法務大臣による検察官の指揮監督
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- 鈴木宗男君
法務大臣、今国会も、恐らく法務委員会、今日が最後の質疑だと思いますから、この間、法務大臣、真摯に答弁もいただきましたし、また疑問の点もありますので、今日はその最後のお尋ねをしたいなと思っています。
十三日のこの委員会で、証人テストについて、いわゆるシナリオありき、こう聞くからこう聞けという、そして答えまで作っている。これは、私は、公平でない、検察の有利な土俵に持ち込むためのやり方だという指摘をしましたら、大臣は公正でないやり方だと答弁されましたね。大臣は、そう言われた以上、ここはしっかりと検察当局に指導していただきたい。
この委員会に私が出した資料は五枚のこのQアンドAですけれども、実際、三十八ページの、こう聞くからこう答えろというのがあるんです。御丁寧に赤印まで付けて、ここだけは絶対覚えておけと、ここまで言うんです。全部、鈴木宗男に対して不利な言いぶりであります。しかし、これが判決には重大な影響を及ぼすんですよ。
シナリオ、ストーリーありきは私はいけない、こう思いますけれども、大臣、この点しっかり、私は、検察当局に公正公平でなければいけないということを大臣はこの国会で答えているわけでありますから、徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょう。 - 国務大臣(小泉龍司君)
その趣旨はよく分かります。適切な方法で検察庁に、そういう不適切な、不適正な取調べ調書を取る、そういうことについてしっかりと戒める、また反省をしてもらう、そういう監督権を私はしっかりと行使をして、検察にそれを理解をさせ、またそういうことが起こらないようにしっかりと検察に通達をします。しっかりと言います。 - 鈴木宗男君
是非とも、大臣、今の答弁をよしとしますので、徹底をいただきたいと思います。
今日は、委員の皆さん方のところに二枚物の資料を配付しています。これ、前回もしましたけれども、これ、黒塗りのところはやまりんという会社の名前です。ですから、会社の名前消せというものですから消していますけれども、公になっているものですから本来ならば消す必要はないかなと思いながらも、大臣、これは平成十年の八月六日の資料なんです。これは、書いているとおり、松岡利勝代議士に林野庁が宛てた文書なんです。
このやまりん事件なんていうのは、自由民主党の国有林問題小委員会での議題になって問題になった件でありまして、当時私は閣僚で参加していない、会議に。同時に、この林野庁が報告しているときは内閣官房副長官で、なお忙しくて私は触れていないんです。松岡さんがタッチしているからこそ、林野庁は、これは日高という業務部長と島田という課長が報告に行っているんです。この黒塗りの名前もそこなんです。どうか、私は、鈴木宗男というのを狙ったら、その一点で動くのが検察の習性です。本来関わった者もタッチしないんです。
私を調べた谷川という特捜の副部長はこう言いました。一つの事件で国会議員を一人逮捕するだけでも大変ですと。いわんや二人、三人捕まえるとすれば、検察の今の基礎体力ではやっていけませんとまで言いましたね。ならば、おまえら、権力を背景にして国策捜査じゃないかと言えば、はい、権力を背景にしていますからさようでございますと平然と答えたものですよ。私は、これを国会の議事録に事実だけはしっかり残したいと思っています。
これが平成十年の出来事ですけれども、私が逮捕されたのは平成十四年六月十九日であります。十八年、松岡さん、農林大臣になりました。忘れもしません、五月の二十四日、虎ノ門パストラルで、松岡さんは、本人と後援会の何人かの幹部連れてきていました。私に謝りました。全て鈴木先生におっかぶせて申し訳ないと土下座されましたね。だけど、私は、気にしていないからと言ってなだめました。その四日後、松岡さんは自ら命を絶ちました。少なからず私に対する良心の呵責はあったと思うし、当時、松岡さん自身も別の件でいろいろマスコミに騒がれておりましたから精神的な負担もあったかと思いますけれども、私は天地神明に誓って、何が事実かというのは誰よりも正直に私は発言してきているし、やってきたと思うんです。
