待性頭部外傷(Abusive Head Trauma=AHT)として理論化され、多くの医師や虐待防止を訴える人たちに信じられるようになったのです。
しかし、この議論はあくまで仮説にすぎません。
そして、SBS/AHTをめぐる仮説はアメリカ、イギリス、カナダ、スウェーデン、ノルウェー、フランスなど多くの国で、疑問が指摘されるようになり、SBSを疑われた事例で無罪判決が相次ぐようになったのです。
2022年には、アメリカ・ニュージャージー州の上級裁判所で、SBS/AHTの議論について、「ジャンクサイエンス」に類似すると評価されました。

しかし、日本では未だにその都市伝説がまかりとおっています。
今西事件も、この都市伝説にとらわれた冤罪事件です。
A子ちゃんの頭蓋内には出血がありました。
しかし、頭蓋内の出血に見合う外力の痕跡が頭の外表にはありませんでした。
そこで、A子ちゃんには、痕跡が残らない「強い外力」が加わったに違いないとされたのです。
しかし、検察官は一体、どのような暴行だったのかを明らかにできません。
「頭部に何らかの方法によって強度の衝撃を与える暴行」とだけ主張したのです。
「頭部に何らかの方法によって強度の衝撃を与える暴行」では全く何が起こったのかわかりません。何ら根拠はなく、空想に基づく主張にすぎません。
今西貴大さんとA子ちゃん

今西貴大さんとA子ちゃんが初めて出会ったのは、2016年秋のことでした。
ある日、今西さんは当時交際していたBさんから子どもがいることを打ち明けられ、Bさん・A子ちゃんと3人で会うことになりました。
A子ちゃんは、はじめは警戒している様子でしたが、すぐに今西さんと打ち解けました。帰る頃には、A子ちゃんは今西さんが抱っこする腕の中で安心して眠るほどでした。
出会いから約一年後、今西さんは、Bさん・A子ちゃんと一緒に暮らすようになりました。寝付きのよくなかったA子ちゃんがしっかりと眠れるよう、昼間公園に連れて行って遊んだりしました。血はつながっていませんでしたが、今西さんはA子ちゃんのお父さん同然の存在でした。
初めは、今西さんのことを「たー」と呼んでいたA子ちゃんですが、今西さんとBさんが結婚するころには、すでに「パパ」と呼んでいました。今西さんは、Bさんと相談して、A子ちゃんを今西さんの養子にすることにしました。
Bさんと結婚してからも、A子ちゃんを公園に連れていくのは今西さんの役割でした。毎日朝早くから仕事に行き、仕事から帰ってくれば、お風呂に入れたり、おむつを替えたりしていました。A子ちゃんが夜なかなか寝つけないときは、一緒に散歩にいったり、添い寝をしたりもしていました。
今西さんとBさん、A子ちゃんは、一緒に買い物に行ったり、夏には花火をしたり、今西さんの仕事が休みの日にはサファリパークに行くなど、とても仲がいい家族だったのです。
A子ちゃんの異変

A子ちゃんは、容態が急変する数日前から体調がよくありませんでした。
数日前から咳がみられ、お風呂で吐くということもありました。下痢もしていました。
心筋炎などの感染症によく見られる症状です。この時点で、A子ちゃんは感染症にかかっていた可能性が高いのです。
そして、2017年12月16日、今西さんはいつもの通り朝早くから仕事にいきました。
A子ちゃんは調子がよくなかったようです。普段はあまりしない昼寝をし、少し熱っぽい様子でした。A子ちゃんは、食欲がなかったのか、夕食のパスタを残していました。
事件の前兆はこの時点でも現れていたのです。
夕食をとった後、Bさんは外に出かけ、A子ちゃんと今西さんは二人になりました。
A子ちゃんは、少し元気がありませんでした。
今西さんはA子ちゃんを元気づけようと、A子ちゃんを抱き抱え、布団の上でゴロゴロと転がる遊びもしました。いつもA子ちゃんはこの遊びをすると、ケラケラ笑い、喜びます。
この日もA子ちゃんはケラケラ笑っていました。
しかし、いつもと違うことが起こりました。
急に「うっ」という声がして、A子ちゃんの声が消えました。
A子ちゃんの顔色はみるみる悪くなり、呼吸も止まっていました。嘔吐もしました。明らかにA子ちゃんの様子がおかしくなったのです。
今西さんは慌ててBさんを電話で呼び、すぐに119番通報をしました。
「早く来てください」
「もう全然息してないんですよ」
今西さんは、パニックになりながら119番で教えられた心臓マッサージを必死にしました。しかし、数分後に救急隊が駆けつけたとき、A子ちゃんの心臓は停まっていました。約30分後、搬送された病院でA子ちゃんの心臓は、一旦は動きを取り戻したものの、約1週間後の2017年12月23日、A子ちゃんは亡くなってしまいました。
解剖医のミス

