令和6年4月2日 参議院法務委員会 牧山ひろえ議員による質問

大川原化工機事件についての検察・警察による原因究明・再発防止

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  • 牧山ひろえ君
     立憲民主・社民の牧山ひろえです。
     本日の一般質疑を担当させていただきます。よろしくお願いいたします。
     私の地元であります神奈川県の横浜市都筑区に所在します大川原化工機という中堅企業がございます。噴霧乾燥機の国内シェア七割を誇る優良機械メーカーでございます。このメーカー及びその幹部が軍事転用可能な機械を中国へと輸出した疑いで、二〇二〇年に起訴されました。しかし、一年以上の勾留の後、検察が突然起訴を取り消すという異例中の異例の事態となりました。要は、冤罪だったわけですね。起訴が取り消されるというほとんど起こり得ない事態が起こったわけですが、検察それに警察の大失態と言えると思います。この大失態は、当然、事実関係そして原因を究明し、再発を防止しなくてはならないことは御承知のとおりでございます。
     検察そして警察は、この原因究明及び再発防止について、いつ、そして誰が、ないしどの団体が、またどのような方法で行うつもりなのか、そしてその結果は公表されるのかどうか、それぞれお答えいただければと思います。大臣、お願いします。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     お尋ねは、個別事件における検察当局の活動や裁判官あるいは裁判所の判断に関わる事柄であり、また、現在、国家賠償請求訴訟が係属中であって、その中で検察官の公訴提起や勾留請求の国家賠償法上の違法性等についても審理の対象となっていることから、お答えすることは差し控えたいと思います。
     あくまで一般論として申し上げれば、検察当局においては、公訴取消し等を行った場合には、当該事件における捜査・公判活動の問題点を検討し、必要に応じて検察官の間で問題意識を共有して、反省すべき点については反省し、今後の捜査、公判の教訓としているものと承知しております。
  • 政府参考人(千代延晃平君)
     御指摘の事件につきましては、当該事件に関する国賠請求訴訟の第一審の判決におきまして、本件噴霧乾燥機が輸出規制要件に該当すると判断したことが不合理かどうかについて、警視庁は測定口部分の再実験を行うなどの通常要求される捜査を怠ったとされた点、また、原告の一人に対する取調べ及び弁解録取書作成の違法性について、取調べの過程で偽計を用いた取調べが行われたなどとされた点等につきまして、警視庁の主張が十分に認められなかったことを踏まえ、上級審の判断を仰ぐこととなったものと承知しております。
     お尋ねの件につきましては、現在訴訟係属中であるため、警視庁におきましては、引き続き、国家賠償請求訴訟の上級審での審理に対応する過程で、本件事件、本件捜査に係る事実関係について更に確認、整理していくものと承知しております。
     なお、警視庁におきましては、本件に関しまして結果として公訴が取消しとなったこと自体は真摯に受け止めておりまして、部内教養等を強化するほか、公安部に新たに捜査指導官を置くなどして捜査体制を強化していくとの報告を受けております。
  • 牧山ひろえ君
     私が聞いているのは訴訟の中身とかではありません。それは御存じだと思うんですね。なので、単にお答えになりたくないというふうにしか私は思えません。内容のことについてだったら分かりますよ。でも、内容について聞いていないわけです。でも、内容については訴訟中なのでお答えできませんと、私が聞いていないことを御答弁なさる。本当にこういう答弁の仕方、私はないと思います。
     そして、それに引き続く民事訴訟では、捜査を担当した警部補から捏造を認める仰天発言が発せられました。それに先立ちまして、大川原側への内部通報がなされた事実もございます。また、立件に当たり捏造まで行われていたことが後の民事裁判で明らかになっていることも御承知だと思いますが、警察内部で犯人捜しやこの造反警部補たちへの追及が行われたり干されたりしていないかなというふうに私は心配しております。また、彼らの将来への悪影響が出る可能性がないと言い切れますでしょうか。警察庁、お願いします。
  • 政府参考人(千代延晃平君)
     お答えいたします。
     法廷において証言をしたことを理由として職員が不利益な取扱いを受けるようなことがあってはならないことは当然でありまして、警視庁において適切に対応するものと承知しております。
  • 牧山ひろえ君
     同調力、同調圧力の強い組織にあって、反省とそして悔恨から自分たちの非を認める勇気は私はたたえられるべきだと思うんですね。この方々が不当な処遇を受けるようなことはあっては絶対ならないと思います。
     ある意味、公判が始まる前に検察は不適切な起訴だと気付けたわけです。ですので、それに気付けた経緯を明確にしてほしいです。内部から声が上がったのか、外部からの指摘なのか、警察との協議の中で矛盾点が発見されたのか、こういったことを是非お願いします。この点は、今後、再発を防止する非常に重要な要素となります。この点につきましてしっかり取り組むことをお約束できますでしょうか、大臣。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     お尋ねの事案についてでございますけれども、東京地方検察庁において令和三年七月三十日に公訴を取り消しました。
     そして、その理由でございますが、公訴事実記載の噴霧乾燥機が軍用の細菌製剤の開発、製造若しくは散布に用いられる装置又はその部分品であるもののうち省令で定める仕様の噴霧乾燥機に該当することについて、公訴提起後、弁護人の主張等を踏まえて再捜査を実施した結果、その該当性に疑義が生じたことなどの事情を考慮した旨を公表したものと承知しております。
  • 牧山ひろえ君
     私の要望の前提としまして、しっかりと事実関係の究明に当たっていただきたいなと思います。
     事実関係の解明という点に関連しまして、担当捜査官により勾留された島田さんの弁解録取書が破棄された事件につきまして、当該捜査官が作成した報告書がございます。事前に資料要求を行いましたけれども、いまだに手に入っておりませんので、理事会に提出するよう、委員長からお取り計らい願いたいと思います。
  • 委員長(佐々木さやか君)
     ただいまの件につきましては、後刻理事会において協議いたします。

