袴田事件に関する総長談話
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- 鈴木宗男君
次に、今日も袴田事件関連、検事総長談話についてお尋ねをさせていただきます。
検事総長談話の中で、「令和五年の東京高裁決定を踏まえた対応」の小見出しで、令和五年三月の東京高裁決定には重大な事実誤認があると考えましたがと書いてあります。今でも重大な事実誤認があると大臣はお考えでしょうか。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
この点につきましては、検察の方でも、例えばその後、この無罪判決、無罪判決を受け入れ、控訴しないということを決めた。さらには、対外的であるか否かを問わず、この事件の犯人が袴田さんであるということはもう申し上げるつもりはございませんし、犯人視することもないということも、これは直接お伝えをしているところと聞いております。そういった中において、まさにそれが現在の検察における認識であろうと考えております。 - 鈴木宗男君
事実、重大な事実誤認があると、その文言の後に、憲法違反等刑事訴訟法が定める上告理由が見当たらない以上、特別抗告を行うことは相当ではないと判断しました、こうあります。
憲法違反等刑事訴訟法が定める上告理由とは何でしょうか。どうぞ。 - 政府参考人(森本宏君)
まず、先生今お読みになっておられるのが総長談話の二パラ目の令和五年のところでございますので、これ、まだ再審公判が始まる前の段階で、検察がどういう形で今後、袴田さんの公判に対処するかということを検討していたときのことでございまして、その時点では、その令和五年の東京高裁決定には重大な事実誤認があると考えたので、その後、再審公判においては有罪立証したというところにつながっていくんですが、他方で、ここで特別抗告を行うことは相当でないというふうに申し上げましたのは、憲法違反や最高裁の判例違反がないということで、憲法違反等刑事訴訟法が定める上告理由が見出せなかったという言い方をしているものというふうに承知しております。 - 鈴木宗男君
これ、今から十一年前の平成二十六年三月に静岡地裁が再審決定をしましたね。その後、検察が即時抗告しました。今回、憲法違反等刑事訴訟法が定める上告理由が見当たらない以上、特別抗告を行うことは相当でないと判断しましたとあります。
前回即時抗告したときと今回上告を断念したときの証拠に決定的な違いがあるんでしょうか。証拠の中身は結構ですから、違いがあるのかないのかを端的にお知らせください。 - 政府参考人(森本宏君)
まず、性質上、即時抗告という形ですと、まあ事実誤認という言い方をしておりますけれども、事実レベルで争いがあって、例えばAと事実認定されているけどBだと思うという形でも即時抗告はできることになるわけですが、他方で、それは高裁にはできるわけですが、特別抗告というと最高裁に行く段階になります。
その最高裁に行く段階では、先ほど申しましたが、事実誤認があるだけでは基本的に駄目で、最高裁に上告するには、先ほど言いました憲法違反、判例違反が認められなければならないということで、そういう事情までは認められないというふうに検察当局としてはこの令和五年の時点で判断したという文脈かと承知しております。 - 鈴木宗男君
その流れの中で、この文言について見ると、他方、改めて関係証拠を精査した結果、被告人が犯人であることの立証は可能であり、にもかかわらず四名もの尊い命が犠牲となった重大事犯につき立証活動を行わないことは、検察の責務を放棄することになりかねないとの判断の下、静岡地裁における再審公判では有罪立証を行うこととしましたとあります。
今でも袴田さんを犯人であると、証拠上、立証は可能なんですか。 - 政府参考人(森本宏君)
この時点で、再審公判に臨むに当たって検察はそう考えたということでございまして、では、その後、無罪判決が出て、それを確定した段階では、先ほども大臣から御答弁がありましたとおり、もう犯人視することもないしということでございますので、その時点で有罪立証が可能であるという立場には立っていないということだと承知しております。 - 鈴木宗男君
森本さん、当時のこの証拠とは何が違うんですか、今の答弁の流れの中で。今、経緯は全部淡々と説明されてきたけれども、当時の証拠とは何なのか、そして何が今違うのか、それを教えてくれます。 - 政府参考人(森本宏君)