「これは本当にひどい鑑定書です。」
今西さんの一審の裁判が始まる前、A子ちゃんを解剖した医師が作成した鑑定書をみて、法医学者のY医師は、弁護団にそういいました。そして、解剖時に作成されたプレパラートをきちんと確認する必要があると弁護団にアドバイスしました。
弁護団は、Y医師のアドバイスのとおりに顕微鏡をレンタルし、協力してくださる病理の先生を探して、顕鏡に行きました。すると、驚くべき事実が発覚したのです。
なんと、心筋炎の痕跡がA子ちゃんの心臓の細胞から発見されたのです。
しかし、鑑定書にははっきりと、「心筋病変なし」と記載されていました。A子ちゃんの解剖にあたった医師は、心筋炎の痕跡を見逃していたのです。
また、A子ちゃんの解剖にあたった医師は、脳挫傷があったと鑑定書に記載していました。脳挫傷とは、外力が加わったことによって細胞に傷ができた状態をいいます。脳挫傷の存在は、外力を示す根拠となりえます。しかし、検察官から開示されたプレパラートをみても、脳挫傷はありませんでした。
Y医師のいうとおり、A子ちゃんの解剖にあたって作成された鑑定書は、「ひどい鑑定書」だったのです。
突然死の可能性

また、A子ちゃんの心臓には「心筋炎」の痕跡がありました。心筋炎は、風邪のような症状から、突然心臓の異常を引き起こし、最悪の場合、死に至ることもあります。
A子ちゃんには、容態が急変する数日前から咳、嘔吐の症状がありました。容態が急変した日も、熱っぽい様子やパスタを残すなど、元気がない様子でした。これらの症状は、心筋炎に限らず、感染症によくみられる症状です。感染症は、それ自体として心臓を停止させ、突然死を招くことがあります。
A子ちゃんは心筋炎やその他の感染症により心臓停止に至った可能性がありました。
さらに、容態が急変したとき、A子ちゃんは嘔吐をしていました。嘔吐したものがのどにつまるなどし、窒息により心臓停止に陥った可能性もあります。
A子ちゃんは何らかの原因によって心臓停止に陥った可能性があるのです。
搬送された先の病院で、A子ちゃんの頭蓋内には出血が確認されましたが、これは心臓停止後の心拍再開によって説明がつきます。
そもそも人間の血管は、酸素が常に行きわたることで形を保っています。しかし、心臓が停止し、酸素が行きわたらなくなると、脳内の血管の壁は脆くなり、出血しやすくなります。その後、心拍が再開すると、もろくなった血管に血液が流れ込むことで、頭蓋内で出血が起こってしまうのです。
A子ちゃんの頭蓋内に出血があったことから、今西さんが暴力を振るったと疑われました。しかし、A子ちゃんの出血は、心臓停止があったことで全て説明がつくものでした。
捜査機関の横暴

