再審手続における検察の証拠開示
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- 平岡委員
立憲民主党の平岡秀夫でございます。
今日は、大臣所信といいますか、大臣の挨拶に関係して御質問をさせていただきたいというふうに思います。
残念ながら、今回の大臣挨拶の中には、袴田事件、日本社会で大きな関心が持たれ、かつ、一九八〇年代の四つの死刑再審無罪事件以来、三十五年ぶりに再審無罪となった事件ですけれども、この事件から得た教訓というものが全く示されていなかったように思うんですけれども、大臣としては、この袴田事件から何か法務行政について教訓は得ておられないんでしょうか。 - 鈴木国務大臣
元法務大臣経験者の平岡先生には、どうぞよろしくまた御指導もいただきたいと思います。
今、袴田事件ということでお話ございました。個別の事件ということで、裁判所の判断に関する事柄について法務大臣としてということで、なかなか述べづらい状況であることは御理解いただきたいと思います。
その上で、本件について再審請求手続が長期間に及んだことなどについて、今、最高検察庁において所要の検証を進めているという状況でありますので、法務大臣として今のところで申し上げられることとして申し上げれば、まずは検証の結果が出ることを見守っていくということであろうかと思います。 - 平岡委員
袴田事件、再審事件ですけれども、非常に時間がかかったということについて問題意識を持っておられるということは分かりました。
ただ、私としては、それだけにとどまらずに、もっといろいろな分野において教訓を得るべきではないかというふうに思いますので、それに関連して幾つか質問していきたいというふうに思います。
まず、再審の問題なんですけれども、先ほど同僚の松下玲子議員がかなり詳しく質問をされましたので、私はなるべく重ならないように質問したいと思いますけれども、実は、私が法務大臣をやっていた当時の、平成二十三年十二月一日の参議院法務委員会で、再審における証拠開示の問題が質問をされていまして、そのとき、私はこう答えているんですよ。これは再審における証拠の開示の問題なんですけれども、証拠の開示の問題も、法令にのっとって適切に証拠の開示が行われているということ、検察の基本規程の中で法令の遵守ということを明記させていただいておりますので、その趣旨にのっとって適切に対応するということを私としては期待しておりますというふうに答弁しているんですね。
これは、当時の法務省の皆さんから、証拠の開示の問題について質問があったときに何と答えたらいいのかということを協議したときに、ちゃんと検察の基本規程の中で法令の遵守というふうに書いてあって、それを守って適切に対応しているし、対応していくつもりですというふうに言われたので、ああ、そうですか、では、皆さんを信頼して、そういうふうに答弁しましょうというふうに思ったんですけれども、事実、そういうふうに答弁したんですけれども、でも、実際は、やはり証拠の開示が十分にできていなかったなというふうに思うんですね。
そういう意味で、検察の姿勢だけに任せるのではなくて、きっちりと、松下議員も言われたように、制度の中で、法令の中で、証拠の開示の問題についても再審法の中でしっかりと規定していくべきだというふうに私としては思っています。
この質問をすると、先ほどの答弁では、在り方協議会で検討しているから、それを待ちたいというような話になってしまうのかなと思うんですけれども、でも、再審事件でこれだけ大きな問題になったわけですから、大臣としては、是非早く結論を出すように在り方協議会に要請をしていく、お願いをしていくべきじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、いかがですか。 - 鈴木国務大臣
今の証拠開示の話、今先生も御指摘のように、在り方協議会の中で今も検討されている項目であると承知をしております。
そして、この証拠開示の制度についての議論、当然どこかでこれは結論を出していかなくてはいけないことだと思いますし、そこについては、この在り方協議会においても今鋭意それぞれ専門家の方々に議論していただいていますので、そこについてはしっかり、もちろんいつまでも延ばしてということではないと思いますので、きちんとした結論が出るように私も期待したいと思います。 - 平岡委員
