令和7年4月10日 参議院法務委員会 鈴木宗男議員による質問

袴田事件に関する総長談話

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  • 鈴木宗男君
     それでは、大臣に質問いたします。
     一昨日の委員会で、検事総長談話について大臣に質問しました。この談話は、法と証拠に基づいた談話であるかどうか。これに対して大臣は、これは検察において法と証拠に基づいた上での談話と考えておりますと答弁されました。
     改めて確認しますが、検察が抗告を断念したのは、法と証拠に基づいて抗告を断念したということでよろしいですか。簡潔にお答えいただきたいと思います。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     そこは当然に法と証拠に基づいた判断と承知をしております。
  • 鈴木宗男君
     抗告の断念は、法と証拠に基づいて断念したということを今大臣は明確にされました。
     そこで、この検事総長談話の中で、改めて関係証拠を精査した結果、被告人が犯人であることの立証は可能でありと書かれています。今でも検察は、当時の被告人、袴田巖さんが犯人であるとの立証は可能であるとの認識かどうか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     その点について申し上げますと、私どもは、検察の方の、静岡の検事正の方で袴田さんに対して謝罪に伺った際にこのように申し上げております。(発言する者あり)
  • 委員長(若松謙維君)
     発言の場合には委員長の指名で。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     その場においてこのように申し上げております。検察として、今回の無罪判決を受け入れ、控訴しないと決めたものである以上、対外的であるか否かを問わず、この事件の犯人が袴田さんであるということはもう申し上げるつもりはございませんし、犯人視することもないということも直接お伝えをしたいと思いますというふうに述べております。
     そのことが、これは検察としてということでこう述べていると私は承知をしておりますし、それが談話の後に、これ十一月二十七日でありますし、あの談話が十月の八日、八日ですかね、でありますので、時系列からいっても、それが私どもとしては検察の現在のポジションであると考えております。
  • 鈴木宗男君
     ならば、大臣、この談話の表現は適切でないですね。十月八日の談話では、ありと、立証はできると書いてあるわけですよ。しかし、その後、訂正している。訂正というか、法務省、検察庁としてのおわびの判断がある。違っていますね。
     だから、ならば、大臣、この検事総長談話の立証できるというのは、これは談話としては適切でないと指導するのが筋じゃないですか。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     この趣旨で申し上げますと、私は当然、それは検察ということで、私は、そういった意味では、こうした談話であったりそういったところから私としては考えるしかありませんけれども、私が承知している範囲で申し上げますと、これ、実際にそうした、抗告を断念するかどうかと、そういったタイミングの前でこれを出したその趣旨としては、まさにこの不控訴という判断を行った理由、あるいはその過程ということを一定程度説明をする必要があるという、そういった趣旨だというふうに私は承知をしております。
     あくまでそういったことで申し上げると、不控訴の理由や過程を説明するに当たって、その前提となる再審公判に臨む時点での検察の方針、これを記載をしたものというふうに、私はそういった形で承知をしております。
  • 鈴木宗男君
     大臣、抗告しないための談話だったんですよ、この検事総長談話というのは。今の大臣の答弁とちょっと食い違うんじゃないですか。
     大臣が言っているのは、山田、静岡の検事正が言ったというのは談話の後の話ですからね。私が言っているのは、この十月八日の、もう、はい、裁判しません、抗告しませんと、こういうときの談話なんですよ、検事総長の。ならば、内容も全く違ってくるんですよ、今大臣が言っている答弁とは。おわびしているわけですから、その静岡の検事正は。分かりますね。
     ならば、談話は、ここは訂正するなり、今も法務省のホームページにはそのまま載っているわけですから、これ訂正すべきじゃないですか、大臣。そのこと言うのが大臣の立場じゃないんですか。この談話は、この部分は、私は、実態に合っていないわけですから、それを聞いているんですよ。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     今、先ほど御答弁申し上げましたように、時系列で申し上げますと、まず、検察の方としてその不控訴という判断をまずそれは行う、それはその司法の場で行うということで、その前の段階として、それまでの経緯というものをきちんとやはりこれは説明をする責任があると。それまで法と証拠に基づいて検察としてそうした判断をしてきたわけですから、そこのところをしっかりと説明をする必要があるということで、まさにその不控訴という判断を行った理由や過程を説明するという過程の中で、再審公判へ臨む時点での検察の方針、そのことを記載をしたということだと私は承知をしております。
     で、その後に、そうした判断をし、その判断を受けた結果として、検察として現在どう考えているかということでいえば、そこは、私の立場として承知をしている限りにおいていえば、そこは静岡の検事正においてコメントをしている、そのことが今の検察の考え方だと私は承知をしております。
  • 鈴木宗男君
     私は、この問題だけはしっかりこれからも何回もやっていきますけど、大臣、どう考えても、どう読んでも、立証できるなんということを抗告しない者が言うのはおかしいでしょう。ならば、抗告すればいいんですから。抗告しない者が立証できると言うこと自体、委員の先生方はどう思います。矛盾していませんか。みんなうなずいていますよ、大臣。ここ、しっかり考えてくださいよ。