外事容疑性に対する認識・意見が大川原化工機事件につながった可能性

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  • 牧山ひろえ君
     今回の事件では、なぜここまで警視庁公安部は暴走し、そして検察はそれを止められなかったのか。事件捜査を担当したのは警視庁公安部第一課、いわゆる外事警察の不正輸出の捜査を担当する第五係でした。この冤罪捜査の遂行には、外事容疑性のファクターの影響を説く論者が多くおります。そして、この外事容疑性とは、外国の軍や関連組織など日本の安全保障を脅かす主体へ何らかのつながりを持つ疑いを、この外部、済みません、外事容疑者とはそういったつながりを持つ疑いを指します。
     有識者から理由として指摘されていますのが、経済安全保障を推進したいという政府の意向だと思います。実際、事件は起訴取消しとなるまでに高く評価されていました。警視庁公安部は、この事件の功績で警視総監賞や警察庁長官賞、また公安部長賞をトリプル受賞しているんですね。これは大変名誉だそうです。
     警察白書でも、この事件が経済安保に関する成果として紹介されています。捜査を指揮した第五係の係長は後に警部から警視へと出世しておられるんですよね。この捜査が警察上層部、それに政治関係者に評価されていたことは間違いないと思うんですね、こういったことから。
     例えば、警視庁長官は、どんな理由によってどんな点が評価され、そしてこの名誉ある賞が警視庁公安部に対し授けられたのでしょうか。警視庁、お願いします。
  • 政府参考人(千代延晃平君)
     お答えいたします。
     警察庁長官賞は、警察職務遂行上、顕著な業績があると認められる部署に対して授与することとされておりまして、今回の事件につきましても、その観点から授与されたものでございます。
  • 牧山ひろえ君
     冤罪を起こした捜査手法が評価されたとは私は思えないです。経済安保、そして外事容疑性で成果を上げたことが評価の理由だと考えるのが、多くの方々がおっしゃっているとおり、自然だと思うんですね。
     この外事容疑性の背景の下、軍事転用可能な機械を輸出したという大川原化工機を起訴した根拠は規制の曖昧さを濫用したもので、元々かなり無理があるものでした。
     規制が曖昧といえば、民間の契約では、規制の対象となる規定は更に曖昧な規定ぶりになっているケースが多い傾向にあります。現在、このような冤罪が起きた場合、仮に今国会で重要経済安保情報保護・活用法案が成立し、そして、このような民間が関与する技術について経済安全保障に基づく重要経済安保情報指定を受けたとします。その場合、事態のブラックボックス化がより色濃いものとなり、今回のように報道や調査によって真相に迫ること自体に規制が掛かるのではないかと懸念しておりますが、そのような可能性はないと断言できますでしょうか、内閣官房。
  • 政府参考人(品川高浩君)
     お答えいたします。
     現在、衆議院内閣委員会で御審議いただいております重要経済安保情報の保護及び活用に関する法律案についてお尋ねがございました。