今西さんは、2018年11月に傷害致死罪で逮捕され、2018年12月に保釈されました。
しかし、捜査機関は、2019年2月、今西さんを蒸し返すように逮捕し、強制わいせつ致傷罪、傷害罪で起訴したのです。
A子ちゃんは、病院に搬送されたとき、肛門周囲にわずか1cmほどの傷がありました。捜査機関は、肛門周囲のわずか1cmの傷を以て、今西さんがA子ちゃんの肛門に異物を挿入したのだというストーリーを作り出し、強制わいせつ致傷罪で起訴したのです。
A子ちゃんは、皮膚が弱く、生後間もないころから頻繁に皮膚科に通っていました。自宅からは処方された大量の塗り薬も見つかっています。A子ちゃんの肛門周囲の皮膚も弱く、切れやすい状態だったのです。
また、A子ちゃんは、当時左足を骨折してギプスをしていたため、お尻を床に付けて部屋の中を移動していました。自然排便や日常生活(お尻での移動等)で生じる少しの刺激で、A子ちゃんの肛門は切れてしまった可能性があります。少なくとも、虐待を疑うような傷ではありませんでした。実際、異物を挿入したとすればあるはずの肛門内部(肛門管上皮)の傷は、A子ちゃんにはありません。
今西さんは、取調官から「お前をもう1回パクって(逮捕して)閉じ込めるために、A子のお尻にあった傷から自分たちの考えた一番強い被疑事実で逮捕した」と言われました。捜査機関は、今西さんの身体拘束のために、そして虐待親というイメージを作り出すために、無理矢理事件を作り出したのです。

さらに、今西さんに虐待親のレッテルを貼ろうとする捜査機関の横暴はこれに止まりません。
A子ちゃんは、救急搬送時、ギプスをしていました。急変する約1か月前に今西さんと公園のすべり台で遊んでいたとき、今西さんが連れていた犬に気を取られて目を離したすきに、左足の膝下辺りの骨にひびが入ってしまったのです。捜査機関は、この骨折をも今西さんの暴力によるものだとして、傷害罪として起訴したのです。
A子ちゃんの骨折はわずかなヒビだったため、病院でも当初見落とされていました。今西さんは、A子ちゃんがそれでも足を痛がる様子をみて、A子ちゃんを何度も何度も病院に連れて行っています。今西さんが虐待をしてA子ちゃんに骨折させたとすれば、あまりに不自然な行動です。
捜査機関は、全く別の機会に生じた証拠の薄い3つの事件で起訴し、今西さんが日常的にA子ちゃんに暴力を振るっているかような印象を抱かせようとしていたのです。
傷害罪について、当然ながら今西さんが虐待を行ったという証拠はなく、一審では無罪判決が下されました。あまりにも当然の結論です。
しかし、判決の内容は、今西さんの説明が疑わしいことを強調したものでした。捜査機関の印象操作は成功し、強制わいせつ致傷罪については一審で有罪判決が下されてしまいました。
医師証人の誤り

今西さんは、2018年11月に傷害致死罪で逮捕され、2018年12月に保釈されました。
検察側証人である脳神経外科医は、CTから脳内に微小な出血が確認でき、揺さぶりによって多くの脳神経が切れてしまった(びまん性軸索損傷といいます)と主張しました。
しかし、CTではそのような微小な出血や脳神経の切断を確認できないことは医学界の共通認識です。
その医師は、揺さぶりによって、A子ちゃんの脳内には、交通事故並みの外力が加わったとも証言しました。人間の手で揺さぶったからと言って、2歳4か月だったA子ちゃんの脳の中に、交通事故並みの外力を及ぼすことができるはずもありません。しかも、外力による頭蓋内の損傷で、A子ちゃんのような症状が生じるためには、脳幹という脳の中心にまで影響が及ぶような外力が加えられる必要があります。
そのようなことは物理学的にあり得ません。そもそも、A子ちゃんの脳表面には外力の痕跡は全くありませんでした。

脳の表面には損傷なく、中心部にのみ損傷が生じるというのはおかしな話です。金魚鉢を叩いても金魚が死なないのと同じことです。

実は、その医師は、英文の論文を誤読していました。その論文には、揺さぶりについては全く触れていません。ところが医師は、論文の意味を取り違えて、揺さぶりによって、交通事故のような強い外力が生じると思い込んでいたのです。その医師も、弁護側の指摘を受けて、論文を誤読していたことを認めざるを得ませんでした。
ところが、一審裁判所は、その医師の証言を正しいとして、今西さんに有罪判決を下したのです。
裁判所の予断

