【学生ボランティア(中央大学)】人種差別的職務質問を問う- 裁判傍聴に行ってきました!

人権意識が高いと言われている現代においても、依然として差別が存在しています。

令和6年(2024年)4月15日に東京地方裁判所で、「人種差別的職務質問をやめさせよう!訴訟」(https://x.com/STOP_RP_/)の第一回口頭弁論が行われました。IPJメンバーである西愛礼先生、亀石倫子先生も代理人を務めておられます。

傍聴券が配られた東京地方裁判所前には一般傍聴85席に対して144名が傍聴券を求めて列をなしました。

この裁判は、外国にルーツを持つ3名の原告が、人種差別的な職務質問は憲法や国際条約などに反するとして、国、東京都、愛知県を相手に提訴したものです。

どのような場合に職務質問ができるのかについては、警察官職務執行法2条1項が規定しています。そこには、警察官は異常な挙動や周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯した(または犯そうとしている)と疑うに足りる相当な理由のある者などに質問することができる、と書かれています。

しかし、原告となった方々は、このような不審事由がないのに、日常的に職務質問を繰り返し受けています。この裁判によって、「外国人に見える」ということだけで職務質問が行われている実態が明らかになってきました。

データによれば、国内の外国人と日本人の犯罪率に有意な差はないそうです。外国人に見えるというだけで職務質問をして良いと考えることは人種差別にあたります。

東京弁護士会が外国にルーツを持つ人を対象に行った調査(有効回収数約2千件)では、約6割が過去5年間に職務質問を経験し、このうち7割は複数回職務質問を受けたと回答しています。そして8割近くの人が、職務質問を受ける理由について心当たりがないと答えています1

  1. 東京弁護士会外国人の権利に関する委員会「2021年度外国にルーツをもつ人に対する職務質問(レイシャルプロファイリング)に関するアンケート調査 最終報告書」https://www.toben.or.jp/know/iinkai/foreigner/news/2021.html↩︎

意見陳述で原告のシェルトンさんは、「私は人種や民族のせいで、どこに住んでいても、不当な扱いを甘んじて受けなければならないのでしょうか」と訴えました。そして、この裁判が、相互理解と協力を促し、日本をより良い国にするためのものであることを強調されていました。原告側からは、愛知県警察が外国人であることだけを理由に職務質問や所持品検査を推奨していたことなどを示す証拠が提出されました。

アメリカ大使館領事部も、令和3年(2021年)12月6日、X(旧Twitter)において、「外国人が日本の警察に呼び止められ、身体検査を受ける、レイシャル・プロファイリングが疑われる事案の報告を受けている。数人が拘束され、質問され、捜索された。アメリカ市民は本人確認証明書を携行し、拘束された場合は領事館への連絡を要請する」ようにとの注意を発しています。

わたくしは、欧州連合日本政府代表部に本件問題に関する取材をさせていただきました。そして、欧州連合日本政府代表部もアメリカ大使館のポストや人種差別的職務質問訴訟に注目しており、現時点では欧州連合国における違法な職務質問の報告は数件しかないが、国土の問題や肌の色が関与している可能性があるとの回答をいただきました。この取材から、本件訴訟が国際的な関心を集めており 、欧州連合日本政府代表部の回答からも、特定の人種や民族に対して不当な職務質問が行われている可能性が考えられます。

人は、他国の文化や言語、外見が異なることから、外国人に対する異質感や他者への恐れが生まれ、差別的な態度や行動をとってしまうことがあります。そのことを認識し、差別をなくしていく必要があります。

原告のゼインさんは意見陳述の冒頭で、「あっ、この人日本語うまいなと思った人はこの部屋に何人いるでしょう」と問いました。偏見は言葉や行動に現れることを理解し、国や地方自治体には原告らの声に真摯に対応してもらいたいです。

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中央大学法学部4年生

中野 栄二