「第二回人質司法サバイバー国会」の開催にあたり、運営スタッフとして会場設営やタイムキーパーなどを行いました。会場では、登壇されていない他のサバイバーの方たちにもお会いし、直接お話を伺うこともでき、より一層人質司法問題の深刻さを知ることができました。
当日、今西事件(今西事件の詳細)の当事者である今西貴大さんが、ボランティアとして参加されていました。今西さんは、登壇者のスピーチに一心に耳を傾けておられました。今西さんも人質司法を経験されています。自らの経験から、サバイバーが声を上げ、人質司法の実態を明らかにすることが、制度改革に向けてどれほど力強い意味を持つかを実感されているように思いました。
また、会場では浅沼智也さん(浅沼さんの事件の経過等)にもお話を伺う機会がありました。浅沼さんは、青森県警に強制わいせつ罪の疑いで逮捕され、その後暴行罪に変更されて起訴されましたが、先日、青森地方裁判所で無罪判決を勝ち取りました(検察官は控訴せず、無罪が確定しました)。
事件当時、インターネット上では「性暴力」などというレッテルが貼られ、それが原因で、浅沼さんは代表を務めていた団体のイベントを延期したり、学会などへの参加を辞退したりせざるを得ませんでした。そうした苦境と、LGBTQ+に対する社会的偏見や誤解がさらに浅沼さんを傷つけている現実を知り、心が痛みました。
浅沼さんは、登壇された冤罪被害者や支援者の言葉を一つひとつ、ご自身の経験と重ね合わせているように見えました。司法の場で無罪が確定しても、社会の偏見は容易には消えません。裁判が終わった後も、SNS上で激しいバッシングに晒されており、代表を務めていた団体「Transgender Japan」への復帰も難しい状況にあるそうです。
浅沼さんはLGBTQ+当事者として、これまでも社会の偏見や差別に立ち向かいながら活動を続けてこられました。冤罪と闘うだけでなく、LGBTQ+当事者としての生きづらさにも向き合わなければならない。その厳しさを思うと、浅沼さんが背負っているものの大きさに胸が締め付けられる思いがしました。
会場に響く言葉には、怒りや悲しみだけでなく、希望や決意も込められていました。冤罪や人質司法の問題は、決して過去のものではなく、今もなお多くの人々が苦しみ続けています。今西事件も現在、最高裁に上告されており、未だ雪冤が果たされていません。だからこそ、この場に集まった人々は声を上げ、社会を変えようとしているのだと、改めてその重要性を痛感しました。
司法の不条理と闘う人々の声を直接聞く機会をいただき、人質司法の問題は個々の事件にとどまらず、社会全体で解決すべき課題であると改めて強く感じました。また、再び同じ悲劇を繰り返さないために、学生の立場として何ができるのか、登壇者や参加者の言葉を胸に刻みながら、自らの活動の意味を問い直しました。
冤罪や人質司法、差別や偏見は、社会の構造が生み出した問題であり、それを変えるためには、一人ひとりの意識と行動が不可欠です。決して他人事ではなく、この問題にどう向き合い、解決に向けて何ができるのかが、今まさに問われているのだと、その課題の重さを身にしみて感じました。
浅沼さん含めた人質司法の被害者4名が、人質司法を許している刑事訴訟法の規定が憲法に違反するとして、東京地方裁判所に提訴しました(「人質司法に終止符を!訴訟」)。今西事件やこの訴訟の進展に注視しながら、引き続き問題に向き合ってまいります。
最後までお読みいただきありがとうございます。
中央大学法学部4年生
中野 栄二