令和6年4月4日 参議院法務委員会 福島みずほ議員による質問

大川原化工機事件についての法務省の認識、調査の必要性

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  • 福島みずほ君
     次に、大川原化工機事件についてお聞きをいたします。なぜ起訴を取り消したんですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     お尋ねの事案につきまして、東京地方検察庁におきましては令和三年七月三十日に公訴を取り消しましたが、その理由についてもその当時公表しておりまして、公訴事実記載の噴霧乾燥機が軍用の細菌製剤の開発、製造若しくは散布に用いられる装置又はその部分品であるもののうち省令で定める仕様の噴霧乾燥機に該当するということについて、公訴提起後、弁護人の主張等を踏まえて再捜査を実施した結果、その該当性に疑義が生じたことなどの事情を考慮したという理由を公表しているものと承知しております。
  • 福島みずほ君
     つまり、噴霧機で完全に温度が高くならず、完全に殺菌できない。つまり、これを兵器として転用することはできないことが証拠から、実験から明らかになったわけですが、このことは捜査のときの供述などでもはっきり出てきています。あるいは、そういう実験を警察はやっておりますが、それが極めて不十分だった。ちゃんと当該の人や、その大川原化工機の人たちの意見を聞いてちゃんとやっていたら、こんな冤罪、冤罪ですよね、起こさなかったわけですよね。それについてはいかがですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     先ほど申し上げましたとおり、御指摘の事件につきまして、検察当局においては、公訴提起後の弁護人の主張等を踏まえて再捜査を実施した結果、要件該当性に疑義が生じたので公訴を取り消したということを公表しているものと承知しておりますけれども、それ以上の個別の事件における証拠の内容や評価に関わる事柄につきましては、法務当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  • 福島みずほ君
     明確に弁護人が主張している、被告人たちが主張しているような、だから、実験やれば、それは無理だと、これは該当をしないということが明らかになったので起訴を取り消したわけですよね。無罪判決でもないですよ。起訴した検察官が、公判、これは検事がやったわけですが、起訴を取り消したわけですよね。
     これ、明らかに問題があったということじゃないんですか、捜査に。警察そして検察、いかがですか。
  • 政府参考人(千代延晃平君)
     お答えいたします。
     お尋ねの件につきましては、公訴が取消しとなったということは、結果として立証が尽くせていなかったということであると認識をしており、真摯に受け止めております。
     捜査は、法と証拠に基づき緻密かつ適正に行われるべきものであり、その旨徹底してまいりたいと考えております。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     東京地方検察庁におきましては、公訴を取り消した際、起訴時点ではその時点での証拠関係を前提に起訴相当と判断したものであるが、結果的に後に要件該当性に疑義が生じたことは反省すべき点と考えている旨をコメントしておりまして、また、一般論として申し上げれば、検察当局においては、公訴取消し等を行った場合には、当該事件における捜査・公判活動の問題点を検討し、必要に応じて検察官の間で問題意識を共有して、今後の捜査、公判の教訓としているものと承知をしております。
  • 福島みずほ君
     何を共有しているんですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     一般論としてということで先ほど申し上げたところですけれども、若干繰り返しになりますが、公訴取消し等を行った場合におけるその事件の捜査・公判活動の問題点を検討し、その内容に応じて検察官の間で問題意識を共有しているというところでございますが、本件に関してということで申しますと、現在、国家賠償請求訴訟が係属中でもありますし、個別事件における検察当局の活動に関わる事柄でもございますので、お答えすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  • 福島みずほ君
     国家賠償請求訴訟で詳細に論じられていますよね。検察、まあ警察も問題だが、検察も問題だった、あるいは、今現在、証拠の捏造があったんじゃないか、取調べにも問題があったんじゃないか、いろんなことも指摘されています。でも、決定的なのは、法令の適用と、それから、これで細菌を完全に殺菌できないということが明確であるにもかかわらず、にもかかわらず突っ走って起訴をして長期間勾留し、こういう被害を与えたということだと思います。

