令和6年4月25日 参議院法務委員会 森まさこ議員による質問

人質司法問題に関する法務・検察刷新会議の問題意識

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  • 森まさこ君
     しっかりお願いしたいと思います。
     具体的な質問に入る前に先日の続きを先にやってしまおうと思うんですけれども、問い六になります。人質司法の問題です。
     この委員会では皆さんから人質司法の問題が出されておりますが、皆様のお手元に、資料三、法務・検察刷新会議第一回の議事録がございます。私が大臣時代に、当委員会で皆様から様々な多くの御指摘をいただきまして、この会議を設置したものです。この会議の設置の経緯につきまして、この資料三の冒頭の私の大臣挨拶の中で触れております。
     私は、国内からも海外からも、法務大臣として、人質司法との批判を受け、この問題を深く考えてまいりました。海外では間違ったデータによる、誤解による指摘もございましたので、それをしっかりと説明をしてまいりましたが、反論できかねる部分があったことも事実です。その部分は不断の見直しをしていくと私が大臣時代にお約束をし、司法の、国際司法のサミットである京都コングレスにおいても、初めて法務省主催で日本の刑事司法の在り方についてのサイドイベントを設置をしたところでございます。
     この資料三の中に、大臣の挨拶の中で、この刷新会議で話し合うべき三つの柱について触れました。一つ目は、検察の綱紀粛正の問題、検察の倫理の見直しでございます。二つ目は、検察、法務行政の透明化の問題。三つ目が、刑事手続全般の在り方です。人質司法、冤罪を含む刑事手続全般の在り方です。
     議論の結果については、これ上川大臣のときに出されましたけれども、資料四、法務・検察行政刷新会議報告書二十二ページの結びに書かれております。報告書の中には、ここには添付しておりませんけれど、人質司法についてという項目もあって、皆様方の様々な御意見が書かれた報告書となっております。
     これを受けて、報告書は、今後の具体的な取組方針を令和三年一月二十六日に出され、法務省ガバナンスPTを設置し、法務省のガバナンスに関する事項を検討するとされました。しかし、柱の三つ目、人質司法を含む刑事手続の在り方については、ガバナンスPTでは取り上げず、引き続き刑事局において対応するとされました。
     そこで、法務・検察行政刷新会議の報告書を踏まえた法務省ガバナンスPTや刑事局における取組状況についてお聞かせをいただきたいと思います。
     この点につきましては、先日私が御質問したところ、小泉大臣におかれましては、まだつまびらかに目を通すに至っておられず、熟読の上、法務行政に生かしていきたいと御答弁でございましたので、改めて目を通された後、この取組状況、今どうなっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     委員が提唱され、そして立ち上げられ、また熱心な検討が行われ、また結論も出していただいたこの刷新会議、大変貴重な存在であり、また我々に多くのものをもたらしてくれているというふうに感じております。心から敬意を表し、感謝を申し上げたいと思います。
     先生が三つ、委員が三つの柱をということで当時の大臣挨拶でおっしゃいましたが、それを更に要約しますと、失礼ながら要約しますと、検察あるいは法務行政に対する信頼、国民を含めた内外の信頼、それを取り戻し、構築し、維持をするその必要性について問題提起をいただいたと思っております。
     この後、刑事司法の在り方については、刑事局でその後、検討を含め、検討を進めているところでありますけれども、先生が提唱されたその精神は法務省にしっかりと根を下ろしつつあるというふうに私は感じております。
     具体的な取扱いについてはまた刑事局から御説明をしたいと思いますけれども、その精神をいっときも忘れることなく引き継いでいきたい、このように思っております。

