令和6年6月11日 参議院法務委員会 森まさこ議員による質問

刑事手続の在り方協議会で取調べの弁護人立会いについて議論しないよう誘導している疑惑

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  • 森まさこ君
     おはようございます。
     今朝、人質司法の勉強会に出てきたんですけれども、国会議員の勉強会じゃございませんで、企業の社長さんや一般の市民の方々の勉強会ですけど、大変盛り上がっていらっしゃいました。同じような目に遭っている方がたくさんいらっしゃいます。
     さて、質問通告の順番を変えて、先に取調べへの弁護人立会いについて質問せざるを得ません。
     と申しますのも、この質問のために先週木曜日に質問通告をし、金曜日に法務省が問取りレクに来まして、そのレクをしている局付検事から聞き捨てならない発言があったからなんです。あろうことか、この委員会における大臣の答弁をないがしろにする発言があったのです。私は、それは聞き捨てならないと申し上げますと、言い訳をしてごまかそうとし、上塗りに上塗りを繰り返した挙げ句、自己矛盾に陥り、結局全て撤回しました。
     その後、その局付検事の上席検事が戻ってきて、今のやり取りした者の名前だけは国会で言わないでくださいと頼んできましたので、それは言いませんよ、国会の答弁者は刑事局長ですから、刑事局長に聞きますと私は答えました。ですので、刑事局長にこの一件は当然報告が上がっていると思います。多分、大臣には報告が上がっていないと思います。
     局長、何があったか説明してください。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     突然のお尋ねでございますけれども、質問通告に関しまして、森委員からの、被疑者取調べへの弁護人の立会いについて、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会の協議対象となるのかどうかといった点について、前回の委員の御質問、それからそれに対する大臣の答弁に関してお尋ねがあり、それについて局付の方で御説明を申し上げたといった報告は受けております。
     その御説明を申し上げた内容について、森先生、森委員の方から大臣が答弁されたことと違うのではないかという御指摘があったものの、説明、大臣の御発言の趣旨と申しますか、それを改めて御説明申し上げたというふうに理解をしております。
  • 森まさこ君
     この程度の報告しか上がっていないということですね。それでは、私から説明します。こういうことなんです。
     前回五月十六日の私のこの委員会の質問において、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会、略して在り方協議会と申し上げます、これで取調べにおける弁護人の立会いを正面から議論していただきたいということ及び村木厚子さんのヒアリングを行っていただきたいということを質問しました。委員の先生方は皆さんお聞きくださっていたと思います。そうしましたら、法務大臣から非常に前向きな御答弁をいただきまして、感激した次第です。ありがとうございます。
     その大臣の前向き答弁を前提にして、ではいつ弁護人の立会いについて議論を始めるんですかと今日質問しようと思ったんです。それで通告を出して、レクに来てもらったんですが、そうしたら、森先生、弁護人の立会いについて議論するかどうかは委員が決めるんですからと言うんです。じゃ、大臣の答弁は何だったんですか、それは聞き捨てなりませんねと私が言いましたら、急に言い訳して、さっき言ったのは議論の立て方の問題です、分かりにくくて済みませんでした、議論をしないとは言っていないんですけど、録音、録画の議論の中の一部として立会いを取り上げると決まっているので、森先生はそれとは別に、録音、録画とは別建ての回で弁護人の取調べの立会いを議論するという、そういう御主張をするんですかというふうに言うのです。私は、えっ、議論の立て方って何ですか、そう当然なりました。
