令和6年3月27日 衆議院法務委員会 寺田学議員による質問

取調べの録音・録画の実施状況

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  • 寺田(学)委員
     寺田です。三十分のお時間をいただきました。
     まず最初は、前回の一般質疑でも取り上げた取調べのことについてです。
     今、連日報道にもなっていますけれども、大川原化工機事件の件を見るにつけて、ひどいですね、どなたに言うべきなのか分かりませんけれども。
     私、実は自宅でネットフリックスとかを見ているんですけれども、是非、ここに御参集の皆さんに、「黒い司法」という数年前に出たアメリカの実話に基づく映画を見てほしいんです。
     それはどういう内容かというと、アメリカの田舎の州で、黒人の死刑囚がいるんですが、同じように死刑囚に対する司法サービスをしたいということで、ハーバードを出た青年が立ち上がって、死刑囚に対して聞き込みをしていくんですが、余りにも冤罪が多くて、その内容を調べていくと、全く事実と関係ないところで、でっち上げの供述を現地の保安官ですかが取って、結果、全く無実の人が死刑に、刑罰を宣言されて、その方を救うんですけれども、その最後のところに出てくるのは、どのタイミングを切っているか分かりませんが、十人に一人の死刑囚が冤罪、そういう疑いがあったみたいなことを描かれていました。
     こんなひどい司法というか取調べが行われているのかと思っているときに、うちの国でも、正直、ひどいひどいことが起きていたんだなということを今見ているところです。
     前回、メモの話をしました。取調べを受けている人がメモを取ることに対しては法的根拠はないということにはなりましたけれども、取調べの録音、録画の方をちょっと取り上げたいんです。
     まず、身柄拘束されている被疑者の取調べの全過程を録画することを義務づける法改正が二〇一九年施行であると思いますが、これの実施状況がどうなっているか、御答弁ください。
  • 松下政府参考人
     お答えいたします。
     令和元年六月に施行された刑事訴訟法三百一条の二第四項は、いわゆる裁判員裁判対象事件、また、いわゆる検察官独自捜査事件につきまして、逮捕、勾留されている被疑者を取り調べるときは被疑者の供述及びその状況を録音及び録画しなければならない旨を規定しております。
     最高検査庁が公表している資料によりますと、検察当局において、刑事訴訟法により取調べの録音、録画が義務づけられた事件についてこれを実施した件数は、裁判員裁判対象事件では、令和二年度が二千四百七十三件、令和三年度が二千百九十四件、令和四年度が二千四百九十八件でございまして、検察官独自捜査事件では、令和二年度が六十七件、令和三年度が六十件、令和四年度が九十七件でございます。
  • 寺田(学)委員
     件数をお伺いしたのでそうなりましたけれども、法的に対象となっている件数の中で録音、録画されているものの割合がお手元にあれば御答弁いただきたいと思います。
  • 松下政府参考人
     お答えいたします。
     正確な数字はございませんけれども、ほぼ一〇〇%でございます。
  • 寺田(学)委員
     今日、警察の方も来られていると思います。義務づけられたものの全過程の録音、録画というのは、実施状況、今お答えできるのであれば、御答弁できますか。通告は包括的にしていると思いますが。
  • 親家政府参考人
     お答えいたします。
     警察におきましては、刑事訴訟法第三百一条の二の規定に基づき、裁判員裁判対象事件等で逮捕、勾留中の被疑者の取調べ等について録音、録画を実施しているところでありますが、この制度対象事件について、直近の令和四年度に録音、録画を実施したのは二千六百二十八件となっております。