被疑者の取調べについて弁護人の立会いを認める制度についての検討状況

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  • 森まさこ君
     ありがとうございます。
     続きまして、刷新会議の報告書に書かれている三つの柱の中で特に重要な三つ目の柱の下で議論された、被疑者取調べへの弁護人の立会いについて質問をさせていただきます。
     この問題に関しまして、当時厚生労働省の局長でおられた村木厚子さんの無罪事件等の一連の事態を受けて検察の在り方検討会議が設けられ、平成二十三年三月に検討会議の提言が出されました。
     村木厚子さんは、御存じのとおり、全面否認をしたところ、逮捕、勾留をされました。約半年間勾留され続けている中で村木さん御本人が検事による証拠偽造を発見し、無罪となった事件です。
     その第六回会議、つまり在り方検討会議の第六回では、村木さん御本人が弁護人立会いの必要性を説かれました。このヒアリングの議事録、村木さんの御証言を資料五で配っております。本当に涙なしでは読めないものです。
     村木さんは弁護人の立会いの重要性について、次のように述べておられます。
     取調べというのは、リングにアマチュアのボクサーとプロのボクサーが上がって試合をする、レフェリーもいない、セコンドも付いていないというような思いがいたしました。いろいろな改革の方法はあるでしょうけれども、せめてセコンドが付いていただけるということだけでも随分まともな形になるのではないかというふうに思います。特に切実に思ったのは、調書にサインをするときに、具体的にその調書の内容を弁護士に話して、記憶に頼らなくて物を見て話をして、この調書にサインをしていいものかどうかというのを、最低限でも相談をしたかったなというのが実感でございます。
     このように、村木さん御本人が非常に強い実感を込めて弁護人の立会いの必要性について述べておられるのです。
     この資料五は、在り方検討会の議事録です。私が大臣になった当時は法務省のホームページに載っていませんでした。載せるよう指示したところ、データは紛失したと言われました。何か月も捜していただきまして、ようやく紙の状態で見付かりました。その紙をPDFにして、現在、法務省のホームページ、在り方検討会のところにPDFの形式でそのときに載せてもらいまして、今も載っておりますけれども。
     当時、発見されて、私がそれを、大量なものをコピーして自宅に持ち帰って一からずっと全部読みましたところ、何と村木さんに関する記述だけが抜けておりました。そこで、私が戻りまして、これちょっと一部抜けているからこれも捜しなさいと言って、わざとではないと思うんですよ、なぜなくなってしまったのか分かりませんが、一生懸命捜させまして、やっと見付かり、それが今もPDFになって載っております。
     これ、長文でございますが、皆さんに読んでいただきたいので、今日、資料五、大量になりますが、皆さんのお手元に配ってあるわけでございます。
     その意味もあって、先ほどの三つの柱の二つ目は、行政の透明性ということで、こういったデータが紛失しないように、法務省の組織として、二年間ずつ検事さんが入れ替わり立ち替わりしていることもその一つの原因になっているかもしれませんので、組織の在り方ということもしっかり、こういったものが紛失しないようにしていってというようにこの柱の二も設けたわけでございます。
     この問題については、私自身もかねてより当委員会において質疑を重ねてまいりましたけれども、資料六にありますような議事録で、相当厳しくここもやり取りさせていただきましたし、これではない令和三年五月十八日の法務委員会においては、当時の上川法務大臣から、被疑者の取調べへの弁護人の立会いを含めた捜査全般の在り方、人質司法との批判を受けることに関し大臣から、対応の指示を踏まえた刑事局における対応状況についてフォローしていただくという御答弁を上川大臣からいただきました。私からは、実務者レベルでの、弁護士と法務当局との協議の場を設置することについて御検討をお願いしました。
     その後、法務省においてどのような対応がなされてこられたのか、今後どのように取組を進めることを考えておられるのか、法務大臣、それから刑事局から御答弁お願いします。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     被疑者の取調べへの弁護人の立会い制度については、平成二十八年の刑事訴訟法改正に先立つ法制審議会の部会において議論をされたことがございましたが、証拠収集方法として重要な機能を有する取調べの在り方を根本的に変質させて、その機能を大幅に損なうおそれが大きいなど、様々な問題点が指摘され、一定の方向性を得るには至らず、法制審の答申には盛り込まれなかったという経緯がございます。
     その後、この点については、御指摘の法務・検察行政刷新会議の報告書において、平成二十八年刑訴法改正の三年後検討の場を含む適切な場において、弁護人の立会いの是非も含めた刑事司法全体の、刑事司法制度全体の在り方について幅広く検討、幅広い観点からの検討がなされるよう適切に対応することとされたものでございます。
     その上で、法務省においては、現在、この三年後検討の場として改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を開催しておりまして、被疑者の取調べへの弁護人の立会いについてもこの場に、この協議会における協議の対象となり得るものと認識をしております。まずは同協議会における議論を見守りたいと考えております。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     今大臣から御答弁申し上げました改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会でございますが、こちらは令和四年七月から既に十二回の開催をしております。
     この協議会におきましては、これまで第一段階の議論といたしまして、事務当局及び構成員から統計資料等に基づく説明をいたしまして、実務における刑事手続の実際の運用状況等が共有されたところでございます。その上で、第二段階の議論といたしまして、今後、刑事手続の制度上、運用上の課題について協議が行われることとなっておりまして、被疑者の取調べへの弁護人の立会いについても協議の対象となり得るものと認識をしております。
     法務省といたしましては、附則の趣旨を踏まえ、引き続き充実した協議が行われるように尽力をしてまいりたいと考えております。
  • 森まさこ君
     大臣、今は盛り込まれないことになったとおっしゃっていますけど、正確には、盛り込まれないけれども、これは要否及び当否も含めて別途検討されるべきというふうにありますので、ここ、私、資料六でお配りしている議事録をよく読んでいただきたいなというふうに思います。引き続き、しっかりここを検討をしていただきますようにお願いをいたします。