是非とも、今ほどの大臣の答弁、徹底をいただきたいとお願いをする次第です。
最高裁にもお願いがあります。
調書主義で判決が出されます。もちろん、公判も最重要な判断の場であります。今言ったように、シナリオ、ストーリーが作られて物事が動いてまいります。そういった意味で、判事では、よくマスコミにも、あるいは新聞、あるいは法律の専門誌等にも出ています木谷明さんという判事さんおられますね、お分かりだと思いますけれども。木谷さんが言っておりました。検察はうそをつかない、でたらめな調書は作らぬと思ったけれども、鈴木宗男事件、村木事件で、検察は自分たちに都合のいいことをする、このことに初めて気が付いたということを至る所で公にしております。
裁判所としても、やっぱり先入観を持たず、私は真摯に向き合っていただきたい。特に怖いのは報道です。報道でこれは悪いやつだとこう流されると、裁判官自身もそう受け止めているんです。今も裁判官上がりの何人かの弁護士さんが私の顧問弁護士やっていますけれども、あの平成十四年、マスコミから、鈴木宗男はどれだけ悪いやつだという思いでいたけれども、付き合ってみたら、こんな正直な人はいませんと逆に今評価されているけど、そのぐらいの差があるんですよ。
是非とも、この点、私は、最高裁判所も下級裁判所に、何をもっての本当に公正公平かと、そして真実を明らかにするかという原点をしっかり私は指導を徹底いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。 - 最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君)
お答え申し上げます。
最高裁の事務総局として、判断の在り方についてお答え申し上げることは困難でございますが、一般論として申し上げますと、もとより無実の人が罰せられるようなことが絶対にあってはならないと承知しております。そのような事態が生じないように、個々の事件において当事者双方の主張に十分に耳を傾け、また当事者双方から提出された証拠を十分に検討し、立証責任を有する検察官が合理的な疑いを超える程度の立証を尽くしたと言えるかどうか、その点を慎重に判断することが重要であると考えております。 - 鈴木宗男君
是非ともその点は、私は、裁判官含め裁判所の名誉のためにも、私はしっかりやっていただきたいということを強くお願いしておきます。
法務大臣、十三日のやり取りの中で、検察庁法十四条について、大臣は、検事総長が法務大臣をなだめるための規定であると、ちょっと冷静になってくださいと、介入しないでくださいと止めるための規定だと答弁されました。その認識というか考えは今もお持ちですか。同じですか。 - 国務大臣(小泉龍司君)
この十四条のただし書は、まず、検事総長に対しては個別的な指揮権を発動し得るということがまず書いてあります。もちろんそれはそのとおりでありますが、一方では、元検事総長の伊藤栄樹氏の著作「検察庁法逐条解説」、検察庁法に関する逐条解説はこの書籍以外は余りないようでありまして、ほぼ唯一の逐条解説だというふうに聞いておりますが、その中で、法務大臣と検事総長の意見が食い違った場合には、検事総長においても意見具申、意見申立てをして相互の誤解を解消すべきとの見解が掲載されており、このような見解も検察庁法十四条ただし書が検察の独立性を担保する趣旨であることを前提としたものである、そういう考え方を述べさせていただいたものでございます。 - 鈴木宗男君
今大臣が言われたこの検察庁法、これは前回私が問題提起したものです。ただ、この伊藤さん自身も指揮権は否定しておりませんから、ここは今の大臣だと、何かしら検察側に寄った答弁ですけれども、これは今日ここに弁護士経験の、資格持った国会の人もいますからよく分かっていると思いますけれども、伊藤さんもその指揮権はあるということは認めておりますから、この点、大臣、間違いのないように。 - 国務大臣(小泉龍司君)
