外国からみた日本の刑事司法制度
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- 古庄玄知君
こんにちは。
デジタル法についてもちょっと後ほどいろいろ森本局長にお伺いすることになろうかと思いますが、ちょっとその前に方向性を変えて、海外における邦人支援の、こちらの、せっかく外務省の方もお見えなので、こっちの方から先にお伺いしたいと思います。
もう今から三十年ぐらい前なんですけど、実は私、アメリカ人を弁護したことがあります。そんなに大した大きな事件じゃなかったので、まあ執行猶予が付くことは間違いない、そういう案件だったんです。その被疑者が裁判所で勾留質問を受けている最中に目を盗んで逃げたんですね。裁判所から逃亡して、大分の方ではかなり大きな話題性のある事件になってマスコミなんかにもかなり報道されたんですが、二、三日後に大分県警の努力によって逮捕されたと、そういう案件で、最初に付いていた弁護人が、俺の顔に泥を塗りやがって、俺はもう弁護せぬと言ってやめたんです。
その後、私の方に、古庄、おまえ弁護してくれぬかということが来て、私、弁護人になって、接見に行ったんですね。接見に行って、何であなた逃げたのと、そんなに大した重い罪じゃないのにどうして逃げたのというふうに聞いたら、日本という国は一度逮捕されたら二度と出れない国だと、そういうふうに、アメリカの本国ではそういう話になっていると。
かなり、そのときに彼が挙げたのが、この「ミッドナイト・エクスプレス」という映画があるんですが、これ、トルコでアメリカ人が旅行に行って、ついいたずら心を出して麻薬を本国に持って帰ろうと思ったら捕まって、もう三十年も四十年も出れなくなって、最後の最後、ようやく脱獄して本国に帰れたと、そういう映画があるんですが、「ミッドナイト・エクスプレス」を見ていたので、日本で捕まるとああいうふうになるというふうに思ったので、今このチャンスを逃したら一生日本の刑務所かどこかに閉じ込められると、そういうふうに思ったというんですね。
そんなばかな話はないんじゃないのと我々日本に住んでいる人間はそう思うんですが、それで、じゃ、海外において日本の刑事司法はどういうふうに思われているんだろうかということをちょっと調べました。
その中で、資料二を御覧いただきたいんですが、取調べ受忍義務、これはおかしいというんですね。いや、黙秘権があって、あなた、しゃべらぬでいいよというふうに黙秘権を最初言いながら、しゃべれしゃべれ、おまえ、しゃべらぬか、おまえのところ、どげな不利益になるか分からぬぞというふうに警察は言うわけですわ。しゃべらぬでいいと言いながら、しゃべれしゃべれと言う、これがおかしいと。
その次の資料三、右側の下の方に、日本は検察官がボスと、こういうふうにゴーンさんが言っているんですね。まあ確かに私もそう考えます。
例えば令状主義ですね。令状を裁判所が判断する、裁判所が判断するというふうに先ほどから森本さん一生懸命言っていますけれども、裁判官というのは、なったばっかしの、令状当番なんというのはなったばっかしの若い裁判官で、もうはっきり言うて、検察官の言いなりですわ。だから、検察官が令状申請したら、ほぼ判こを押して令状を発行するというのが現場じゃないかなと思っているので、形式的には裁判官の令状に基づくというふうになっていますけど、実態はそれと違うと。だから、ゴーンが日本は検察官がボスというふうに言っているのは、そういうことを指して言っているんではないかなと思います。
それから、資料四の一ですね、出世欲から事件を捏造と。
これも、確かに、何で事件捏造してまでやるかというと、やっぱりその組織の中で出世したいということだろうと思います。実際に、例えば無罪なんか出した暁にはその担当官は出世できないでしょうから、何としてでも無罪は出したくないと、そういうふうに検察庁、検察官は考えていると思いますし、また、よくあるのが、派手な一課に対して二課は地味なんですよね、警察なんか。
そうすると、一課のやる事件というのはばあんとマスコミに報道されるけど、二課のやる内偵している捜査なんというのは余り派手にならないので、一課が派手にばあんと打ち上げるなら、二課も派手にやらないと勤務評定に響くんじゃないかなとか、そんなこと考えて、二課も派手に打ち上げるということがまあまあよくあるところです。
そういうふうに、あとは袴田さんの事件、これはもう言わなくてもよろしいでしょう。
それから、資料六、海外から異質に映る日本の刑事司法制度と。
海外から見て、この日本の刑事司法というのは本当変わっておるなと。先ほど言ったのをつなぎ合わせてもそうだと思うんですが、そういうふうに見られてしまっていると。現に、私が弁護したその人も、今逃げなければ二度と刑務所から出られぬと、そういうふうに思ったということがありましたので、こういうふうに日本の刑事司法が海外からそういう目で見られているということに対しての、誰になるんですかね、森本さん、じゃ、局長の見解をお願いします。 - 政府参考人(森本宏君)
今委員御指摘のような批判があることは承知しておりますけれども、全体的にそういうイメージかどうかまでは承知しておりませんが、法務省といたしましては、被疑者、被告人の身柄拘束につきましては、刑事訴訟法上、厳格な要件及び手続が定められておりまして、人権保障には配慮したものとなっているというふうに考えておりますし、一般論としてではございますが、被疑者、被告人の勾留や保釈についての裁判官の判断は、刑事訴訟法の規定に基づいて、個々の事件における具体的な事情に応じて行われているものと承知しておりまして、不必要な身柄拘束がなされないように運用されているものと考えております。