令和6年6月19日 衆議院法務委員会 井出庸生議員による質問

再審請求手続における証拠開示

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  • 井出委員
     おはようございます。
     質疑の時間をいただきまして、ありがとうございます。
     今日は、再審法について聞いてまいります。
     四月の二十二日に予算委員会でもこの件を取り上げましたが、再審無罪が確定するまでに、長いものでは本当に数十年という時間を要し、その大きな原因の一つは、再審請求手続や再審の過程において、当初ないと言われていた証拠が数十年の後に出てきたり、ないないと言っていたものが後から出てくるという、証拠の開示の在り方が大きな問題だと思っております。
     そこで、今日は、まず幾つか事例を紹介したいと思います。資料の一。二枚紙を御覧ください。そこに幾つか事件を並べてまいりました。
     (一)は袴田事件でございます。アンダーラインをつけてまいりましたが、第一次再審段階では二十七年間証拠の開示がなかった。それから、第二次の再審で資料が開示されるようになり、争点となっているものについては、検察官が不存在としていたものを、最終的に自らの反証のために開示したという事実がございました。
     それから、一つ飛ばして、(三)日野町事件。これは、一番下のところを御説明申し上げますが、裁判所から、不存在と回答した証拠物が後に発見された経過については、遺憾であるとの発言が出ております。
     ページをめくっていただいて、(四)湖東記念病院事件。これも、再審無罪後、裁判長が説諭の中で、一つでも証拠が適切に開示をされていれば、本件は起訴されなかったものかもしれない。
     その下、(五)天竜林業高校事件。これは再審請求が棄却になっておりますが、先行する収賄側の再審請求で不存在とされた証拠が、贈賄側の再審請求で開示をされ、最高検が謝罪をするということがあったと聞いております。
     そして最後に、一つ飛ばして、(七)大阪強姦事件。これは、再審が極めてスムーズに進んだ事件です。被害者が証言を覆したということで、スムーズに再審が進んだ。そうした中で、これは裁判所が検察に、決定という形で、証拠を開示するよう求めました。しかし、それについて検察側は、意見という文書で、裁判所がこういう決定を出すのは法律上許されない行為であると記載し、これを拒否しました。
     資料の二枚目。これは、ある再審請求の事件の手続の中で、裁判所に対して検察から示されたものでございます。今日は制度一般を議論するため、個別の部分に係るところは私の方で全て削除をしてまいりましたが、第一は、結論、開示は行わない。下の二です。その理由として、現行法上許容されないと解されている、検察官に証拠開示や証拠の一覧表交付の義務はないということが言われております。
     まず、裁判所に伺いますが、裁判所はそれぞれの裁判体において適切に訴訟指揮をする、その中で開示請求という、証拠を検察側に求めるようなことがあると思いますが、そうした拒否されるという事例が今紹介したように幾つか出ているということ。このことは、一般論において、裁判所が果たそうとする訴訟指揮にとって、いいものなのか、プラスに働くのか、マイナスに働くのか、そこを端的に伺いたいと思います。
  • 吉崎最高裁判所長官代理者
     お答え申し上げます。
     お問合せの件につきましては、最高裁の事務当局としまして個別の事案に対する所感を述べることにつながりまして、その点は困難でございます。お答えを差し控えさせていただきます。
  • 井出委員
     一般論で、訴訟指揮というものの重要性について、また、それの障害となるようなことについて、裁判所としてやはり訴訟指揮というものは非常に大事であり、それに従ってもらうことは重要だと思いますが、その点だけは。
  • 吉崎最高裁判所長官代理者
     お答え申し上げます。
     繰り返しで恐縮ですけれども、個々の事案における裁判所の訴訟指揮の在り方等について、事務当局としてお答えすることは困難でございます。
  • 井出委員
     それと、もう一点だけ裁判所に聞いておきます。何度も聞いて、ごめんなさいね。
     検察官が、今私が示した資料の中で、現行法上許容されない、裁判所がこういう決定を出すのは法律上許されないという御主張があるんですが、これは、率直に読めば法律に問題があると。法律を変えれば、それは訴訟指揮に従ってもらえるわけだし。そのことについては、肯定も否定もしませんね。
  • 吉崎最高裁判所長官代理者
     お答え申し上げます。
     法制化の必要性については、立法政策の問題でございます。事務当局としてお答えする立場にはございません。申し訳ありません。
  • 井出委員
     お答えをすること、肯定も否定もしないということでいいかな。
  • 吉崎最高裁判所長官代理者
     お答え申し上げます。
     二択で答えろと問われますと、なかなか苦しゅうございますけれども、答弁は変わりません、事務当局としてお答えする立場にございません。
  • 井出委員
     二択とは聞いていません。肯定か、否定か、肯定も否定もしないの三択でございますので。
  • 吉崎最高裁判所長官代理者
     肯定も否定もしないということになります。
  • 井出委員
     ありがとうございました。最高裁としては、ここが精いっぱいかなというふうに思います。
     刑事局長に伺いますが、今私がるる紹介したように、証拠開示をしない一つの理由として、現行法上許容されないという部分がありますが、これは、法律に問題がある、法律が変わればそこはまた変わってくるという理解でいいのか、伺いたいと思います。
  • 松下政府参考人
     お答えいたします。
     御指摘のそれぞれの事件について証拠開示の問題をいろいろ御指摘されましたけれども、個々の事案については、恐縮ですが、お答えは差し控えさせていただきたいと思います。
     その上でですが、証拠開示について裁判所の方から求められた場合に、検察官が保管しているけれども応じないという場合がございます。