それは、そのとおりでございます。 - 鈴木宗男君
その上で、大臣、じゃ、柳田法務大臣は、懲戒処分を含めてきちっと法務大臣としての職責を果たされました。今の大臣の答弁、さらには前回の委員の答弁からすると、そごがありますね。大臣の話からすれば、柳田当時の大臣の判断は間違っていたということになるんですよ。明確な、柳田大臣は指揮権使ったわけですから、大臣としての。この点、小泉大臣、私はちょっとすり替えの議論、都合のいいところだけは「検察庁法逐条解説」というのを引用しているけれども、現実、じゃ、村木事件のとき柳田大臣はどうしたかということを、大臣、きちっと頭に入れて答えてください。 - 国務大臣(小泉龍司君)
これ、柳田法務大臣の御発言の際の状況でありますけれども、そもそも担当検察官やその上司が証拠隠滅やあるいは犯人隠避という犯罪を職務上行い、その事実について逮捕また起訴をされるという展開を遂げる深刻な事態、これを受けて柳田大臣は、担当検察官に対する懲戒処分あるいは村木元局長に対する謝罪、また今後に向けての指示をなされました。
これは、事がここに至って、検察自体がもう逮捕、起訴という動かぬはっきりした状況の下で、検察庁としての、法務大臣としての指揮権を使っておられると思いますが、この指揮権は一般的な指揮権だというふうに理解をしております。 - 鈴木宗男君
大臣、最近の出来事としても、検察の方で指揮、起訴をしました、立件しました、しかし一審で負けました。もう検察もギブアップしましたね。プレサンス事件がそうですね。今、国賠の裁判やっていますよ。明らかに検察のこれは判断違いであったわけですよ。事件、無罪になっちゃったんですから。同時に、検察も抗告しなかったわけですから。こういった場合、じゃ、その個人の名誉、人権、誰が責任取るんです。
その意味でも、大臣がきちっと指導するのが筋じゃないですか。なぜ注意しないんです、そういうことについて。 - 国務大臣(小泉龍司君)
一審で取り下げたということでありますが、その適否をめぐって、捜査の在り方もめぐって、今、国賠訴訟が現に行われているわけであります。我々はその当事者であって、様々な証拠、様々な状況を整理して裁判所で争っておりますので、その段階で私が、これはおかしい、不正があった、こういう指摘はできないわけであります。しっかりとした結論を得た上でというふうに考えています。 - 鈴木宗男君
大臣、派閥のパーティーの裏金問題で大臣は二階派やめましたよ。やめなくてもいい話なんです、本来ならば。しかし、疑惑を持たれては困るといってやめたんじゃないですか。その論理からすれば、負けて、大変な人権侵害もして、会社経営にも影響を及ぼしたとするならば、おわびだとか反省があっていいんじゃないんですか、社会通念上の常識として。一切大臣はそれに触れないんですよ。それじゃ、通りませんよ。
同時に、検察庁法第十四条ただし書よりももっと重いのは、国家公務員法の第九十八条ですよ。九十八は、大臣、頭に入っていますか。簡単に言うと、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない、これが公務員法、国家公務員法の第九十八条ですよ。これは検察であろうとも通用する条項なんですよ。
私は大臣の留任を願ってやみませんけれども、大臣、私は、検察改革は必要だし、何よりも立件するという重い権限持っているわけでありますから、本当にそれは公正公平でなければいけないという、胸に、同時に、大臣がその指導監督にあるということを忘れないでほしいと思います。
この点、もう一回大臣から決意を聞いて、質問を終えます。 - 国務大臣(小泉龍司君)
検察庁に対する適切な指導、啓発、督励、これが私の一番重要な役割の一つだと、そこはしっかりと認識をしておりますし、委員からの御指摘によってなおその思いは強くなっております。
八か所の高等検察庁に行き検事正にお会いして、国会の議論も踏まえた上で検察の在り方について様々な議論をし、考え方を促し、しっかりと検察がそれに従ってくれるよう督励していきたいと思っております。