     この法案上、重要経済安保情報の指定の対象につきましては、三つの要件を全て満たした情報に限定されております。どのような要件かといいますと、第一に、指定主体となる行政機関の所掌事務に係る重要経済基盤保護情報、つまり我が国の重要なインフラや重要物資のサプライチェーンの保護に関する情報であって、第二に、公になっていないもののうち、第三に、その漏えいが我が国の安全保障に支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものという三要件でございます。
     その上で、本法案におきましては、法案第二十一条第二項におきまして、出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは正当な業務による行為とすると明文で規定されておりまして、通常の取材活動等が本法案の罰則の対象となることはないと考えております。
     したがいまして、今御指摘がございましたような、この法案によって取材や報道による真相究明が困難になる、そのようなものではないと考えております。
  • 牧山ひろえ君
     現行の特定秘密保護法の運用に当たっても、ブラックボックスの問題は解決されているのかどうか常日頃から私はチェックが必要だと思いますが、これをどうやってやるのかなと思うんですが。問題が起きた場合、対象が本当に特定秘密に当たるものだったのか、また、特定秘密の運用に問題がある場合、外部からの監督が利くようになっているのか、特定秘密保護法が成立した際に懸念された問題は大きくなるばかりだと思います。
     まして、今回の規制対象、重要経済安保情報がほぼ何の縛りもないわけですよね。民間への秘密保護法の適用拡大がない現在でさえもこのような事件が発生し、そして捜査官の爆弾発言ですとか取材記者の努力で何とか辛うじて冤罪を晴らすことができているという状況。これ、本当に大きな社会問題ですから、皆さん、本当これ真剣に考えていただきたいんです。本当にこのままでいいんですか。

大川原化工機事件において保釈不相当とした判断の妥当性

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  • 牧山ひろえ君
     なお、勾留中にがんが発覚した方は、治療を受けることすらままならず、検察側が証拠隠蔽のおそれがあるとして保釈に反対し続け、そのままお亡くなりになられています。拘束開始から一年経過した段階でも、検察にとって証拠隠蔽の回避というのは命より重いものだったと思いますか、大臣。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     御指摘の方については、令和二年三月に逮捕、勾留され、御指摘の病気に罹患していることが判明した後、同年十一月初旬に勾留執行停止となり釈放され、令和三年二月にお亡くなりになるまでの間は勾留の執行は停止をされておりました。
     お尋ねは、個別事件に関わる検察当局の活動、裁判官あるいは裁判所の判断に関わる事柄であり、また、現在、国家賠償請求訴訟が係属中であって、その中で検察官の公訴提起や勾留請求の国家賠償法上の違法性等についても審理の対象となっていることからお答えは差し控えますが、一般論として申し上げれば、検察官においては、個々の事案ごとに保釈の除外事由の有無を検討して保釈請求に対する意見を述べるなど、適切に対応しているものと承知しております。
  • 牧山ひろえ君
     事実として、この方、がん発覚後も保釈が認められていません。命を軽んじる対応に私は強い憤りを覚えます。