捜査機関の横暴により、「今西さん=虐待親」というイメージが作り上げられました。そのイメージ(予断)は、裁判官すらも偏見にまみれさせました。
一審の裁判官は、検察官の主張する傷害罪、強制わいせつ致傷罪、傷害致死罪に関して、今西さんにこう問いかけました。
「これら、およそ1か月ぐらいの間で立て続けに起こってると思うんですけれども、そうやって1か月立て続けにこういう風にA子ちゃんにいろんなことが起こっているということに関して、今、あなたはどうお考えですか。」
この質問は、3つの事件が全て今西さんの犯行で間違いないといえて初めて成り立つものです。しかし、それがわからないからこそ(その真偽を判断するために)裁判は行われているのです。
実際、傷害罪は無罪になっているのですから、「立て続けに起こっている」とはいえません。ましてや、ここで確率論を持ち出すことも誤りです。有罪か無罪は確率で判断するものではなく、証拠に基づいて判断すべきです。
今西さんが無実であるという主張は、公判当初から、既に繰り返し法廷で述べていました。何もしていない今西さんが、このような質問に答えられるはずがないのです。それにもかかわらず、裁判官はこのような問いかけを今西さんに対して行ったのです。
裁判所は、捜査機関の思惑どおり、今西さんは虐待親なのだという予断に満ちた目で今西さんを見ていました。
一審判決の誤判

一審判決は、今西さんに懲役12年の有罪判決を下しました。
傷害罪について無罪判決を下す一方、検察側証人の証言の信用性を認め、傷害致死罪、強制わいせつ致傷罪については有罪としました。
検察側証人の証言の信用性を認めた理由はこうです。
「高度の法医学的知見に基づくものと認められる。」
「豊富な臨床経験がある」
「それぞれの持つ専門的知見や臨床経験を基に、中立的な立場から、被害児の死因について考察を加えたものであって、その内容に不合理というべき点は見られない。」
これらは、弁護側の証人にも同じことがいえるはずです。弁護側の医師は、皆、A子ちゃんの症状は虐待と決めつけることはできないと述べていました。死亡の原因が心臓突然死である可能性も明確に証言していました。その医師たちも、高度の専門的知見に基づいて、豊富な臨床経験を持って、「中立的な立場から、被害児の死因について考察を加え」ました。そこに違いはないはずです。原判決の指摘は根拠になっていません。
「医師の説明は非常に明快であって、説得力に富んでいる」という説明の印象をも信用性判断の根拠としていました。専門家証人の証言を印象で判断するなどあってはならないことです。
そもそも、立証責任を負っているのは検察官です。まずは、A子ちゃんの頭部に生じた頭蓋内出血が、外力であることの立証がなされなければなりません。しかし、一審判決は、弁護側証人の証言を否定することで、あたかも検察官の立証責任が果たされているかのような認定に終始しています。
強制わいせつ致傷事件についても同様です。肛門周囲に生じた約1センチの傷について、検察側医師は異物挿入によるものだと証言し、弁護側医師は自然排便でも生じうるもので日常診療でも診たことがあると証言しました。この点についての、原判決の判断はこうです。
「常識的に考えて、排便により会陰部の7,8割程度(*現実には約1センチです)まで裂けるようなことが起こるとは、やはり考えられない。」
しかし、何が常識かがわからないからこそ、医師証人がいるはずです。なぜ弁護側医師の証言が常識に反するのかの説明はありません。何センチからは常識的に考えられて、何センチからは考えられないのか、この点についても指摘はありません。
このように原判決の誤りは指摘すればキリがありません。
今西さんが、各犯行に及んだことが間違いないと証明されなければ有罪にしてはなりません。そのような基本的な視点すら欠けている原判決は誤った判断であるといわざるをえません。
控訴審での逆転無罪

