再審制度見直しの背景と論点の選択、審議のスケジュール
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- 嘉田由紀子君
ありがとうございます。日本維新の会、嘉田由紀子でございます。
今日は、まず鈴木大臣に、刑事再審制度に関する法務省の方針をめぐり質問させていただきます。
先日、三月二十八日に、鈴木大臣は法制審議会に刑事再審制度に対して諮問をしておられます。近時の刑事再審手続をめぐる諸事情に鑑み、同手続が非常救済手段として適切に機能することを確保することを目的としておられます。
そこで、二点、鈴木大臣にお伺いします。
一点目は、まず、この再審制度の見直しを法制審議会に諮問するに至った社会的、時代的背景について御説明いただけますか。それからまた、二点目は、法制審議会で重視する論点として三点挙げておられます。一点目は証拠開示、二点目は検察の不服申立て、三点目が再審審理などで裁判官が関わらないことが挙げられていますが、それを例示した理由を含めて、鈴木大臣、お願いできますか。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
今御指摘の再審制度につきましては、この委員会でもそうですし、様々御指摘もいただいているところであります。まさに、そうした一部の再審請求事件について、この審理の長期化、こういったことが指摘をされていたり、あるいは制度の在り方について様々な御指摘、この委員会でもいただいておりますし、様々な場所でもいただいております。まさにそうした中で、国会議員の皆様方の間でも、あるいは国民の皆様方の間でも関心は極めて高まっている、こういった背景があると承知をしております。
同時に、私どもで開催をしております改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会、ここにおきましても複数回議論をいただいたところであります。そうした中で、再審制度については法制審議会において更に検討を深めるべきとの御意見が示され、またその場で異論が見られなかったと、そういったことと承知をしております。
そうした中で、こうした議論の動向、さらには、まさにこうした世間での様々な関心の高まり、こういったところを踏まえまして、この再審手続に関する規律の在り方につきまして、再審請求事件の実情を踏まえつつ幅広い観点から検討いただくということで、私といたしまして、先般、先週になりますが、法制審議会に諮問したところであります。
今後、法制審議会におきまして十分な調査審議が行われ、できる限り早期に答申をいただけることを期待しているところであります。
そして、この三つの項目ということで今お話をいただきました。その三つ、すなわち、再審請求審における検察官の保管する裁判所不提出記録の弁護人による閲覧、謄写に関する規律の在り方、そして再審開始決定に対する不服申立てに関する規律の在り方、そして、さらには再審請求審における裁判官の除斥、忌避に関する規律の在り方、こうした三点ということで申し上げましたが、まさにこれは再審制度に関する主要な論点と考えられることから、諮問においてこれらを例示をしたところであります。
もっとも、これはあくまで例示ということでありまして、これに限るということでもございませんし、そういった意味で、調査審議の対象、これを限定をするという趣旨ではございませんので、ほかに様々な論点もあろうと思います。どのような論点を取り上げられるかについては、まさにこれは法制審議会において諮問の趣旨を踏まえながら御議論いただく、そうしたものと考えております。 - 嘉田由紀子君
御丁寧にありがとうございます。
審議会というのは、メンバーによって中身が変わります。これはもう常識のようなことですけれども、このメンバー、専門性、公平性、中立性などの観点から、例えば冤罪の被害当事者などを含むかどうかというようなことも大変大事なメンバー選びの論点だと思います。まだ決まっていないということですので、ここは質問というよりは、メンバーが決まり、そうしたら、なぜその人たちになったのか、決まった段階で御開示をいただけたらと思います。これは要望でございます。
それから、今並行して、立法府として、国会議員、超党派で三百七十余りの議員が国権の最高機関として議員連盟つくっております。ここ、多くのメンバーが議員連盟に入っておられると思いますけれども、そこでも再審請求に関して四点、議員立法を準備しておられます。証拠の開示命令、再審開始決定に関する不服申立ての禁止、それから裁判官の除斥、忌避、あるいは手続規定の整備などですけれども、これら四項目も今大臣が諮問していただいたところと重なっておりますが、ここで議員立法も出てくる、そして閣法の準備もということですけれども、このスピード感を持ってそれぞれ当たっていただけると有り難いんですが、ここは鈴木大臣のコメントいただけるでしょうか。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
済みません、まず、先ほど、法制審の諮問、先週と申し上げましたが、三月二十八日、先々週でございますので、そこは訂正をさせていただきたいと思います。
その上で、今御指摘のスケジュール感ということでありますけれども、議員立法につきましては、これは立法府の中での御議論でございますので、私の方からコメントということは差し控えさせていただきますけれども、まさにそうした意味において、私どもとしては、この法制審における審議、これは法制審議会において当然お決めをいただくということで、私から確たることを申し上げることは困難でありますが、その一方で、やはり国民の関心も極めて高い状況でもあります。さらには、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会、先ほど申し上げましたけれども、ここにおいても再審制度の在り方については協議が重ねられてきたところでもございます。
