【学生ボランティア(甲南大学)】クリス事件シンポジウムに参加しました!

2025年7月5日に東京で開催されたクリス事件シンポジウムに参加しました。
クリス事件とは、強制性交等致傷の罪でクリストファー・スティーブン・ペインさん(以下クリスさん)が逮捕・起訴された事件です。この事件では主に、第一審の公判前に実施されたDNA型鑑定に問題があるとされています。詳細はこちらからご確認ください。

シンポジウムでは、クリス事件弁護団からの事件概要の説明の後、サイモン・フォード(Simon Ford)氏(Lexigen Science and Law Consultants, San Francisco)や徳永光先生(獨協大学教授、IPJメンバー)による本件のDNA型鑑定についてコメントがあり、弁護団や支援者、そしてクリスさんご本人からのメッセージがありました。

 犯罪捜査のDNA鑑定において、資料が汚染や陳旧(劣化)、微量や混合である場合、犯人のDNA型特定ができない可能性が高くなります。クリス事件で重要な証拠とされたDNA鑑定は、犯人のDNA型が微量かつ、被害者の口腔内細胞との混合資料にもとづくものでした。最初のDNA鑑定の結果、クリスさんのDNA型は犯人のDNA型と「矛盾しない」とされました。この「矛盾しない」ということは、可能性があることを示すだけであり、「一致する」こととは全く違うことを理解することが重要です。また、再鑑定の方法が不適切であること、DNA型鑑定改ざんの可能性があることが指摘されました。
刑事訴訟法の講義で科学的証拠の証拠能力について学ぶ中で、アメリカでは専門分野において、鑑定の原理や方法が一般的に承認された方法でなければならないという基準が設けられ、証拠能力の資格の審査がなされていることを学びました。しかし、日本においては厳格な証拠能力基準は必要なく、鑑定人の資格審査も十分に行われていません。今まで私はDNA鑑定の結果は科学的根拠があって、信頼性も高いものであると疑いなく信じていました。しかし、クリス事件を通して、日本におけるDNA鑑定や鑑定結果の取り扱いは杜撰な面があるのではないかと感じました。鑑定の方法に問題がないか、鑑定結果に証拠能力の資格があるのかを日本でも慎重に判断していくべきだと考えます。

シンポジウム内では、IPJに支援を依頼した支援者の半田孝太さんよりお話しいただきました。半田さんとクリスさんは、「元カノの父親と娘の元カレ」という関係性で、家族ぐるみの付き合いがあったこともあり、クリスさんの逮捕を知った時から、半田さんは「クリスさんに限って人を傷つけるわけがない」と、無実を信じておられました。
「クリスさんは愛すべき人間です。クリスさんの人柄が多くの支援者を惹きつけ、救済活動に突き動かしています」。半田さんがおっしゃったこの言葉が印象に残っています。こんなにも愛される人柄の持ち主であり、日本の文化や日本人が大好きだというクリスさんですが、クリスさんのメッセージには日本の司法に対する疑問や苦しみが綴られていました。

私はクリスさんにお会いしたことはありませんでしたが、あの短時間の間にも私自身惹きつけられ、ぜひ会いたいと思いました。同時に、クリス事件を通して科学的証拠を用いた裁判の在り方や、3年半以上も不当に拘束する人質司法という問題を再認識しました。今まで正しいと信じてきた日本の刑事司法に対して、今一度問題意識を持って向き合い続けたいです。

甲南大学法学部3回生 横田麻奈