     法務省さん、取調べ立会いは録音、録画の一部としてだけ取り上げると、既にそのあなたの言う議論の立て方で決まっているのですか。はい、そうなんです。えっ、誰がいつそんなことを決めたのですかと私が詰めていきますと、間があった後に、いえ、やはり決まっていません。ちょっと法務省さん、さっきからよく分からないのでもう一回確認しますけど、さっきあなたが言った議論の立て方というのは何だったんですか、議論の立て方は決まっているんですか決まっていないんですか、もう一度聞きますと言ったら、決まっていません。じゃ、さっき冒頭、私が先ほど大臣の答弁を前提に次の質問を言ったと言ったときに、違いますと言って、議論の立て方が決まっているんですと言ったのは何だったんでしょうと、そこまで大変長い時間が掛かっているわけです。
     そして、いや、議論の立て方は決まっていません、だけど、委員がそのように発言しているんです、こう言い出しました。そうですか、どの委員ですか。○○委員ですと。その議事録を見せてください。○○委員の議事録を一緒に見ました。この○○委員は検事さんですか。何とか何とかという役職の者です。あのう、検事さんなんですか。そうしたら、検事ですということで、検事さんの発言だったんです。一人の委員の検事さんが、取調べの弁護人立会いについては、録音、録画の議論をするその在り方協の中の一つの回、その一日の中のほんの一部だけで取り上げればいいという御意見を言っていたんです。
     ああ、何だ、検事さんが言っているだけなんですねと私は言いました。そうしたら、いや、日弁連からの委員も言っていますよ。えっと私は驚きました。日弁連からの委員もそのようにおっしゃっているの。私は思いました。議論の立て方というものがもう委員の間で決まっていて、日弁連からの委員もそれに納得しているのであれば、私が何か一人だけ、こんなこと言っているのは私だけなのかな、弁護人の立会いについて、村木さんのあの涙の議事録をここで皆さんに配って言っているのは私だけなんだろうかと思いました。
     でも、そこではっと気が付きまして、いや、ちょっと待ってください、法務省さん、日弁連がそう言ったというのは議事録のどの部分ですかと聞きました。そうしたら、法務省さんは携帯電話を一生懸命こうやって議事録を探しました。そして、時間がたって議事録が出てきました。それが今日皆さんに配っている資料一でございます。
     携帯電話の中の小さい字を私は一生懸命読みました。日弁連から出てきている河津構成員という弁護士さんです。この文書を読んで、一体どこに録音、録画の中の一部として弁護人立会いを取り上げると書いているんでしょうか。一体どこで日弁連からの委員がそのように言っているんでしょうか。言っていないんです。それで、私は、法務省さん、ここのどこが録音、録画の一部で立会い議論をやっていると読めるのと聞きました。そうしましたら、あっ、言っていませんと、こう言うんですね。
     それで、私は、さすがに、言い違いとか勘違いとかあると思いますけど、何回も何回もレクの中で虚偽の事実を私に提示してきて、虚偽の事実を述べて、私が大臣の積極発言、積極答弁を基にして次の質問をしないように誘導しているんではないかというふうに疑いたくもなるんですよ。
     私は、これは何かどこかで聞いたことがあるなと。村木厚子さんが、あの涙の議事録、大臣お読みになっていただけましたでしょうか。あの中で言っていた手法とそっくりなんですよ。自分の部下、自分の上司が村木厚子さんがやったと言っている、その供述調書を次から次に見せられて、あっ、自分だけが、やっていないと思って言っているのは自分だけなんだなと、これはもう自白するしかないんだなというふうに追い詰められてくる。こんなやり方が取調べをしている間に身に付いてしまったのかどうか分かりませんけれど、国会議員のレクでもそのようなことが起き、私は大変残念に思いました。
     今までの法務省の流れ、つまり、在り方協議会と名前似ていますが、在り方検討会、昔あった、そこで村木さんが参考人になって、私が配付した議事録がありました。その在り方検討会で取調べの弁護人立会いについてあんなに議論して、しかし残念ながら刑訴法改正に入らなかった。しかし、三年後見直しの条項がこの国会で付けられて、そして今その議論のさなかです。そして、在り方検討会から今日までの間に、私が大臣のときに立ち上げた刷新会議があり、刷新会議の取りまとめに、弁護人の立会いというものはこの刑訴法の三年後の見直しのときにきちんと議論すること、それが法務省の意思として取りまとめられて、上川陽子大臣もこの委員会で私の質問に対してそれを認めました。
     そういう流れを、今現在開かれている在り方協議会では委員の先生方にちゃんと説明しているんでしょうか。村木厚子さんの議事録や刷新会議の取りまとめを配付しているんでしょうか。ちゃんと、それぞれの委員に御説明という名前のレクに行くと思いますけど、そのときにちゃんと質問、ちゃんと説明しているんでしょうか。