否認事件において保釈が認められない現状

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  • 福島みずほ君
     先日、古庄議員と、それから鈴木宗男議員も質問された人質司法についてお聞きをいたします。
     自白した場合と否認した場合の保釈率の違いです。自白した場合は約七一%の人は一か月以内に保釈が認められ、否認の場合は六か月でようやく七四%。
     通常第一審における終局人員のうち保釈された人員の保釈の時期、地裁、令和三年ですが、自白の場合は三分の一が保釈されるが、否認の場合は四分の一しか保釈をされない、しかもその割合が、自白をしている場合は、保釈をされている三分の一のうち八割が釈放の日が第一回公判期日の前であると。しかし、否認している場合は、四分の一しか保釈されないが、そのうちの四五・九%にしかすぎないと。第一回公判期日の後、否認しているケースはようやく五三・七%ということで、極めて、自白している場合と否認している場合と違います。
     そもそも、被疑者、被告人は無罪の推定があり、本来なら被疑者の段階で起訴前保釈が認められるべきだと思います。トランプ大統領は、逮捕をされましたけれど、次の日に釈放され、無罪を主張しています。これが通常の姿だと思います。無罪を主張して無罪で争うときに、攻撃防御を尽くさなくちゃいけなくて、それが罪証隠滅の可能性がある、おそれがあるとされたら、本当に被疑者、被告人、闘えないですよ。無罪の立証が本当にできないですよ。
     捕まえて勾留をして、そして自白をしなければずうっと勾留し続けるというのは、まさに被疑者、被告人の無罪の推定、拘束は極めて例外的でなくちゃいけないということに明白に反するんじゃないですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     被告人の保釈は、個々の事案ごとに保釈の要件に照らして裁判所又は裁判官において判断される事柄でございまして、法務当局としてはお答えを差し控えざるを得ないということを御理解いただきたいと思います。
     その上で、あくまで一般論として申し上げれば、被告人の供述態度は、罪証隠滅行為や逃亡することについての被告人の主観的意図を判断する資料として重要な意味を持つとの指摘があるものと承知をしております。(発言する者あり)
  • 委員長(佐々木さやか君)
     御質問は。福島みずほさん、質問を。
  • 福島みずほ君
     ちょっと、済みません、ちょっと質問時間があるのでどちらかにしてください。止めてくださっても結構です。じゃ、済みません、質問は続けさせてください。そして、このことはまた大いにみんなで議論をしたいと思います。
     ところが、今、それはやっぱり違いますよ。データからいっても明確に、否認している場合と自白している場合と明確に違うじゃないですか。ここまで明らかなんですよ。とりわけ、執行停止中にがんで亡くなった相嶋さんのことについてお話をします。
     二〇二〇年九月、貧血を発症し、黒い便が出る。十月一日、検査で胃に大きながんを発見、弁護人が外部病院での診療を拘置所に申し入れたが、聞き入れなかった。十月十六日、八時間だけの勾留執行停止、大学病院で進行性がんと診断、保釈請求したが、検察は罪証隠滅のおそれがあると主張し、東京地裁も却下した。十一月五日、勾留執行停止中に病院で、ただもう手遅れで、車椅子状態、抗がん剤も使用できないという状況で、二〇二一年二月に被告人のまま勾留執行停止中に亡くなるということです。
     保釈請求は八回です。自白しないから拘束し続けて、保釈認めない問題もあります。でも、とりわけこの人はがんの告知まで受けているんですよ。大学病院で進行性がんとされていて、にもかかわらず、保釈請求が却下ですよ。これ、裁判所、そして検察官、保釈不相当とした検察官、妥当ですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     お尋ねは、個別事件における検察当局の活動や裁判官あるいは裁判所の判断に関わる事柄でございますし、また、現在、国家賠償請求訴訟が係属中でございまして、その中で検察官の公訴提起や勾留請求の国家賠償法上の違法性等についても審理の対象となっておりますことからお答えすることは差し控えますが、なお、一般論として、検察官においては、個々の事案ごとに保釈……(発言する者あり)
  • 委員長(佐々木さやか君)
     発言者の声が聞こえませんので、御静粛にお願いいたします。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     一般論として、検察官においては、個々の事案ごとに保釈の除外事由の有無を検討して保釈請求に対する意見を述べるなど、適切に対応しているものと承知をしております。
  • 福島みずほ君
     誰が考えても不相当じゃないですか。何で、がんにかかっていて、がんとちゃんと、がんとちゃんとって変ですが、進行性がんだと認定されて、八回、何で保釈却下なんですか。これで保釈却下ですよ。がんだと分かっても保釈却下ですよ。外に出してもらえない。専門家に診てもらいたいと言っているのに、本当にこの人は気の毒だと思いますよ。
     裁判所、たくさんの裁判官がこのケースに関わっています。大川原化工機事件の保釈の請求却下、二十三人とも言われていますが、これ問題はなかったんですか。問題だと思いますよ、余りにひどいと思いますよ。裁判所、どうですか。
  • 最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君)
     お答え申し上げます。
     保釈の判断につきまして、個々の事件における各裁判体の判断事項につきまして、最高裁判所の事務総局としてお答えすることは困難でございます。
  • 福島みずほ君
     いや、おかしいですよ。
     平成二十八年改正による刑事訴訟法なんですが、その判断に当たっての考慮事情として、保釈された場合に被告人が逃亡し又は罪証を隠滅するおそれの程度のほか、身体の拘束の継続により被告人が受ける健康上、経済上、社会生活上又は防御の準備上の不利益の程度その他の事情が明記されています。
     無罪を主張しているんだったら、防御の準備が必要じゃないですか。無罪を主張している人間が、じゃ、罪証隠滅のおそれがあると言われたら防御できないですよ。
     それから、この大川原化工機事件の場合は、明確にがんだと認定されているのに釈放しないんですよ。裁判所、おかしくないですか。何でここで見殺しにするんですか。何で検察官は保釈不相当って言うんですか。でも、これが実態だとしたら、変えなきゃ駄目じゃないですか。人質司法を変えなければならないですよ。誰だってこんな目に遭うかもしれない。こんな裁判、こんな裁判所の判断、検察官の判断、勾留ないですよ。勾留は例外的なのに、何でこの人、死ななくちゃいけなかったんですか。

