令和6年5月16日 参議院法務委員会 森まさこ議員による質問

取調べへの弁護人の立会いを刑事手続の在り方協議会での議論の対象とする必要

(国会議事録URLはこちら

  • 森まさこ君
     自民党の森まさこでございます。
     法案審議に入る前に、前回の続きの冤罪防止について質問をさせていただきます。
     私が法務大臣当時設置した検察行政刷新会議で話し合うべき三つの柱を、前回先生方にお示ししました。一つ目が検察官の倫理、二つ目が、公文書をなくさないように、法務行政の透明化、三つ目が我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにするための方策であります。
     これらについて議論が取りまとめられて令和二年十二月に報告書が出され、それを受けて令和三年一月に法務省ガバナンスPTが設置されました。
     本日お配りしている資料の一にありますとおり、法務省ガバナンスPTで様々なことが決まりましたが、柱の三つ目であります人質司法を含む刑事手続の在り方については、ガバナンスPTでは取り上げられず、引き続き刑事局において対応することとされました。
     時間がないので、このガバナンスPTについては資料一にありますので触れなくて結構ですので、法務省、三つ目の柱、人質司法を含む刑事手続の在り方、取調べにおける弁護人の立会いについて、どのような対応がなされたのですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     お答えいたします。
     法務・検察行政刷新会議の報告書におきましては、まず御指摘の、我が国の刑事手続の在り方に関して法務・検察行政刷新会議において議論すべき課題として取り上げるということ自体について、この会議体として取り上げることについては合意を見るに至らなかったとされているものと承知しております。
     その上で、法務省におきましては、現在、平成二十八年成立の刑訴法等一部改正法の附則で求められている検討に資するため改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会を開催しておりまして、御指摘の報告書において言及されている事項に関しましても、同協議会において協議が行われ、又は今後の協議の対象となり得るものと認識をしております。
     法務省としては、附則の趣旨を踏まえて、引き続き充実した議論が行われるように尽力してまいりたいというふうに考えております。
  • 森まさこ君
     大臣、よく御覧いただいてください。資料二に、今刑事局長が言った附則九条、これに基づいて現在の在り方協議会、これが資料三、こちらを設置したというんです。
     そして、その中で、先ほど私が言った刷新会議の報告書、これが資料四です。これについても議論がなされているというような答弁でしたけれど、資料四を御覧ください。
     これが刷新会議の取りまとめの報告書です。令和二年十二月に私の後の上川大臣に提出されました。赤字で私が引いておきました。とりわけ被疑者取調べへの弁護人の立会いについて、令和元年六月までに施行された平成二十八年改正刑事訴訟法の三年後検討、三年後検討の場を含む適切な場において、弁護人立会いの是非も含めた刑事司法制度全体の在り方について検討がなされるよう適切に対応することと報告をされております。これを上川陽子大臣が受け取りました。
     そこで、私はこの当委員会で、元大臣である私が現職の大臣の上川大臣に質問をしたんです。令和三年三月三十日、四月八日、五月十八日と三回質問しました。そして、先日の四月二十五日は小泉大臣に質問をしているんです。上川大臣に質問をして、上川大臣はこう答えました。資料四の法務・検察行政刷新会議の報告書のとおりですと。それで、これを刑事局に指示しましたというふうに答弁しているんです。
     ところが、今刑事局長が言った今現在つくられている在り方協議会、資料の九に付けておきましたけれども、九の二が、まず第一回において、この在り方協議会で何を議論するかということを法務省の担当者が、吉田構成員という人が言っているんです。資料の十七ページですけど、資料の九の二を見ますと、検討項目についてと言っています。弁護人の取調べの立会いの制度が先ほど指摘に挙がりましたが、平成二十八年改正で取調べの録音・録画制度が導入されているわけで、もしそれで足りないということが確認されるのであれば議論することもあり得るのかもしれませんが、まずは附則の九条一項、二項に基づく検討を先に行い、その上で、なお立会い制度について議論する必要があるのかを考える。必要があるかどうかを考えるとなっているんです。
     だけど、これは刷新会議の報告書で議論をするというふうに報告されて、上川大臣がそれを受け取り、そのとおりだと思いますと、元大臣の私が質問したのに現職の法務大臣が答弁しているんですよ。だから、これ、議論するのかどうかを今から考えるんじゃなくて、議論するに決まっているんです。
     これ、このことを、今現在開かれている在り方協議会のこの冒頭のときに刷新会議のことは全く触れられてなく、平成二十八年の附則九条のことだけ触れられている、そこには録音、録画と書いてあるから。でも、録音、録画を、もちろん少し進展しました、しかし現状、その後でも様々なことが起きていて、現場の弁護士さんたちが指摘しているじゃないですか。
     そして、刷新会議において、私がやったときの刷新会議においていろんな意見が出ているんです。それを資料五に付けておきました。いつも資料がたくさんで済みませんね、思いがあふれてしまうものですから。この資料五に、取調べの弁護人の立会いについて刷新会議の委員の先生たちがかんかんがくがく議論したの、全部ピックアップして付けておきましたよ、五の一から五の幾つかまで全部。