     まさか私にしたように、違う方向に、取調べの弁護人立会いを議論しない方向にするように、虚偽の事実を提示して誘導したり、法務省から発言案を提案したり、カンペを渡したり、そのようなことはしていませんよね。刑事局長、どうですか。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     まず、その質問通告に対する御説明の中で局付の説明が意を尽くしたものでなかったということについてはおわびを申し上げたいと思いますが、決して虚偽のことを申し上げて委員の御認識を誤らせようとした趣旨ではないと理解しております。
     といいますのも、前回のその大臣の答弁で、御質問されたときに、取調べにおける弁護人の立会いを在り方協議会で議論するのかどうかということをお尋ねいただいたときに、私がその前にそれに関して答弁を申し上げ、それに対して更に大臣から、事務方は意を尽くさなかったかもしれませんがということで御答弁を申し上げたという経緯だったと理解をしておりまして、基本的にはその協議会でいつどのようなことを協議をするかはその協議委員の方々の御協議の上で決するという、そういう立て付けになっているので、ここでやりますということをその事務局である法務省から申し上げることが難しいということを申し上げましたが、大臣は、取り上げられるべきものだというふうに、当然対象として取り上げられるべきものであるというふうに認識をしておりますというふうに大臣は答弁されたということで、それを受けて、取り上げられるということを法務大臣から御答弁いただいたというふうに森委員がまとめられたというふうに理解をしております。
     その後にも、ほかの委員からも同じことについて御質問がありましたけれども、それに対しても、最終的にはどういうテーマを取り上げてどう検討するかは各委員の自由な御議論にお任せをしている部分がありますので断定的には言いにくい部分がありますが、しっかりと御趣旨を体して運営に努めたいということを大臣から御答弁を申し上げているところでございまして、口幅ったい感じの言い方になってしまってちょっとあれなんですけれども、事務局として、いつこれをどのように取り上げるかということについては、その在り方協議会で決せられた後にははっきり申し上げられるけれども、まだそこがはっきりとは協議の上で決まっていないというか合意されていない段階では事務局として先んじて申し上げることが難しいという認識で、局付の方がそういうことを申し上げたかったんだろうと思うんですけれども、そこがちょっとしゃくし定規な御説明になってしまって、先生に先ほど御指摘をいただいたような印象をお持ちになるような御説明になってしまったのかもしれないというふうに思っております。
  • 森まさこ君
     このやり取りは刑事局と私だけの密室ではないんです。
     今日、私、いっぱいいろんな質問用意していたので、国際仲裁の問題の担当者も法務省から来ていました。入管法の担当も来ていました。そして、私の秘書も入っており、うちの学生インターンもいましたし、次に控えている私の来客もいたんです。もちろん、うちの事務所はきちんと記録もしています。
     しゃくし定規な説明ですと局長おっしゃいましたけど、議論の立て方がもう決まっているんですと断定なさいました。録音、録画の一部としてやることがもう決まっており、それを日弁連も認めているとおっしゃったんです。これは各委員の自由な御議論で決まるという話とは全く違いますよね。そして、各委員の自由な御議論というのが本当に公平公正なのか。委員の選任が偏っていないですか。

刑事手続の在り方協議会における幅広い意見の反映の必要

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  • 森まさこ君
     第一回目の在り方協議会で、日弁連からの委員が委員の選任について苦言を称していますね。それに対しては、事務局と称する法務省さんが一刀両断に切ってしまっておりますけれども、私は、在り方協議会の委員に検察とか刑事裁判官とかそういう人たちいっぱいそろえていますけれども、もっと一般国民を入れるべきです。
