令和7年5月20日 参議院法務委員会 森まさこ議員による質問

取調べへの弁護人の立会いを認める制度の導入

(国会議事録URLはこちら

  • 森まさこ君
     参議院議員、森まさこでございます。
     私は、これまで本委員会において、冤罪と指摘される無実の方が密室の取調べでやっていないのにやったと虚偽の自白を強要される問題、無実の主張をすればするほど長期の拘束をされるなどの、又はそう脅されるとのいわゆる人質司法と指摘される問題、そういった冤罪を防ぐために取調べに弁護人を立会いさせることの必要性について、歴代の法務大臣に見解をお伺いしてきました。今回、鈴木法務大臣にもこの問題についてお伺いしたく思います。
     私は、自分が法務大臣だったとき、当時、国民の皆様方から法務省や検察に対して様々な御批判があり、また、カルロス・ゴーン事件等を契機に人質司法、いわゆる人質司法を含む我が国の刑事司法の在り方が国際的に議論の対象となったことを受けて、令和二年七月に法務・検察行政刷新会議を立ち上げました。
     この刷新会議は、もちろん法務省は設置することは大反対です。今日、資料の三の二の二にお示ししたとおり、私は総理大臣に辞表を提出して、自分の辞表と引換えにこの刷新会議を立ち上げることを許していただきました。
     この刷新会議で議論すべき課題について、私は三つの柱を示しました。一つは検察の倫理、もう一つが行政の透明化、そして三つ目が我が国の刑事手続について国際的な理解が得られるようにするための方策というものです。この三つ目の刑事手続について、いわゆる人質司法や被疑者取調べへの弁護人立会いなどを含む刑事手続全般の在り方について議論が行われました。
     刷新会議の報告書は令和二年十二月に取りまとめられ、私の後任の上川法務大臣に提出されました。私が大臣引継ぎをするときに上川大臣に、法務省はやりたくないかもしれませんが、この刷新会議だけはどうか継続してくださいとお願いし、上川大臣が森大臣の強いお気持ち分かりましたと言って継続をしていただき、出された取りまとめです。
     この取りまとめの中に書いてあります。令和元年六月までに施行された平成二十八年改正刑事訴訟法、その三年後検討の場を含む適切な場において、弁護人立会いの是非も含めた刑事司法制度全体の在り方について、社会の変化に留意しつつ、刑事手続の専門家以外の多様な視点も含めた幅広い観点からの検討がなされるよう適切に対応することとされました。
     そこで、私は、この委員会でこの点について当時の上川大臣に三回にわたって質問しました。令和三年三月三十日、四月八日、五月十八日です。上川大臣からはこういう答弁がありました。弁護人の立会いの点ということでございますが、このことを含め、刑事司法制度の在り方に関しまして、私から刑事法制度を所管する刑事局に対して適切に対応するよう指示をしたところでございます。これが三月三十日です。
     刑事訴訟法また刑事のこの手続に関し、絶えず見直しをしていくべき事柄であるということで、検察行政刷新会議の中での御提言もそのような趣旨でしっかりと位置付け、そして認識をした上で指示をしたところです。これが五月十八日です。
     しかし、平成二十八年改正刑事訴訟法の三年後検討の場である改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会、以下、在り方協議会と呼びますが、この第一回会議で、協議会で取り上げる検討課題として、日弁連の委員が取調べへの弁護人の立会いの制度について議論すべきと発言したのに対し、法務省刑事局の構成員が、二十八年の改正で既に取調べの録音、録画が導入されているので、もしそれで足りないということが確認されるのであれば、更なる手段として弁護人の立会い制度について議論することもあり得るのかもしれないが、逆に、取調べの録音・録画制度によって弁護人の立会い制度の目的とするところが既に相当程度達成されていることが確認されるのであれば、制度の必要性自体に疑問が生じ、その前提部分が成り立つのかということにもなってくるので、この議論するかどうかについては適切ではないと取り上げ、結局、検討課題の項目に取り上げられませんでした。
     私は、これは刷新会議における議論、報告書や当時の上川大臣の国会答弁を無視したものであり、国会軽視であるとして、昨年の本委員会において、令和六年の四月十一日、四月二十五日、五月十六日、六月十一日の四回にわたってこの問題を取り上げました。皆様のお手元に今日資料としてその国会会議録の抜粋をお配りしております。
     そして、当時の小泉法務大臣に対し、在り方協議会で取調べへの弁護人の立会いについて正面から議論すべきと質問したところ、小泉大臣からは、いわゆる人質司法の問題、そして被疑者取調べへの弁護人の立会い、これらは現在開かれております在り方協議会の当然対象として取り上げられるべきものであるというふうに認識をしております、事柄の性格に鑑みて、これはやはりしかるべき時間を掛けて検討するべき問題だと思います、特定の問題の一部に押し込めてしまえる問題ではないと思いますと、五月十六日と六月十一に御答弁いただきました。
     また、私は本委員会の中で、当時厚生労働省の局長だった村木厚子さんの無罪事件等の一連の事態を受けて設置された検察の在り方検討会議、ちょっと名前が似ているんですが、在り方協議会とは違います、在り方検討会と今後呼ばさせていただきますが、在り方検討会議の第六回会議で、村木さん御本人が非常に強い実感を込めて被疑者取調べにおける弁護人の立会いの必要性を述べられた貴重な意見なども御紹介いたしました。今日の資料の二の二に付けております。