     それに関しましては、まず、再審請求審における証拠開示に関して裁判所がどのように職権行使をされるかということについては、法務当局としてはお答えはする立場にはないんですけれども、一般論として、検察当局におきましては、検察官が保管している証拠の提出を裁判所から求められた場合には、再審請求審において裁判所が再審開始事由の存否を判断するために必要と認められるかどうか、また、請求人側から開示を求める特定の証拠について必要性と関連性が十分に主張されたかどうか、また、開示した場合における関係者の名誉やプライバシーの保護、また、将来のものも含めた今後の捜査、公判に関する影響などを勘案しつつ、裁判所の意向等も踏まえて、法令やその趣旨に従って、裁判所への証拠提出等に適切に対応するよう努めているものと承知をしておりまして、再審請求審においては有罪判決を受けた者に対して無罪等を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したときに行うことができるとされておりまして、裁判所が再審請求審において御判断されるのは、請求者から提出された証拠に基づいて再審開始事由があるかないかという御判断と承知しております。
     裁判所がその判断に当たって必要に応じて職権で事実の取調べをされるわけですけれども、そういった意味におきまして、再審請求審において検察として開示をすべき証拠の判断としては、先ほど申し上げたようなことによって判断をしているということでございます。
  • 井出委員
     想定する中で一番とがった答弁をいただいたと思いますが。
     要は、再審制度というものは、おっしゃるように、職権主義で、裁判所の指揮において行われる。法務省もいつも、裁判所において柔軟かつ適切な処理をされているものと認識をしておりますと。しかし、訴訟指揮とぶつかることがある。じゃ、どうしてぶつかるんだと聞けば、それは検察の方でも真に必要かどうかいろいろ考えて出すと。
     これを踏まえて考えますと、裁判所において柔軟かつ適切な処理をされているものといういつもの法務省の答弁は、これは実は主語が間違っていて、法務省において柔軟かつ適正な処理をされているものと認識をしておりますというぐらい、それだけ、私は、職権主義、裁判所の訴訟指揮というものが、果たして実態として本当に守られているのかと。裁判所の職権の下に、訴訟指揮の下に再審をやるというのであれば、もっともっと裁判所の言うことにきちっと従っていただく必要があるのではないかなというふうに思います。
     それで、大臣に伺います。
     この件は、私、裁判所とか法務省の皆さんと個別に議論をしていると割とかみ合うんですね。昨日もレクを電話でやりましたけれども、本当に相手の方がずっと沈黙してしまうようなやり取りもある。
     しかし、それを、法務省となると、最高裁も肯定も否定もしないが精いっぱいなんですよ。これは別にその二つの省に限ったことではありませんし、再審法の改正というものに対して司法当局が反対するというのは台湾でも韓国でもあることですので、日本の法務省だけがおかしいということは言うつもりもありません。
     しかし、この壁を突破するには、やはり誰かがリーダーシップを発揮して、こうしてみてはどうかと、個別の検証をやる必要が、個別の検証をやるというような趣旨の答弁も前にいただきましたけれども、是非そのリーダーシップ、先導役を果たしていただきたいと思います。
     私は、再審法というものは最後の救済手段なので、少なくとも証拠、本当に実態を判断する主要なものについては、やはり、きちっと手続を条文にしてほしい、そう思っておりますが、ちょっと御見解をいただきたいと思います。
  • 小泉国務大臣
     再審法の改正問題は、よく我々も申し上げますが、司法制度の基盤に関わる問題ではありますね。したがって、様々論点があり、相当専門的な深い議論を重ねていく必要があると思いますが、しかし、結局、全体としては個々の論点によって構成されている一つの問題でありますから、個々の論点に下りていって、そこをしっかりと議論をし、また、コンセンサスが必要ならば理解を求めていく、あるいは制度を編み出していくという、個々の論点に下りた具体的な努力の積み重ねの中で、おのずと答えが出てくるべき問題だと思うんですね。
     こういう国会の場とか様々な公式の場で、なかなか個々の論点に下りた議論ができませんけれども、今、新しい刑訴法改正に関する刑事手続の在り方協議会において、まさに個々の論点に議論が入り、始まっています。一巡、二巡しています。個々の論点全部をやはり網羅していく必要があると思いますので、しっかりと我々もそれをフォローいたしますし、国会においてもその議論をフォローしていただいて、また議論させていただく、かみ合った議論の中で答えを導いていくというやり方が必要かと思います。
  • 井出委員
     最後、刑事局長のリーダーシップも求めておきたいと思います。
     資料の三。ここに気鋭の検察官のインタビューが出ておりますが、その中で、検察官になろうと思ったきっかけで、犯人や被害者の人権を守りながら、処罰されるべき人を処罰し、許すべき人を許すことによって、社会の安全と秩序を守るのが検察官の役割だと。
     それから、刑事局長が山形の検事正になったときに、冤罪を生まない、適切な処罰をするをモットーとする、座右の銘は、なせば成るだと。
     刑事局長、私は、法務省がこの件に慎重なのは、それは組織としてだと思うんです。今、大臣にリーダーシップを求めましたが、刑事局長のお立場であっても、罰する人を罰して許すべき人を許す、この後段の部分というものは、私は、再審法の見直しというものが必要ですし、是非リーダーシップを取っていただきたい。
     あちこちで女性初の検事正だ、刑事局長だと言われて、「虎に翼」のような、令和の「虎に翼」なのかなと私は思って見ておりますが。あのドラマも恐らく毎朝御覧になっていると思いますし……
  • 武部委員長
     申合せの時間が経過しております。
  • 井出委員
     頑張っていただきたいと思いますが、一言、最後に。
  • 武部委員長
     松下局長、答弁は簡潔にお願いします。
  • 松下政府参考人
     御指摘の資料に書かれていることは私自身の信条でもございまして、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
  • 井出委員
     済みません、超過して。失礼しました。終わります。