     在り方検討会、昔の在り方検討会ですね、それから、その後にあった刷新会議ですね、こちらはもう意欲的に一般国民の方、つまり法務畑ではない方、法曹ではない方を入れています。人質司法の犠牲になるのは、法曹関係者じゃなくて一般国民です。冤罪を被って人生を棒にするのも一般国民です。一般国民の皆様の御意見を入れるべきです。女性も少ないです。大臣、女性の委員について、私、前、質問しましたね。
     大臣、今からでも委員を入れるお気持ちはないですか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     それぞれ委員の方々の委嘱をさせていただいたときの任期というのがあると思いますので、そういう任期が来られる方々を、今後将来に向けて新しい方を入れるときに、女性をなるべく多く入れるよう配慮するということについては心掛けたいというふうに思います。
  • 森まさこ君
     在り方協議会に今から委員を入れることができないというのであれば、ヒアリングすべきです。私が前回、村木厚子さんをヒアリングすべきと言いました。それ以外の方もいろいろな方がいます。今朝、私、勉強会に出てきたんですけど、人質司法の。いろんな方がいます。ヒアリングをするのに最適な方々がいるべきです。
     大臣、一般国民の感性、これを在り方協議会に入れるべき、ヒアリングをすべきではないですか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     まず、ヒアリングは必要だと思います。そして、これはかなり専門的なグループが形成されていますので、一般の方々の声をヒアリング以外にどういう形で取り入れることができるのか、これはちょっと検討をさせていただきたいと思います。
  • 森まさこ君
     ありがとうございます。

取調べの弁護人立会いについての議論の必要

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  •  資料二を御覧ください。
  •  これは日弁連が配布しているチラシなんですが、冤罪を防止するためのチラシで、ここに様々な、今まで発覚した取調べ、不当、違法な取調べの事件が挙げられています。四つ挙げられていますね。
     その右下のプレサンス事件、このプレサンス事件は、下に赤で書いてありますが、録音、録画されているんですよ。録音、録画されているのに、このような違法、不当な取調べが行われているんです。検察官が机をたたきながら、命懸けてるんだよ、検察なめんなよ、あんたたちみたいに金を賭けてるんじゃねえんだ、金をもうけてるんじゃねえんだ、一丁前にうそついてんなって、格好付けるんじゃねえよ、ふざけんなというような取調べをしているんですね。ですから、録音、録画の適否を論ずる、その一部として弁護人の立会いを論じるなんてことでは足りないんです。
     元々、この刑訴法は村木厚子さんの事件をきっかけに、その村木厚子さんが御自分で、素人なのにボクシングの舞台にいきなり上げられて、向こうはプロのボクサーで殴られっ放し、せめてセコンドを付けてください、つまり弁護人の立会いを付けてくださいと涙ながらに訴えた。
     その弁護人の立会いについて、在り方協議会では録音、録画の一部でやるという、何か議論の立て方って検察が言っていましたが、法務省さん、刑事局が言っていましたが、そうじゃなくて、ちゃんと正面から堂々と議論すべきではないですか、大臣。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     事柄の性格に鑑みて、これは、やはりしかるべき時間を掛けて検討するべき問題だと思います。特定の問題の一部に押し込めてしまえる問題ではないと思います。大ざっぱな答弁になりますけれども、私はそう思います。
  • 森まさこ君
     私も大臣と全く同感です。特定の問題の一部に押し込める問題ではなく、時間を掛けてしっかり議論をする問題です。
     刷新会議で、皆さんに前回議事録を渡しました。この取調べの弁護人立会いのところで村木厚子さんを呼ぶかどうかということですが、もうすごい議論がありました。反対する人もたくさん、賛成する人も一生懸命述べました。そして、時間切れで終わっちゃったんです。結局やらなかったのは、時間がもうないからということだったんです、村木さんを呼ばないということがですよ。
     だから、時間切れにならないように、あるいは時間切れを狙っている人がいるかもしれない。ですから、この問題は大事な問題です。正面から議論をしていただくという大臣の御意見に賛成です。
