令和6年4月8日 参議院決算委員会 芳賀道也議員による質問

検面調書につき刑訴法321条1項3号と同様の要件を定める法改正

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  • 芳賀道也君
     次の質問です。
     今から十年ほど前になりますが、二〇一〇年、平成二十二年九月十日に郵便不正事件に関する厚生労働省村木厚子さんの無罪判決が大阪地方裁判所で言い渡されました。
     大阪地検特捜部の事件ということで、裁判では多数の検察官面前調書が法廷に提出されましたが、この裁判で裁判長は、検察官面前調書三十四通の証拠採用を却下しました。確かに現状では、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号により、検察官面前調書が、第三号にある一般の供述書や供述録取書よりも証拠能力が高く特信情況にあると規定されています。
     しかし、厚生労働省村木元課長の裁判そのほかで検察官面前調書がこれまで多数却下されたことを受けて、刑事訴訟法第三百二十一条第一項第二号後段の特信情況に関する規定を改めて第三号と同じ扱いにすべきだと考えますが、法務大臣の御見解、いかがでしょうか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     御指摘の刑訴法第三百二十一条第一項第二号の後段でございますけれども、これは、被告人以外の者の検察官の面前における供述を録取した書面、これが検察官面前調書ですが、これについて、供述者がその後、公判期日等においてこれと相反する供述等をした場合において、その供述よりも検察官の面前における供述を信用すべき特別の情況が存するときに証拠能力を認めることとしております。
     この規定は、適正な事実の認定のために重要な役割を果たしておりまして、これを改正すべきものとは考えておりませんけれども、一般論として申し上げますと、裁判実務におきましては、証人が公判期日において検察官面前調書と異なる内容の証言をした場合でも、できる限りありのままの証言が得られるように、検察官に記憶喚起や弾劾的な質問の活用などの方策を尽くさせた上で、やむを得ない場合に限って検察官面前調書の採否を更に慎重に判断するといった方法など適切な運用がなされているものと承知をしております。

判決書に証拠・有罪認定の理由を明記させる刑訴法335条1項の法改正

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  • 芳賀道也君
     刑事訴訟法関連でもう一つ質問させていただきます。
     三百十七条で、事実の認定は証拠によると規定されているのに、刑事訴訟法第三百三十五条第一項で、有罪の言渡しをするには、罪となるべき事実、証拠の標目及び法令の適用を示さなければならないと書かれていて、証拠や、証拠により、証拠により有罪となることを認めた理由ではなく、証拠の標目だけでいいということになっています。
     証拠に基づく裁判なのに、証拠、証拠により有罪となることを認めた理由を判決に必ず書くように刑事訴訟法第三百三十五条第一項を改めるべきではないでしょうか。いかがでしょうか。
  • 委員長(佐藤信秋君)
     時間ですので、簡潔に。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     御指摘のように、今の刑事訴訟法では、有罪の言渡しをするには証拠の標目を示さなければならないとはされておりますけれども、証拠によって犯罪事実を認めた理由を記載すべきこととはされておりませんけれども、これは、実際の公判において事実の真相を発見する面において裁判官の主力を用い、判決を書く手間よりもそちらの方を重視するという趣旨によるものと承知をしております。
     ですので、現時点においてこの規定について改める必要はないと考えております。
  • 芳賀道也君
     証拠によってお願いします。
     以上です。