大川原化工機事件の責任の明確化・処分

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  • 牧山ひろえ君
     今回告発をした警察関係者の一人は、取材に答えてこう述べたといいます。非を認め、決裁をした人それぞれに責任を取らせる、それができないならまた同じような事件が起きるだろう、このようにおっしゃっているんですね。
     今のところ、これについて、責任の明確化、処分は何らなされていないわけです。これについて、検察それに警察はどのような方針でしょうか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     これも繰り返しの答弁になって恐縮でございますが、お尋ねは個別事件における検察当局の活動に関する事柄であり、国家賠償請求訴訟が係属中でありまして、お答えすることは差し控えたいと思います。
  • 牧山ひろえ君
     答えてください。今の御答弁は繰り返し繰り返しあらゆるところで使われていますけれども、今回のケースには、私は、そういう御答弁、御質問ではないですし、ちゃんと正面向かって答えてください。これ大問題です。
  • 委員長(佐々木さやか君)
     どなたが御答弁されますか。
  • 牧山ひろえ君
     大臣、お答えください。これ、かなり大きな問題で、これからもこの件がきっかけで大きな問題になりますよ。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     国家賠償請求訴訟が係属中であるということで今お答えを差し控えさせていただきたいということを申し上げているわけでございますけれども、国家賠償請求訴訟が係属中でございますと、一般論として、訴訟外の言動等によって現に係属中の訴訟における司法審査に影響を与えかねないことなどから、訴訟係属中の事案に関する事柄についてはお答えを差し控えるべきと考えているわけでございます。
  • 牧山ひろえ君
     反省はないですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     東京地方検察庁においては、公訴を取り消した際に、起訴時点ではその時点での証拠関係を前提に起訴相当と判断したものであるが、結果的に後に要件該当性に疑義が生じたことは反省すべき点と考えている旨をコメントしているものと承知しております。
  • 牧山ひろえ君
     私、大臣からもお聞きしたかったですけれども、さっき、本当に真っすぐ、こんな大きな問題について正面からお答えいただけなかった、非常に残念に思います。
     そして、行政官庁に不祥事が起きた場合、多くの場合、その不祥事を対象として何らかの訴訟が提起されることが多いですが、それらのケースでは、訴訟係属中あるいは個別の捜査に関係するということを言い訳として、国会からの事実解明の要求を拒否し、そして答弁も回避するケースがこれまでも目に付いてこられました。
     行政に不祥事が生じた場合に、事実解明や原因の究明を行って責任を明らかにすること、そして必要ならばそれに基づいて関係者の処分を行うこと、また再発防止策を策定し実行すること、当たり前ですよ。これらは、係属中の訴訟に不利になる可能性があるので、全てを明らかにすることはできないかもしれません。ですが、これらのタスクは、公務に従事する者や組織が不祥事を起こした場合の言わば義務だと思うんですね。別の言い方を申しますと、不祥事に伴ってなるべく迅速に取り組むべき行政マンとしてのタスクですよね。この義務より、例えば損害賠償を争う、言わばお金を対象とする訴訟の勝ち負けの方が優先するというお考えなのでしょうか。
     大臣、答弁に対する関連質問なので、是非お答えいただければと思います。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     例えば、法務行政の内側で起こっている、例えば矯正施設における不正待遇、処遇事案ありました。これに対しては我々も原因を追及し、またその結果も公表し、そして再発防止策も講じ、それもまた公表し、御説明させていただいています。それが基本だと思います。
     ただ、この案件は個別事件であり、裁判所にまだ係争中の事件でございまして、それは同じようには取り扱えない。個別の事案としての性格がまだこれは拭えないわけであります。そういう時点における答弁だということを御理解をいただきたいと思います。
  • 牧山ひろえ君
     では、いつの時点でそれをやっていただけるんでしょうか。
  • 委員長(佐々木さやか君)
     どなたが答弁されますか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     現時点で、いつの時点でということをお答えすることは困難でございますけれども、国家賠償請求訴訟が係属中であるということも踏まえまして、その時点時点において適切に判断をさせていただきたいと思っております。
  • 牧山ひろえ君
     世の中から見て適切な時期ってあると思いますので、是非、今本当はお答えしていただきたいんですけれども、しっかりと今おっしゃったことを近い将来やっていただきたいなと思っております。