     これは、個別事件について指揮権を発動する問題ではありません。一般的な刑訴法改正の問題です。ここに書いてある四つの事件、それ以外も個別の事件で被害に遭った人はたくさんいます。その人生を棒に振っています。
     検事も一生懸命だと思います。個人の検事さん、みんないい人たちです。私も法務大臣でたくさんの頑張っている検事さんに会いました。
     しかし、組織として違法、不当な取調べが現実に起きている。この起きている違法、不当な取調べが起きないように、二度と起きないように法律を作っていく、制度をつくっていくというのが大臣のお役割であるというふうに考えています。
     これは人質司法の問題と非常に密接に関連しています。拘束されて、太陽の光が見えない場所に何日間も追いやられて、まだ有罪になる前ですよ、起訴する前もですよ、精神状態で追い詰めて、先ほどのような、ちょっとうそ、ちょっと虚偽の資料を見せられて、追い詰められて、自白を強要する、虚偽の事実を摘示して追い詰める。こういったことについては、弁護人を立会いをしていただきたいと思います。
     検察にも言い分があると思います。諸外国に比べて、検察は、日本の検察は捜査の手法が制限されているんです。ですから、非常に制限された、人権に本当に配慮した捜査手法の中で、それを一生懸命駆使して九割以上の有罪を獲得して、この国の安全、安心、治安を守っている大変尊いお仕事です。
     ですから、それを議論の場で堂々と主張すればいいんですよ。議論しないように国会議員のレクで変なふうに誘導するとか、議論しないように各委員にレクするとか、時間切れに追い詰めるように論点を後ろ回し後ろ回しにするとか、そういったことは、そんなこそくな手段を取るべきではないというふうに思います。
     村木さんの在り方検討会のときの涙の供述の議事録。そして、刷新会議で、弁護人の立会いについてはこの刑訴法の三年後見直しのときに議論するようにと書いてある取りまとめ。こういった法務省として、政府として今まで取り組んできたことがぶつ切りにされて、今の小泉大臣の下の在り方協議会では、そんなことがなかったかのような委員の御発言がたくさんあります。委員に知らされてないんだと思います。
     どうか、大臣、在り方協議会、次は七月二十五日です。大臣、冒頭、御出席して、今の資料も配付して、大臣から一言、今答弁をした、真っ正面から議論する大事な問題なんだということを言っていただけないでしょうか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     検察というのは、不偏不党、公平公正、不偏不党、いろいろの圧力から守られなければならないという性格が大本にあるがゆえに、逆に、歯止めが利かない、抑制が利かない、怖いものがなくなってしまうという、裏腹の権力状況というのがやはり起こりやすいんだろうと思います。
     元をただせば、準司法的な立場があって、検察官の独立、また検察庁法十四条、そういったものによって不当な圧力を回避する中に入ってしまうと、今度はそれを抑制する人がいない、牽制する人がいない、そういうところから権力の濫用のようなことがやはり起こりやすい、そういう仕組み上の問題がやはりあると。
     それを正すのは、やはり民主的な過程を経て選ばれてきた法務大臣の、今おっしゃった、委員がおっしゃったとおりだと思います。法務大臣の役割は、行政権を使って、個別的指揮権に至らない一般的指揮権において、そういった検察の在り方をしっかりと整えていく、規制をしていく。また、政策論としての指揮権は法務大臣にございますから、その役割をしっかり果たしていきたいと思います。
     次回の会合にどういう形で出るのがいいのか、出ることの是非も含めて、ちょっとこれは検討させていただきたいと思います。

証拠開示等に関する刑訴法の再審手続の改正

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  • 森まさこ君
     再審法の改正について伺います。
     再審事件の長期化が問題になっています。
     昨年三月に東京高裁で再審開始決定が確定した袴田事件は、事件から五十七年、第一次再審請求から四十二年、最初の再審開始決定からもう十年経過しています。十年前の静岡地裁では、捜査機関による証拠の捏造の可能性があり、時の村山裁判官は、これ以上の拘置を続けることは著しく正義に反すると言って保釈を認めました。