個別の若干証拠の中身に入りますので、どこまで私の立場で答弁申し上げるのがいいかというところはあるんですが、基本的には、再審公判に臨むに当たって、五点の衣類に関する評価というものを検討した結果、五点の衣類を中心とした証拠によって有罪立証が可能というふうに、それは事実レベルでですね、令和五年の東京高裁決定の後には考えていたということかと思います。 - 鈴木宗男君
森本局長、裁判所はその五点の衣類についてどういう判断されました。 - 政府参考人(森本宏君)
まず、ここは紆余曲折がございまして、第一次請求審は除きます、再審請求審は。
第二次のときに、まず、先ほど先生が御紹介なさった静岡地裁の決定におきまして、五点の衣類は捏造であるという判断がなされました。その後、即時抗告をした結果、そのほかにDNA型鑑定の証拠もあったんですが、その即時抗告審では、検察側の言い分を入れて、まず再審開始決定を取り消しました。その後、最高裁に行きまして、これ弁護側の特別抗告で最高裁に行きまして、そこで破棄差戻しになって、破棄されて戻ってまいりまして東京高裁に来て、東京高裁の決定においては、その五点の衣類のところについては捏造と考えられるという趣旨の決定になったものというふうに承知しております。 - 鈴木宗男君
捏造という判決であったということでいいですね、五点の衣類について。 - 政府参考人(森本宏君)
今申し上げました、そうじゃないという判断をしたところもありますが、最初の静岡の決定、それから先生御言及された令和五年の三月の東京高裁決定はそういう判断になっていたものというふうに承知しております。 - 鈴木宗男君
これ、刑事局長、回りくどい言い方しなくて、結論は無罪なんですよ。しかも、その五点の衣類についても裁判所は明確に指摘しているんですね。それでいいですね。無罪であるし、その無罪になる判決の、法と証拠に基づく中で、それは極めて重要な意味を持っていたということはお互い共通の認識でいいですね、それは。 - 政府参考人(森本宏君)
もちろん、最後、最終的に、また静岡地裁の無罪が確定した判決も、先生がおっしゃるとおりのものになりました。
ただ、その前の、前からの流れを説明しましたので、その中では違う判断がなされたり、あるいは、例えば捏造について疑いといったものもありましたし、様々な決定ありましたけれども、最終的に、静岡地裁の無罪判決確定したものについては、捏造と認定され、それを検察も受け入れ、その無罪判決について検察も受け入れた上で、袴田さんを犯人視しないという取扱いになっているということでございます。 - 鈴木宗男君
今局長から、袴田さんを犯人視しないという話が出ました。検事総長談話ではそういったニュアンスは出ていませんね。
これ、大臣、私は、今時系列を追って刑事局長に事務的に説明をしてもらって、大事なことは、結果は出たんですね。それは無罪でした。検察ももう闘いません、争いませんということになったんです。その上でのこの談話は、大臣、どう考えても私は適切でないと思うんですよ。袴田さんに対して私は極めて失礼だと思います。
あわせて、三権分立といって司法の下した判断にクレームを付ける検事総長の談話というのは過去例がありません、何を調べても。三権分立といいながら、なぜ正直に、人としての心構えでこの検事総長が対応しないのか、私は不思議でならないんです。
だから、私は、この委員会に呼んで直接、法務大臣も個別案件だ、答えられないと言うのならば、これはやっぱり検事総長に来て、ここで説明してもらうのが一番だと思うんです。
この点、改めて私は委員長に要請しながらも、法務大臣、私は、結果としてですね、結果として、無罪判決出てからのこの談話ですよ。どう考えても、これ、委員の皆さん方も、この談話を読んでも、私は、検事総長の、私は、人の道として、あるいは検察のトップの、事務方のトップの立場としても、私は、ちょっと思い上がりと、表現自体が言い過ぎだと思うんですよ。だから、私はあえて検事総長にここに出てきていただきたいとお願いしているんです。
これ、大臣からも検事総長に、おまえ出て説明すれと、大臣には命令権あるんですから、国民に私しっかりと説明責任を果たさせることが、私は、検察の信頼回復にもなるし、評価にもつながると思うんですよ。
私は、この検事総長談話、どう皆さん方読んだって、判決に文句を付ける談話なんというのは聞いたことないでしょう、皆さん。ここはしっかりただすのが、私はこれは法務委員会の権威にも関わると思っております。私が言っていることは何も無理じゃない、当たり前のことだと思っていますよ。