保釈の判断における罪証隠滅要件の具体化

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  • 福島みずほ君
     そして、今日は、お手元に資料出ていますよね、ありますね。ヨーロッパ評議会が作成した、ヨーロッパ人権条約についてのヨーロッパ人権裁判所の判例についてのガイドというのがあります。
     これは拘禁継続の理由なんですが、保釈を拒否する四つの基本的な容認できる理由。被告人が公判に出頭しない危険性、被告人が釈放された場合、司法の運営を害する行動を取る危険性、更なる犯罪を犯す危険性、公の秩序を乱す危険性、これらのリスクは正当に立証されなければならず、これらの点に関する当局の推論は抽象的、一般的、固定的であってはならない、ステレオタイプであってはならないというふうに書かれています。こうあるべきじゃないですか。
     罪証隠滅の相当な理由がなければならない、相当な理由や具体的なことがないといけない、証拠を破壊するといったようなことがはっきり認められない限り保釈認めるべきじゃないですか。裁判所、どうですか。
  • 最高裁判所長官代理者(吉崎佳弥君)
     お答え申し上げます。
     現在の刑事訴訟法の枠組みの中で、個々の事件における各裁判体の判断事項でございます。一般論として申し上げれば、被告人が無罪を主張している、あるいは否認していることのみによって罪証隠滅を、罪証隠滅する相当な理由が認められることではなく、それを含めた事案ごとの事情を勘案して判断されているものと承知しております。
  • 福島みずほ君
     だから、それが問題でしょうと言っているんです。
     自白している場合と、それからそうでない場合とで全くデータが違う。争っていたら出れないんですよ、出さないんですよ。病気になっても、がんと認定されても、保釈認めないんですよ。こんなのおかしいじゃないですか。せめて、日本の条文、いや、日本の条文の運用に当たっても、せめてヨーロッパ人権裁判所の判例ガイドに沿って、具体性とかこういうことがあるということで認定してくださいよ。
     法務大臣、検察官とか、今日聞かれていかがですか。

拘置所医療の問題点

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  • 福島みずほ君
     それから、これ、医療の問題もあります。
     先ほども言いましたが、相嶋さん、十分な医療を受けていないですよ。病気で大変な状況で、そして執行停止ですよ。この中で、がんの可能性がある、がんと認定ようやくされて、もうそのとき手遅れなんですよ。これ、拘置所の失態じゃないですか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     御指摘の点、また御指摘の事案、これは現在係争中でありますので、その点に直接お答えすることは差し控えたいと思いますが、まず一般論として、被収容者の健康の保持、これは拘置所を含む刑事施設の重要な責務であります。そして、この点を踏まえて、刑事施設においては、被収容者の健康状態に注意を払い、医師による診療や治療薬の処方等の必要な医療措置を講じているものと承知しておりますが、引き続き、先生御指摘の点も含めて、今後とも、改善を要する点がないかどうか、常に医療体制の見直しを図りながら、被収容者の健康管理にしっかりと努めていきたいと思います。
  • 福島みずほ君
     大臣が改善する点があればと言って、今後も検討すると言っていただいて、ありがとうございます。
     この件は明確に医療が問題だったんです。何でこの人はがんの治療を受けられなかったか。本人は望んでいますよ、専門医の診断が欲しいって。そんな診断を受けられなくて、結局手遅れで亡くなっている。これは明らかに拘置所、収容施設の中の医療の欠陥ですよ。こんな形で死ななくちゃいけないというのは欠陥があると思います。
     大臣におかれましては、被拘禁者の医療の問題について本当に取り組んでくださるよう強く求めて、質問を終わります。