     これ、賛成も反対もいろいろありますけれども、この議論をして、そして当時の鎌田座長が、賛成と反対が拮抗していると、これは、この会でヒアリングをもしすると、ヒアリングをした以上はそれを受け止めて、そこからそれを前提に何をどうするかの議論を二、三回は続けないといけないということだろうと思うから、時間もないし、取りあえず話を聞いてアリバイづくりで終わってしまったというのは余りやりたくないから、ここは、さっきの資料四のように、報告書に刑訴法の見直しのときに議論をすべきというふうに書いて、そして見直しの場を委ねるというふうに発言しているんですよ。
     それが見直しの場になったら議題にも取り上げられていないというのは、国会における元大臣の質問に対するその当時の大臣の答弁、これを無視した国会軽視ではないですか。
     この九の三を見ますと、それから九の四ですよ、日弁連から出ている河津委員が、取調べの弁護人の立会いについて議論すべきというふうに言っているんですよ。私はこれ正面から議論すべきだと思います。
     前回の質疑で御紹介させていただきましたとおり、当時厚労省の局長でおられた村木厚子さんの無罪事件等の一連の事態を受けて設置された検察の在り方検討会、これ名前が似ているんですけど、現在の在り方協議会じゃなくて昔の在り方検討会です、こちらの資料をたくさん皆さんに配らせていただきました。村木さん御本人が、実体験した本人として被疑者取調べにおける弁護人の立会いの必要性について当事者としての重要な御意見を述べています。この議事録が当時なかったから、私が一生懸命捜して法務省のホームページにまた載せたんです。それで、さっきの刷新会議の柱の二で、ちょっと公文書の取扱い、行政の透明性、これしっかりやるように、それも言いました。そして、今は載っています。それを皆さん見てください。
     村木さんのように被疑者として検察官の取調べを受けた方、この御意見、御経験を伺う機会を今の在り方協議会で設けるべきです。これヒアリングをして、そして取調べにおける弁護人の立会いの要否について正面から議論すべきであると思います。
     この刷新会議、もう報道されている公知の事実だから申し上げますけど、私は、当時の私の法務大臣の辞任届を出して、法務大臣という職を賭してこの刷新会議を立ち上げたんです。安倍総理に辞表を持っていきました。
     いろんなスキャンダルが起きたんです。カルロス・ゴーンがまず逃亡し、そしてカルロス・ゴーンが海外から日本の刑事司法制度はこんなに人質司法だというような批判をしてきて、私はもう毎回これオンラインでカルロス・ゴーン氏と相対して、その中には、もちろんこれ逃げ出すのはいけないことですよ、ですからその指摘もしました。パスポートなしでこれ行くのいけないですよ。だけど、刑事司法の手続について、もちろんこれデータもちょっと読み方間違っているところありました。誤解も多いんです。そこはきちっと私言いました。だけど、反論できない部分もあったのは事実なんです。ですから、これをしっかり正面から議論しましょうということを私はやりたかった。
     だけど、高検検事長がマージャンをするなんていうことがありました、コロナ禍で。そして、そういう事件で私は検察の倫理ということについても疑問を持ったんです。それで、私は、一連のこういう事件の責任、トップは法務大臣ですから、私が辞職しますと言ったんです。そうしたら安倍総理が、こんなにトップが、東京のトップがいなくなって法務大臣もいなくなったら治安はどうなるのか、もし森さんがそういう問題意識を持っているんだったら、それを自分で改革をすることをやってくれよと、そう言われて、私は、じゃ、刷新会議というのを立ち上げていってはどうですかと言ったら、やりたまえということで、私はその後の記者会見で、総理から御指示があったのでこの刷新会議を立ち上げますというふうに言いました。
     だけど、なかなかこの刷新会議一つやるのにも本当に大きな苦労があったんです。しかし、委員の先生方が頑張ってこれ報告書を取りまとめて、当時の法務大臣に報告して、そしてその法務大臣はこのとおりやれと指示をしたということですから、その後、法務省はしっかりやってくださいよ。
     私は、法務省は一つの限界があると思うのは、検事さんがやはり二年やそこらでどんどん替わっていかれるので、こういったことの経緯も、今の方々は真面目にやっておられるんでしょう、知らないんだと思います。引継ぎがきちっとなかなかできないんだと思います。そのような組織的な問題点も私は思っていますけれども、当時の経緯を今述べました、小泉法務大臣に聞いていただきました。
     法務大臣、取調べにおける弁護人の立会い、これを今の在り方協議会で正面から議論する、村木厚子さん始め、ヒアリングをするということをやっていただきたいのですが、いかがですか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     今御丁寧に御説明をいただきましたとおり、委員が立ち上げられて、そして熱心に御議論をいただき、また報告書も取りまとめていただいた法務・検察行政刷新会議、これ非常に大きなテーマを正面から恐れずにぶつかっていっていただいた大きな足跡だと思います。そして、この刑事司法の様々な議論、見直しの議論今ありますけど、その源流をつくっていただいた、その底流というものをつくっていただいた。これは、引き返すことは、引き返すべきではない、引き返すことができない底流をつくっていただいた、そういうふうに私は認識をしております。
     個々のテーマが入るか入らないか、これ在り方協議会の事務局でありますので少し舌足らずな点があったかもしれませんが、なかなか事務局として大きく仕切るような発言も法務省としてはしにくかったのでしょう。十分な意思が伝わっていなかったこと、おわびを申し上げたいと思いますが、底流、源流をつくっていただいたその様々な問題の中に、いわゆる人質司法の問題、証拠開示制度の在り方、そして取調べの録音、録画、そして被疑者取調べへの弁護人の立会い、こういう重要項目が掲げられております。これらは、現在開かれております在り方協議会の当然対象として取り上げられるべきものであるというふうに認識をしております。
  • 森まさこ君
     取り上げられるということを法務大臣から御答弁いただきましたので、必ず取り上げていただくようによろしくお願いをいたします。