     二〇二〇年に再審無罪が確定した湖東事件では、逮捕時に二十四歳であった女性は無罪判決が出たときには四十歳、その間、三十七歳まで懲役十二年の刑を満期服役した後の再審無罪でした。不正な証拠隠しで、女性の二十四歳から四十歳までの人生を葬り去ったわけです。無罪判決後、大西裁判官は異例の説諭を行い、こう述べました。逮捕から十五年以上にわたって、十五年以上たって初めて開示された証拠がありました、取調べや証拠開示など一つでも適正に行われていれば、本件は逮捕、起訴されることもなかったかもしれません、十五年余り、さぞつらく苦しい思いをしてきたと思います。説諭をする裁判官の目は赤く、声は震えていたと言います。
     再審手続において証拠開示のルールがないことが問題です。何十年以上、一点の証拠開示も許されず、弁護人が繰り返し行った証拠開示請求を検察官も裁判官も無視し続けることができる現行法の不備です。
     さらに、問題なのは、せっかく再審開始決定が出ても検察官は機械的ともいうべき抗告を行い、さらに、その確定までに長時間が費やされていることです。もはや刑訴法の再審手続の改正についての立法事実は明らかです。欧米では、再審開始に対する検察官の上訴ができないとしている国が多いです。私は、検察官の抗告について何らかの制限が必要だと思います。
     大正以来ほとんど改正がされていない、ほんの少しの条文しかない再審法。しかし、刑事再審は誤判による冤罪被害者を救済する最終手段です。一人の人が人生を棒に振ったり冤罪で死刑になるといったことは、この国であってはなりません。
     大臣、再審法の改正、大臣のときに大臣のお力でやっていただけないでしょうか。
  • 国務大臣(小泉龍司君)
     再審制度の在り方については、委員に改めて申し上げるまでもないことかもしれませんけれども、確定判決による法的安定性、また他方で、個々の事件における是正の必要性、この調和点を求めるということであります。
     例えば、抗告の禁止、再審開始事由に当たらない、そういうものが見当たらない場合に検察官は抗告をしていきますけれども、その三審制が事実上四審制になっていくというときにたくさんの訴訟が出てくる、それをさばいていく制度はある意味必要な部分があると思われます。また、証拠開示制度については、おっしゃるように、これは在り方協議会の検討対象になっていますので、やはり大きな様々な見直しの課題というものはそこにあろうかと思います。
     そういった個々の問題点についてより掘り下げて検討していくということは必要だと思いますが、まだ再審制度全体をこういうふうに見直すという段階には至っていないと思います。問題点を一つ一つ把握し、また議論を尽くしていくということを重ねていくべき段階だというふうに思っております。
  • 森まさこ君
     大臣の答弁は残念です。

過去に検察官の取調べに弁護人が立ち会った事例の有無

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  • 森まさこ君
     次に、検察官の取調べに弁護人が立ち会った事例があるか、刑事局長にお尋ねします。
     私の把握している限りでは、刑事訴訟法上、被疑者の取調べの弁護人の立会いを禁止する規定はないと思います。弁護人の立会いについて、取調べを行う検察官において、取調べの機能を損なうおそれとか、関係者の名誉、プライバシーや捜査の秘密が害されるおそれ等を考慮して、事案に応じて判断されるというふうに決まっていると思いますけれども、それでは、実際に検察官の取調べに弁護人が立ち会った事例というのはあるのでしょうか。どうぞお願いいたします。
  • 政府参考人(松下裕子君)
     御指摘のとおり、検察官による被疑者の取調べに弁護人の立会いを認めるかどうかは、取調べを行う検察官において、その必要性に加え、取調べの機能を損なうおそれ、関係者の名誉及びプライバシーや捜査の秘密が害されるおそれなどを考慮して、事案に応じて適切に判断すべきものと承知しております。
     被疑者の取調べに当たって弁護人の立会いを認めるか否かは、申し上げたとおり、様々な要素を勘案した上で、担当検察官において事案に応じて判断されるものだと承知しておりますけれども、具体的な事例については法務省としては把握を、承知をしておりません。
  • 森まさこ君
     一つもないというのは、これは異常ですよ。今後、さっき大臣がおっしゃっていただいたように、在り方協において正面からしっかりと議論されることを望みます。