取調べの録音・録画の対象事件の拡張等

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  • 寺田(学)委員
     割合をちょっと、お手元にあれば、後ろの方と御相談しながら、後で御答弁いただきたいと思うんですが。
     さっき大川原化工機事件の話をしましたけれども、ああいうことが起きないように様々なことを刑事訴訟法の中で定めて、録音、録画というものを義務づけながらやってきたにもかかわらず、ああいうことが起きたわけですし、ああいうふうに話題にならないものでもそういうことが起きていることは想像がつくんですが、局長にちょっと聞きたいんですけれども、何でこういうふうに録音、録画を義務づけながらもああいうことが起きちゃうんですかね。御所見を。
  • 松下政府参考人
     恐縮でございますが、個別の事件についての内容に関わる事柄でございますし、ああいうことというのがちょっと具体的に分からないというところもありまして、お答えは差し控えさせていただきたいと存じます。
  • 寺田(学)委員
     個別の事件についての評価を聞きたいというよりも、一般的に起こっていることに対して、個別の事件を想起しながら一般的なお答えを聞きたいというところですけれども。
     大川原化工機事件の話、時系列的に見ますけれども、もう最悪ですよ、聞こえてくるものに関しては。動機やら何やら含めて、全部最悪ですよ。あんなことが何で起きるんだろうと。いや、録音、録画やっていますよ、全件やっていますよといいながら、警察も、後で分かれば、ほぼやっているでしょう、義務づけられているものに関しては。それでもあんなことが起きるということは、義務づけの範囲を含めてやはり十分じゃないということになると僕は思うんですけれども。
     局長、いいですか、もう一回聞きますけれども、何であんなことが起きちゃうんですかね。
  • 松下政府参考人
     お答えいたします。
     個別のことはおきまして、一般論として申し上げますけれども、取調べが適正に行われなければならないというのは当然のことでございまして、そのように、検察の精神や基本姿勢を示す「検察の理念」におきましても、取調べにおいては、供述の任意性の確保その他必要な配慮をして、真実の供述が得られるように努めるというふうにされているところでございまして、検察当局として、取調べを適正に行うということについて強い意識を持っているということは前提としてございます。
     それが徹底されるように、検察官に対する教育でありますとか、あるいは一部の重要な事件についての録音、録画といったことが行われているわけですけれども、その中で、取調べについて問題が指摘される例があることも事実でございますが、そういったものについても、決して許容しているわけではございませんので、そういうことが行われないように、様々な形で、法律に従って、また憲法にも規定されているところでございますけれども、そういった規定に即して適正な取調べが行われるように、今後とも検察当局としては努めていくものと考えております。
  • 寺田(学)委員
     警察にもちょっとお伺いしたいんですけれども、さっきの割合も含めて、お分かりになったらその御答弁を欲しいんですけれども、大川原化工機事件そのものについての評価を聞くつもりはありませんが、あのようなことが起きてしまうことは何でなんですかねということは、ちゃんと警察からも聞きたいんですけれども、どうですか。
  • 親家政府参考人
     お答えいたします。
     まず、録音、録画の実施率の方でございますけれども、先ほど御答弁申し上げた制度対象事件に加えまして、取調べが制度対象事件に及ぶ見込みがある場合にも録音、録画は実施しておるところでございますが、いわゆる見込み事件と呼んでおりますけれども、こういったものも含めたものの実施率について申し上げますと、令和四年度は対象事件のうち九七・三%を実施しているところでございます。
     また、取調べについて、個別の事件についてはちょっと差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般的に、私ども、取調べが適正に行われなければいけないというふうには重々承知しておりますので、これはいろいろな機会を捉えて各都道府県警察を指導していきたいというふうに考えております。
  • 寺田(学)委員
     当然、法律ですから、制度で定められた部分は基本的には実施されているんでしょう。ただ、実施されてもあんなことが起きているという現状があるわけで、それを踏まえて、じゃ、その制度自体どうなんだろうという考え方を行政としてもしなきゃいけないでしょうし、立法府側としてもしなきゃいけないと思うんです。
     もちろん法律で定められた部分は義務づけとしてされていくんだと思いますが、取調べを受ける側が、いや、取らないでくれと言う人も、お立場を含めて、いるとは思います、証拠が残ることを嫌がる方もいると思いますが、ただ一方で、自分の取調べのときにはちゃんと録音、録画してくれと、それを求めたときに、拒否する根拠というのはあるんですか。検察も警察も。
  • 松下政府参考人
     お答えいたします。
     刑事訴訟法百九十八条一項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」と規定をしつつ、取調べの具体的方法については定めておらず、一般的に、取調べ方法の選択や実施は、憲法や刑事訴訟法等の関係法令に反しない限り、取調べを行う捜査官の裁量に属するものであると解されております。
     刑事訴訟法上、被疑者、被告人に取調べの録音、録画を実施するよう求める権利を認めた規定はございませんし、刑事訴訟法三百一条の二第四項に規定された録音、録画義務の対象事件以外の事件については録音、録画は義務づけられておりませんので、当該事件の取調べで録音、録画を実施するかどうかは、取調べを実施する検察官において、その裁量に基づいて、取調べを録音、録画することの有用性や問題点を踏まえ適切に判断することとなると承知をしております。
     なお、申し上げれば、検察当局においては、法令により義務づけられた事件の録音、録画に加えまして、取調べを録音、録画することの有用性や問題点を踏まえて、事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者や参考人の取調べを録音、録画することが必要だと考えられる事件については、積極的に実施しているものと承知をしております。
  • 親家政府参考人
     お答えいたします。
     法的な根拠のところにつきましては、先ほど法務省の方から答弁があったとおりだと考えております。
     警察におきましても、制度対象事件や、あるいは、国家公安委員会規則である犯罪捜査規範に基づきまして精神に障害を有する被疑者に係る取調べにおいて録音、録画を実施をしているところでございますが、これ以外についても、個別の事案ごとに、被疑者の供述状況、供述以外の証拠関係等を総合的に勘案しつつ、録音、録画を実施する必要性がそのことに伴う弊害を上回ると判断されるようなときには録音、録画を実施しているところでございます。
  • 寺田(学)委員
     法律で義務づけられた録音、録画に関してはほぼ実施されているにもかかわらず、ああいう事件が最近起きたわけですし、いろいろ長々と答弁いただきましたけれども、検察にせよ警察にせよ、つまるところ、裁量権というか、録音、録画するかどうかは、法律で義務づけられていないところに関しては警察と検察が持っているわけですよ。結果的に、大川原化工機事件みたいなのが起きたわけですよね。任せちゃいられないよと。いつ何どき、国民の一人として、政治家の一人としてもそうですけれども、あんなことをされるか分からないという恐怖感があるわけで、それに対する対抗措置として、録音、録画してくれと言った人に対してはしっかりとする環境を整えないとフェアじゃないですよ。
     これは多分、答弁はすごく、ずっと固いと思うので、前回も委員長に申し上げましたけれども、僕は冗談で言ったつもりじゃない、模擬的に、取調べも含めてですけれども、やはり、大川原化工機事件の経緯をもう一度丹念に見直しましたけれども、最悪ですよ。こんなことが起きていることに対して法務委員会として何も対処しない、何もアクションを起こさないというのは私は怠惰だと思いますので、それは別に、集中審議なのか、別建てをした上で何かしら問題点を洗った上で、どういう解決策があるとか対処があるのかというのを、法務委員会としての、与野党を交えて何かしら答えを出していくぐらいの能動性がないと、私は国民に対して示しがつかないと思いますので、是非、筆頭理事お二人を含め、委員長には御高配いただきたいと思います。
  • 武部委員長
     理事会にて協議させていただきます。
  • 寺田(学)委員
     ということで、この件に関しては、委員会のマターということで是非やっていただきたいと思いますので、理事会で協議していただければと思います。