まさにこうした経緯を踏まえますと、私としては、当然十分に御審議をいただくことは極めて大事でありますけれども、同時に、そのスピード感ということで、できる限り早く、早期に答申をいただけるように私としても期待をしているところでございます。 - 嘉田由紀子君
ありがとうございます。
スピード感を持って、実は私も知事時代からかなり具体的に関わってきた冤罪事件もあります。当事者の立場からしたら、一日も早くここは身の潔白をと思っておられるのは当然だと思います。
冤罪被害者の死亡後の再審請求等
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- 嘉田由紀子君
質問三点目ですが、政府参考人でよろしいんですが、既に亡くなられた方の冤罪に対して遺族や関係者が再審を求めることができるでしょうか。求める場合、どのような要件があるでしょうか。 - 政府参考人(森本宏君)
再審を請求することができる者を定めました刑事訴訟法四百三十九条一項は、有罪の言渡しを受けた者のほか、四号におきまして、有罪の言渡しを受けた者が死亡し、又は心神喪失の状態にある場合には、その配偶者、直系の親族及び兄弟姉妹についても再審の請求をすることができると規定しております。 - 嘉田由紀子君
亡くなった、あるいは心神喪失の方に代わって配偶者や直系親族や兄弟姉妹が再審請求できるということですが、この質問をさせていただいた理由、今日、資料の一、二、三と、かなり大量に資料を出させていただきましたが、背景が複雑なので、あと五分しかありませんので説明できるかどうか分かりませんが。
政治家の冤罪、具体的には、福島県の元知事、佐藤栄佐久知事が二〇〇六年の九月に逮捕されました。ダム建設に関わる贈収賄ということで、その経過を、まず資料一では、東京の地裁、高裁、最終的に最高裁判所の棄却、上告棄却をされてしまったので、東京高裁の判決が確定してしまったのが二〇一二年の十月十六日です。資料一には、その十月十六日に佐藤栄佐久さんの御自身で書かれた文章を出させていただきました。
そもそも、この事件はないものをあるとでっち上げた砂上の楼閣でしたと。私と弟は収賄罪で突然逮捕され、世間から隔絶された東京拘置所の取調べ室で、東京地検特捜部の検事から身に覚えのない自白を迫られました。私の支持者たちが軒並み特捜部に呼び出され、厳しい取調べを受け、それによって自殺未遂者も出ております。私は独房の中で悩み、そして、自分一人が罪をかぶって支持者が助かるならと、一度は虚偽の自白をいたしましたと。
これ、実は今、刑事訴訟法でデジタル化というのがこの後議論が出ると思いますけれども、突然言わば令状で特捜部に呼び出され、そして独房状態の中で社会から絶縁されるときに人はどうなるか。実は、湖東記念病院の女性の被疑者もそうでした。そして、佐藤栄佐久さんも知事までやられて、言わば大変な現場を過ごしてきた方でも言わば虚偽の自白をせざるを得ない。というのは、支援者が福島から東京に呼ばれて、そしてそこで責められるわけです。自殺未遂者まで出ております。それが「知事抹殺」という本に書かれておりますけれども。
そして、収賄罪の要件は次々に壊れました。その壊れた仕組みを資料二に出させていただきましたけれども。結局、県の土木部長が知事から天の声を聞いたと、そしてダム発注に特定の、このときは前田建設工業を通じて、ダムのゼネコンですけど、前田建設さん、水谷建設にダムの受注が決まったというプロセスを書いておりますけれども、問題は、この天の声を出したという二〇〇〇年一月七日、知事の秘書室の記録には、坂本土木部長と会ったという記録がないんです。一月のこの時期というのは、私も経験しておりますけれども、お正月の後ですから、いっぱい挨拶が来ます。そして、交通整理しなければいけないので、どこも確実に五分、十分刻みの記録があるはずなんですが、本人も、佐藤栄佐久知事も、土木部長から天の声を聞くようなそんなアリバイ、自分が出すような場所ではなかったと。
あわせて、後から土木部長とある意味で政治取引をしたということが出てきます。その政治取引が、佐藤知事は日本の国にとって都合の悪い知事だというのは、東京電力の事故、トラブルを隠蔽する体質に彼自身は知事になって直後から出会っているわけです。それが資料一の二ページ目ですけれども。プルサーマルの実施についても厳しく対峙してきた。あのとき、たしか二〇〇三年のときに日本中が、福島県知事とそれから新潟県知事が抵抗して電力不足になりました。何で地方の知事の意向でということ、世論がかなり厳しかったんですけれども、そういう中で、結果的には、贈収賄の金額がなしで、そして完全に実質無罪だと、だけれども、最高裁は公式に有罪化したということで。
それで、実は佐藤栄佐久知事のこの本を私は二〇一一年に、三月十一日以降読みました。それまで知らなかったんです、一連の贈収賄だなと思っていたんですけれども。それで、この冤罪の本を読んで私の支持者が、嘉田さん、新幹線の新駅やダムを止めたあなたも次に国に抹殺される可能性のある知事だよということで、二〇一二年に自ら、知事は何ができるかという本を書かせていただきましたけれども、こういう国家的な冤罪というのは、例えば村木厚子さんもそうですけれども、本当にこの日本で今後決して起きてはいけないと思います。
三月十九日に亡くなられた佐藤栄佐久さんのお通夜が三月二十七日にありました。私は、栄佐久様の御霊前に、国会議員として、立法府としてできるだけのことをさせていただきたいと内々お約束をさせていただきました。実は、二〇一二年以降、佐藤栄佐久さん御自身も、また御親族も全く再審の動きはしておらず、亡くなってしまったわけですけれども、このことは是非世間に知っていただきたいということで、今日紹介させていただきました。
そして、これは刑事の冤罪ですけれども、実は民事、家事の冤罪もたくさんあります。先ほど田島議員が、子供の虐待あるいは女性の性差別ということ、隠れていると。本当に隠れているんですね。そこをどうやって確実にエビデンスとして出していくかということ、それは、私たち立法府に属する、またこの委員会の責務だと思います。紹介だけさせていただき、またこの点については次回以降も継続させていただきます。
ありがとうございました。お時間いただきました。失礼します。