photo: 黒木美紗子
2024年11月28日、大阪高等裁判所第3刑事部(石川恭司裁判長)は、IPJの支援事件であり、IPJのメンバーの秋田真志弁護士・川﨑拓也弁護士・湯浅彩香弁護士・川﨑英明弁護士が弁護人を務める今西貴大さんの事件について、全面的な無罪判決を言い渡しました。
今西さんは、2歳の娘の頭部に何らかの暴行を加えて死亡させたなどとして2018年に逮捕・起訴されました。一貫して無実を訴え続けましたが、大阪地方裁判所は2021年3月25日に懲役12年の判決を言い渡しました。
控訴審判決は、今西さんの主張を全面的に容れ、一審の有罪判決には論理則・経験則に照らして明らかな不合理があるとして破棄し、無罪判決を言い渡しました。
まずは、6年間にわたり被疑者・被告人の地位に置かれ続けた今西さんに無罪の判決をくだした大阪高裁の判決を評価すると共に、今西さんが一日でも早く平穏な日常を取り戻すことができるよう、公益の代表者たる検察官に対して、最高裁判所に対する上告を断念するよう、強く求めます。
今西事件は無実の人が児童虐待を疑われたという事案です。本件では、いわゆるSBS(揺さぶられっ子症候群)/AHT(虐待による頭部外傷)が争点のひとつとなりました。SBS/AHT事件については、2017年頃からその背景にあるSBS/AHT仮説の非科学性に関する検証が進み、2018年頃から関連事件で相次いで無罪判決が確定しました。本件でも、内因性の疾患(心筋炎)が症状の原因であることが明らかにされました。この判決を機に、SBS/AHTに関する検証を進め、無実の養育者が誤って虐待したとされる事案を見直すべきです。
無実を主張し続けた今西さんは、逮捕時から今年7月26日の保釈まで、約5年半にわたり大阪拘置所に勾留されました。本件は、いわゆる「人質司法」の問題が日本の刑事司法にあることを、あらためて明らかにしました。無実の人がなぜこれほどの長期にわたり勾留されなければならないのか、日本の刑事司法を根本から見直す必要が浮き彫りにされたのです。私たちは、日本の人質司法の問題をなくすための、制度改革を引き続き求めていきます。
IPJは、今西さんと弁護団の依頼を受けて、2022年の春より支援してきました。IPJの学生ボランティアは弁護団の協力のもと、事件について勉強し、中学校や高校で事件についての講義を行ったり、シンポジウムを開催したりしました。また、大阪拘置所に勾留されていた今西さんを励ますために面会に通ったり、文通をしたりして交流を深めました。
私たちは支援決定以降、今西さんとともに闘ってきました。検察官が上告を断念して本日の無罪判決が一刻も早く確定し、今西さんとご家族が刑事司法の負担から解放されて、平穏な生活が早く戻ることを祈っています。
IPJは、本日の判決を受けてえん罪の原因を検証し、二度と同じようなえん罪事件が繰り返されないための制度改正に向けて尽力します。
2024年12月1日
イノセンス・プロジェクト・ジャパン メンバー一同
賛同お願いします!「検察官は今西事件の無罪判決への上告を断念せよ」
逮捕されてから約6年間、冤罪の苦しみを経験した今西貴大さん。彼をこれ以上、被告人の立場に置き続けることは許されません。検察官が上告すれば、さらに長い間今西さんは被告人という状況に置かれ、苦しむことになります。これはあまりに辛く、過酷な現実です。検察官には、この無罪判決に対する上告を断念し、一刻も早く無罪を確定させることが求められています。
無罪判決が確定して初めて、今西貴大さんは刑事裁判から解放され、平穏な生活を送ることができるのです。
検察官に対し、無罪確定への迅速な対応(上告断念)を求めるべく、署名を集めています。上告期限は、2024年12月12日です。この請願書に署名して、今西事件の無罪確定を求め、彼の生活を彼自身の手に取り戻すための一歩を踏み出す後押しをお願いします。
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