     ならば、立証できるという自信があるならば抗告すればよかったんですから、結果として、委員長、できなかったわけなんですから、もっと私は、潔く人間的な話をすべきじゃないですか。その指導監督は大臣はできるわけだから、私はここは指摘をすべきでないかと言っているんですよ。
     あわせて、大臣、この検事総長談話の中で、改めて関係証拠を精査した結果、被告人が犯人であることの立証は可能でありの次に、検事総長の控訴の要否について、長時間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたことにも思いを致し、熟慮を重ねた結果、検察が控訴することは相当ではないと判断しましたとある。
     これを皆さん読んだら、情状酌量の判断じゃないですか。法と証拠に基づいての表現じゃないでしょう、これ。福島先生、どう思います。あと、森先生だってもう弁護士資格持っている、古庄先生もそうだけれども。どう見たってこの日本語、これ見たら、法と証拠じゃなくて情状酌量。長時間にわたり、長期間にわたり法的地位が不安定な状況に置かれてきたと、長期間に不安定な地位に置いたのは検察じゃないですか。そうじゃないですか、皆さん、委員長。こういう、私は、すり替えというか、人間的でない、上から目線の表現があってはならない。
     本来、大臣、報告書も出したわけですから、十二月二十六日、これにも同じこと書いているんですよ。長期間にわたってその法的地位が不安定だから控訴しませんでしたという、検事総長談話と一緒に。これ、大臣、不自然じゃないですか。
     同時に、真摯的な、真摯というのは心の問題で、正しい真面目な、真摯的じゃないでしょう。大臣から、これは速やかに訂正すべきだ、言うべきじゃないですか。この談話がこの報告書にも書かれているんです、これは、皆さん。これしっかり読んでくださいよ。大臣は、はっきり言って、どこまで読んだか分からぬけれども、今の答弁聞いていると認識していませんよ。
     私は何も、これ終わった件なんですから、ここは潔く、事実に基づいて結論が出たわけですから、法と証拠に基づいて、ならば、私はもっと検察の信頼回復の上でもしっかりと正直に訂正するなりするのが当然じゃないかと思うが、いかがですか。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     まさに、私の立場で、そういった意味でいうと個別の事件ということで、これは私は、そういった意味での指揮権ということでいえば、そういったことを私は抑制的であると考えているという前提の上で申し上げますけれども、まさに今、そうした結果として、法務省の、済みません、検察の方でも、この事件について、様々なこうした形での犯人視することはないということも申し上げております。
     その上で、やはり様々な状況の中で、法的に非常に長い期間不安定な立場に置いてしまった、そのことは私も大変申し訳なく思っておりますし、その結果として、先般、諮問、法制審の方にも、再審の在り方ということでこれは諮問もいたしました。
     まさにそうした中で、やはりこの法全体の在り方ということで、この全体的な話としてそこはしっかりと改善していくべきことであると私も考えておりますし、そうした趣旨で諮問しているところでございますし、検察のそうした現在の考え方ということでいえば、私は静岡の検事正が袴田さんに対して謝罪申し上げたと、そのことに尽きると考えております。
  • 鈴木宗男君
     法務大臣、この報告書の六十七ページにも検事総長の談話をそっくり引用しているんですよ。私は非常にばかにした話だと思いますよ。同時に、人の人生を五十八年も縛っておいて、全く申し訳なかったという気持ちが出ていないんですよ。
     大臣、政治家です。一票の重みは十分分かっていると思いますよ。国民は今どう思っているかということを考えてくださいよ。私は冤罪問題は次の参議院選挙の争点になると思いますよ。私は、だから、これは検察を責めるんじゃないんです。正直に事実を認めればいい話なんですよ。ならば、大臣、人間大臣として、ここは訂正だ、ここは速やかにきちっと国民に周知徹底するというのが筋じゃないかと言っているんですよ。
     いま一度、大臣のお気持ちをお聞かせください。
  • 委員長(若松謙維君)
     時間過ぎておりますので、簡潔にお願いします。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     その点につきましては、正直この個別の事件について、これがどういうものであるか、どういう判断をするべきなのかと、そういったことを私として、検事総長に対してそういったことを指示をするということは、これは私としては正直そこはなじまないと考えています。
     ただ、その意味でいうと、先ほど来申し上げておりますように、法務大臣としてできることとして申し上げれば、やはりこの長期間にわたって袴田さんをこうした不安定な立場に置いてしまった、これまさに今、一人の人の人生がという話おっしゃいましたけれども、その点について私もじくじたるものがあります。その結果として、やはりそこはしっかりと法制審におきまして、きちんとした形でその再審の在り方、これをしっかりと審議すべきだと考えておりますし、そこの点について私も大変申し訳ないという思いでいるところであります。
  • 委員長(若松謙維君)
     過ぎておりますので、おまとめください。時間過ぎておりますので、よろしくお願いいたします。
  • 鈴木宗男君
     委員長、今、私は、再審法をやればまた長くなるから、再審法にはもう触れる話じゃないんですよ。私は、この検事総長談話と報告書に基づいての話、で、過去の、前の委員会、その前の委員会の流れから言っているだけです。
     それで、改めて、委員長、前回も言いましたけれども、私は、法務大臣は答えられないわけですから、検事総長がやっぱりここに来て説明をしてもらうのが一番だと、こう思いますので、どうか理事の皆さん方、適切に取扱いをお願いしたい。過去にも検事総長は何回もこの法務委員会には出てきておりますので、例がありますから、この点よろしくお願いします。