私の質問は、期待したいということを答弁することを期待したんじゃないんですよ。私は、やはりこれだけ大きな問題が社会的にも起こっている以上は、再審の在り方については、再審法の問題については早く協議会の方でも結論を出してほしい、それを踏まえて必要なことはやっていきたい。むしろ、先ほどもありましたように、鈴木大臣は議員連盟の中でも幹事長代理だったかな、というような立場に立っておられて、問題意識としては十分に持っておられるんだろうと思うし、早くしなければいけないということについてもよく分かっておられるのだと思うので、そこはやはり、大臣として、早く結論を出してほしいということを協議会に対して要請、お願いをすべきじゃないかと思うんですけれども、その点についてもう一度御答弁願います。 - 鈴木国務大臣
この協議の進め方、これは我々としてどこまで口を出すべきなのかというところは当然ありますし、構成員の方々、これはやはり、十分に充実した議論をしていただくということも極めて大事だと思います。
やはり、この証拠開示のことも含めて、いろいろそれぞれの論点、大変大事なところでありますので。ただ、もちろん、当然いつまでもだらだらということではないと思いますし、あるいは拙速過ぎてもということもありますので、そこは適切に充実した議論で適切な結論を得られるように、私としてもしっかりとそこは見守っていきたい、申し訳ありませんが、見守っていきたいという答弁で、そこは御理解いただきたいと思います。 - 平岡委員
これ以上言っても同じことを繰り返すだけでしょうから、時間の無駄になるのでこれ以上言いませんけれども、在り方協議会が協議している中身というのは、先ほどの答弁にもありましたけれども、非常に多岐にわたっているんですよね。これを結論を出そうと思ったら、物すごくやはり時間がかかると思いますよね。そうじゃなくて、やはり再審の問題については非常に社会の関心も高くなっているし、緊急性も要する問題であるので、是非この点については早く結論を出してほしいという、そういうリーダーシップを是非、鈴木大臣には取っていただきたい、このことをまずお願いしておきたいというふうに思います。
検察による袴田事件の検証
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- 平岡委員
続きまして、袴田事件の教訓という意味でいきますと、冤罪の問題なんですね。冤罪については先ほど来も松下議員とのやり取りの中でいろいろありましたけれども、それを繰り返すことはいたしません。冤罪の定義については別に聞く必要もありません。世間的に考えているものとして理解していただければというふうに思います。
この袴田事件の再審判決の中では、三つの証拠捏造、検察官調書、五点の衣類、ズボンの端切れ、これが具体的に指摘をされているんですよね。それで、畝本検事総長は、長引いたことについては検証するというようなことを言っておられますけれども、先ほどの松下議員との議論の中では、長引いたことだけじゃなくて、証拠の捏造というような事実関係が生じたことについて検証するということも考えていると理解していいのでしょうか。これは政府参考人で結構です。 - 森本政府参考人
お答えいたします。
今、検証を進めているというのは先ほど申し上げたところです。総長談話の中では、長くかかったことなどについて検証をするというふうに記載されているものと承知しております。
それ以上の具体的な中身については、今、検察当局において、捜査段階から、それから確定に至るまでの全段階において検証しているところでございますので、その具体的な内容については、お答えを今の段階では差し控えさせていただきたいと思います。 - 平岡委員
ちょっと分かりにくい答弁だったんですけれども、長期間にわたったということだけじゃなくて、なぜそういう証拠捏造のようなことが行われたのかも含めて検証をするということでいいんですよね。
更に聞きますと、その検証は、検察の中のどこがやるんですか。 - 森本政府参考人
まず、先生お尋ねのうち、三点の捏造という点に関しましては、そこの点についてはいろいろお考えはあると思いますけれども、検事総長談話の中では、それ自体は承服はできないという形の記載がなされております。
それを踏まえまして、捜査、公判に問題点があったのかなかったのかということも含めて、検察庁では検証を行っているということでございます。
具体的にどこで検証を行っているのかということにつきましては、再審公判を担当しましたのが静岡地検、それから東京高等検察庁、それから最高検察庁と三つのところが関わっておりますので、それぞれの段階のものを精査する必要がありますが、最高検察庁が主体となって今、検証を進めております。 - 平岡委員
最高検察庁のどの部署ですか。 - 森本政府参考人
部署、基本的に言うと、事件を担当しておりますのは最高検察庁の刑事部が中心となりますので、刑事部が主体となっているはずですが、刑事部だけで全てがとどまりませんので、検証ですので、チームとしてやっていると承知していますので、そういう意味では、最高検察庁が主体ということでございます。 - 平岡委員