2024年11月28日、大阪高等裁判所は傷害致死罪、強制わいせつ致傷罪、傷害罪の全てについて、今西さんに無罪を言い渡しました。
傷害致死罪について
A子ちゃんの頭の外表には外力が加わった痕跡がありません。一審で証人として出廷した検察側医師は、今西さんが「布団上の投げつけ等」によって外表に痕跡を残さずに頭蓋内の深部に外力を及ぼしたと主張していました。そしてA子ちゃんに与えられた外力は交通事故と同等の外力だというのです。
この点について、控訴審判決は以下のように判示しました。
「布団上であっても当時2歳4か月の被害児に対し、頭部を含む身体外表に外傷を残すことなく、交通事故に比肩する程度の外力を加え得るものかどうかは、健全な常識に照らしてみても相当に疑問がある。」
頭の外側に外力の痕跡を残さずに内側だけに外力を加えることなどありえません。控訴審判決は極めて常識的な判決を下しました。
「非常に明快であって、説得力に富んでいる」などとして検察側医師の証言の信用性を肯定した原判決については、「証言の信用性は、説明ぶりの印象によるのではなく、科学的な合理性の観点から検討されなければならない」と指摘しました。
さらに「頭部CT画像の読影の在り方等に疑問を差し挟む余地がある」などとし、検察側の頭蓋内損傷があると主張する医学的な根拠すら疑問視されました。
強制わいせつ致傷罪について
控訴審判決は、A子ちゃんの肛門周囲の1cmの傷は、皮膚の荒れや乾燥によって生じた可能性があると判断しました。
一審判決は、自然排便によって傷ができた可能性について「被害児に下痢便等があり、皮膚の乾燥の要因が加わったとしても、常識的に考えて、排便により本件裂傷が生じることは考えられない」として異物挿入を認定していました。控訴審判決は、この一審判決を「排便や皮膚の異状の存在が同裂傷の発生と結び付かない理由とされる『常識』の意味内容は不明である」と一蹴しました。
傷害罪について
医学的にA子ちゃんの骨折の原因が今西さんの暴行によるものだと推認することはできません。
控訴審判決は今西さんがA子ちゃんに虐待をしていた事実をうかがわせる事情もないこと、今西さんの暴力的傾向を示す事情もないことなどを指摘し、無罪判決を維持しました。
今西さんは、3つの件全てについて無罪判決が下されました。
当然の内容であり、冤罪が晴れるまでに時間がかかりすぎたというべきです。
事件は上告審へ

今西事件はまだ終わっていません。
検察官は上告し、いまだに今西さんの有罪を主張しています。
今西事件は、無実の人に誤って懲役12年の有罪判決が下されてしまった、決して起こってはいけない冤罪事件です。今西さんは、冤罪により5年半もの間勾留されてしまいました。
検察官は、控訴審判決を真摯に受け止め、冤罪の再発防止に向けて尽力すべきです。自らの過ちを決して認めようとせず、一度起訴すれば有罪にこだわる検察庁の姿勢は見直されなければなりません。
速やかに上告が棄却されるよう、引き続き、ご支援の程よろしくお願いします。
控訴審で無罪判決を言い渡された日の今西さんのコメント
判決の主文は「無罪」でしたが、僕は「無実」です。
いわれなき罪を着せられ、刑事裁判の当事者となった僕は、人質司法、当事者に対する偏見、そして揺さぶられっこ症候群をめぐる非科学的な医学鑑定など、日本の刑事司法が抱える問題点を表と裏との両方から経験しました。
約4年前、本日と同じ201号法廷で有罪判決を言い渡されたときは、人生のどん底に突き落されました。
このような刑事司法の暗闇を経験する人をこれ以上増やしてはいけない、そのためには僕も力をつけて控訴審を闘わなければならないと思い、拘置所の独房で法律を勉強しました。気がつくと、僕の無実を信じてくださる仲間がたくさん増えていました。そして、みんなで一緒に無罪判決に向かって一歩ずつ歩いてきました。独房で過ごした5年半。挫けずに闘い続けて良かった、と実感しています。
今日、皆様と一緒に無罪判決を聞くことができて、本当に嬉しいです。
法廷に座っている間、傍聴席からの暖かい気持ちを心で感じていました。
きっと”桜咲く”と思い続けた6年間。うれし涙を一緒に流そうといった皆様との約束を、ようやく果たせました。
支援をしてくださった支援者の皆様、学生の皆様。そして、弁護団の先生方。
信じてくださってありがとうございました。
2024年 11月 28日 今西 貴大

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