     そこで、村木さんのように被疑者として検察官の取調べを実際に受けた方からヒアリングを行い、在り方協議会に入れるべきではないかと質問しました。小泉大臣からは、ヒアリングは必要だと思います、一般の方々の声をヒアリング以外にどういう形で取り入れることができるのか検討をさせていただきますと、六月十一日に答弁をいただきました。しかし、その後、在り方協議会では村木厚子さんほかのヒアリングは行われておりません。これは、先ほどの刷新会議の中に、専門家以外の方の議論、多様な意見も取り入れて議論すべきと書いてある取りまとめにも反するものでございます。
     私が、在り方協議会、今行われているものです、大臣の下で、どのくらい弁護人の立会いについて議論されているのか、ほとんど日弁連が発言している部分だけですが、調べてきました。第一回から第十七回までの議事録が行数で一万四千四百三十八行ありますが、一万四千四百三十八行中、四百七十四行で、全体のたった百分の三、すなわち三%にすぎない分量しか議論されていないというか、日弁連の発言しかないということでございます。
     刑事訴訟法の改正は平成二十八年、施行は令和元年であり、改正法の附則第九条に基づき、在り方協議会が設置されたのは令和四年です。法改正から現在まで足掛け十年となります。平成二十八年の刑事訴訟法の改正で導入された取調べの録音・録画制度は、いわゆる冤罪や違法な取調べを防ぐのに重要ではあるものの、最近の事件においては、それを導入した上でも違法な取調べがあることが発覚し、それによる被害者が出ています。
     憲法には弁護人の援助を受ける権利が保障されています。被疑者にとって最も援助を必要とするのは取調べの局面ではありませんか。被疑者に供述を拒む権利も保障されているのです。
     この間、先ほどのように、録音、録画の下でも不適正な取調べが繰り返されていることが明らかになりました。取調べの録音、録画で足りないことが確認されました。弁護人が取調べに立ち会うのは、不適正な取調べをその場で抑止するとともに、被疑者が適切に権利行使をすることを可能とするものです。
     この点、刑事訴訟法には弁護人の取調べへの立会いを禁止する規定はないんだという発言がよくなされます。しかし、そのような消極的規定では、運用で取調べに弁護人が立会いを認められていないことが確認されています。警察庁も検察も、弁護人から取調べの立会いがあったということを確認されておりません。日弁連もほとんど確認していない。つまり、運用でもなされていないんです。こうなったら、積極的な義務規定を置くべきというところまで考えなくてはなりません。
     また、犯罪捜査規範百八十条の第二項もよく持ち出されます。そこに制度上は想定されていると答弁されます。しかし、制度上想定されておっても、運用上は認められていないではないでしょうか。
     そもそも、改正刑訴法は、取調べへの過度の依存を見直し、村木厚子事件のような、袴田事件のような、無実の人が罪を押し付けられること、これを防ぐことを目的としたものでした。それにもかかわらず、不適正な取調べが繰り返されており、取調べへの過度の依存は改まっていないんです。
     確かに、取調べの手法など、各国との違いもあります。それを議論のテーブルの上にのせて、今は弁護人の取調べの立会いについて話し合うときが来たと思います。
     私は法曹ですから、いろいろな会合に出ますと検事さんにも会います。そして、検事さんを辞めて弁護士になった方に最近このようなお話を聞きました。森さん、私は検事として取調べをやってきた、そして今は弁護士になった、両方の立場になって思うことは、今こんなにも無実の人が有罪になる事件が増えているのだ、だから、これはもうそろそろ弁護人の取調べへの立会いを検討する時期が来ている、そのようにおっしゃいました。検事さんをやった方でもそうおっしゃるんです。
     法務省は反対すると思います。なぜなら、法務省は検事さんがいるからです。検事さんで成り立っている、法務省の職員ですね、日本は法務省の職員はほとんどが検事さんです。自己否定につながることができにくいのは当たり前です。
     そうであれば、国民から選挙で選ばれた法務大臣がリーダーシップを発揮して、国民を守るため、無実の人が有罪になることを防ぐため、制度上、取調べに弁護人の立会いをのせることを検討する時期ではないでしょうか。大臣の御見解を伺います。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     まず、森先生、大臣在職当時からの様々なこうした、今御説明をいただきましたこと、改めてそうした取組に敬意を表させていただきたいと思います。
     その上で、私も、その意図するところ、私としては理解するところが正直あります。ただその一方で、やはり今、検察官の取調べに弁護人が立会いを認めた場合ということで、その様々な検討会での議論の中でも、例えばその必要な説得、追及を通じて被疑者からありのままの供述を得ることができなくなるであるとか、様々そうした意味での、そうした様々な御指摘があったのも事実であります。
     まさにそういった中にあって、制度としてどうあるべきなのか……(発言する者あり)
  • 委員長(若松謙維君)
     御静粛に願います。
  • 国務大臣(鈴木馨祐君)
     あるいは運用としてどうあるべきなのか、そのことについて申し上げると、やはりこの制度化ということについて、法制審の議論、部会で、以前答申に盛り込まれなかったそういった経緯もある中ではあります。あるいは、その刑訴法、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会においても、これは両論、正直あったということであろうと思います。
     まさにそういった中で、私として今申し上げられることは、やはりこの協議会における議論、これをしっかりと見極めていくということに尽きると思いますし、同時に、今様々この情勢の変化というものもあろうと思います。そういった中で適切な議論が行われるということを私としては期待をしていきたいと思います。
  • 森まさこ君
     時間になったので、終わります。ありがとうございました。