例えば、アメリカでの話として、聞くところによると、検察庁の中に冤罪調査部門、コンビクション・インテグリティー・ユニットというそうですけれども、こういうものが設けられて、二〇一六年の例でいえば、冤罪が解かれた事件、雪冤事件百六十六件のうち七十件について調査をしたというふうに聞いているんですよね。
検察庁として、先ほど検証すると言われましたけれども、何か、聞いていると、仲間内同士で傷をなめ合いながら検証するんじゃないかというような印象も受けてしまうんですけれども、こうした、ちゃんとした組織を立てて検証するということじゃないんですか。いかがですか。 - 森本政府参考人
お答えいたします。
刑事事件の手続につきましては、裁判所の訴訟指揮の下で、裁判所を含む訴訟関係者により遂行されるものでありますことから、いわゆる第三者機関のようなものを設置して検証を行うということについては、司法権の独立の観点からも問題が生じるのではないかというふうに考えております。
また、検察は……(平岡委員「ちょっと答弁が違うと思う。それは次の答弁だと思うんだけれどもね」と呼ぶ)済みません、その前の段階で、まず、検察庁の内部でそういう冤罪について、先生がおっしゃる冤罪についての検証をしないかということでございましたか。 - 平岡委員
今答弁の中で、司法権の独立に関わる問題になってしまうというような答弁があったので、違うんじゃないかと言ったんです。
私は、今の質問の中は、検察庁の中で検証するに当たっても、特別にそのためのチームというか、組織をつくってやるべきじゃないか、どこがやっているかよく分からないような形でやるんじゃなくて、きちっとやるべきじゃないかということを質問したんです。 - 森本政府参考人
大変失礼しました。
まずは、検証を行うに当たりまして、先ほど申し上げましたが、中身を、どういう訴訟遂行をしてきたのかということを分かっている者が関与しないとその経過が明らかにならないということ。
それから、では、どこがやるのかということになりますと、なかなか御理解いただけるかどうか分かりませんけれども、最後は検察として責任を持ってやるとなると、やはり最高検察庁でやるということになりますので、メンバーをどうするかは別としまして、やはり、責任を持ってやれるところということになると、最高検察庁がきちっとやるということになろうかというふうに考えております。 - 平岡委員
今の答弁の中でも、内容が分かった者が関与しなければいけないと言うけれども、それはそのとおりだと思いますね。でも、その人たちは、関与した人たちは、調査する立場ではなくて、調査される、検証される立場の人たちですから、そういう人はちゃんと入れて検証してほしいと思うし、やはり、検察庁の中でやるということについて私、否定しているわけじゃないんだけれども、検察庁の中でやるにしても、しっかりとした組織をつくって対応してほしい、このことは要請しておきたいというふうに思います。
ただ、逆に、今度畝本検事総長の話によると、何か、捏造なんかについては承服し難いような話とか、あるいは長期間かかったことについては検証するというような限定された話とかしておられて、これに対して、法務大臣も総理大臣も、証拠の捏造なんかの問題について検証するというようなことについて、問題意識を持っているということについても全然触れられていないんですよね。そういう状態の中で検察庁が検証したとしても、私は、国民が納得するような検証はできないんだろうと思うんです。
先ほど松下議員からも、第三者機関的なものを設置して、そこで検証すべきではないかというふうに質問がありましたけれども、もう一度、その質問に対して、大臣としてのお考えをお示しいただきたいと思います。 - 鈴木国務大臣
今、森本刑事局長から少し答弁の中でも触れましたけれども、司法権との関係ということ、やはりこれは少し我々もきちんと考えなきゃいけないんだと思います。
この刑事事件の手続は、裁判所の訴訟指揮の下で、裁判所を含む訴訟関係者によって遂行されている、そこのプロセスについての調査、検証ということ、やはり、これも進め方いかんによっては、そこは司法権というものの独立ということを考えれば差し障りが出る可能性も当然あると思います。
そういった中にあっては、我々としては、今回、調査、検証する、これは内部でやはりやるべきであろう、第三者機関ということではなくて内部でやるべきだろうというのが私どもとしての見解であります。 - 平岡委員
最高検も検証するというふうに言っているから、私としては、いきなりもう第三者機関を設けてやれということを強行するつもりはありませんけれども、検証の結果を見ながら、本当にこれは検証できているのかという状況の中で、またこの問題については提起をさせていただきたいというふうに思います。