ここ、大臣の答弁を願います。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
人としてということでずっと御指導をいただいているところでありますけれども、本件のことで申し上げれば、やはり私の立場として申し上げられることとして言えば、やはり私は、検察の方のこれはやはり一番最後の言葉というのは、当然、これは検事正の方で袴田さんに対して申し上げた言葉、そういうことになるんだろうと思っております。
まさにそれは、先ほど来申し上げておりますけれども、これは検察として、今回の無罪判決、これを受け入れたと。そして、この事件の犯人は袴田さんであるということはもう申し上げるつもりはありませんし、犯人視することもない、改めて大変申し訳ございませんでしたということで、これ申し上げているわけであります。
私は、この個々の事件だとか、あるいは検事総長、検察の活動について評価をする立場にありませんけれども、私の立場として言うと、やはりこの最後の直接謝罪における、直接謝罪における検事正の言葉というものが私は検察の思いだというふうに感じているところであります。 - 鈴木宗男君
大臣、法務省という組織の中で大臣が一番偉いんですよ。これ、判決に対してどうこうすれ、あるいは抗告した、特別抗告したからこうやれというのは、大臣はその権限ないんですよ。ただ、こういった談話に対しての指導監督は大臣できるんですよ。これは命令でも何でもないんです。法律よりも何よりも大事な人の道としての心構えなんですよ。袴田さんの五十八年の人生を無視したことを、私は、しかも、無罪判決を得ながらも台なしにしていると思いますよ、心ない表現で。
大臣、政治家ですから、選挙の際、票要らないという演説ぶてますか。一票でも欲しいと思って選挙運動するんじゃないですか、大臣、選挙のときは。ならば、人の人生を台なしにしておきながら、私は、もっと謙虚であるべきだ。しかも、検察の最高、トップなんですよ。これを、この判決を否定したり、この談話の中では、まだ、袴田さんを犯人視しないとかなんとかいうのは後の話でありますから。私は、どう考えてもちょっと人の道としては許すわけにはいかないと、こう思っているんです。
これ、大臣から是非とも検事総長に、進んで国会に出て釈明、説明した方がいい、堂々と議論すれという話をしてほしいと思いますが、いかがですか。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
まさに、私自身も、袴田さん、大変もう長い期間、もう人生の本当に大半のところをこうした形で、非常にそうしたつらい立場に置かれてしまった、置いてしまうこととなってしまったこと、これについては大変申し訳なく思っています。そこの点については、ほかの場面でも申し上げておりますけれども、そこについてはしっかりと謝罪を申し上げたいと思っております。
その上で、検事総長、特に今回御指摘があるのはこの個別の案件についてということで、そこについてここに出てということでありますので、ちょっとそこのところについては、私の立場としてどういうことまでできるのか、あるいはできないのか、その点については整理をしたいと思いますけれども、私自身としては、やはりそうした長い期間にわたって不安定な立場に置いてしまった、これは本当に大変なことであります。
だからこそ、そこについては改めてこの場でも謝罪を申し上げたいと思いますし、そこの点についてはそれが私の思いであります。 - 鈴木宗男君
これ、鈴木大臣、是非とも法務大臣として、人間鈴木大臣として、私は袴田さんのところにやっぱりおわびに行っていただきたい。これがまた、おわびを言うことによって私は法務省の信頼が上がると思います。ここは是非とも、大臣、国会が終わるなり、時期を見て行っていただきたいと、こう思いますが、大臣のお気持ちをお知らせください。 - 委員長(若松謙維君)
もう時間ですので、簡潔にお願いします。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
そうしたこと、この委員会でもいろいろとそうした御指導もいただいておりますし、人としてということでいろいろおっしゃってもいただいています。
そういった中で、私としての思いもあります。その一方で、やはりどの案件でどうするという、そこの違いが出ない形で、そこはほかの今後の様々な事件へのいろいろな意味での関与ということにならないような形で何ができるのか、そこの点についてはしっかりと、私なりにしっかりと精査をして、しかるべき対応をしっかりとしていきたいと思います。