【学生ボランティア(獨協大学)】SBS/AHTシンポジウムに参加しました。

記念撮影

2025年10月25日(土)、ビジョンセンター東京駅前で、シンポジウム「あらためてSBS/AHT仮説を問う 医学と司法のはざまで生まれつづけるえん罪」が行われました。

今回のシンポジウムでは、アメリカの法医学者エヴァン・マッシズ医師をはじめ、国内の医師、研究者、弁護士の方が登壇し、事故と虐待を見分けることの難しさ、医学鑑定の限界、そして実際の裁判における医学の扱われ方など、幅広い問題が取り上げられました。

三徴候説とは、乳幼児に急性硬膜下血腫・網膜出血・脳浮腫の三つが揃っているときに、激しい揺さぶりが行われたとする考え方ですが、近年その妥当性が国内外で見直されています。今回のシンポジウムでは、低い場所からの落下でも同じような所見が出る可能性や、医師が虐待を断定できるわけではないことなど、医学と司法の関係についても多角的に議論されました。

以下では、特に印象的に感じた点を書きたいと思います。

まず、マッシズ医師の講演がとても衝撃的でした。赤ちゃんがソファや幼児用の遊具から落下する映像が示され、一般的には致命的ではないものの、三徴候が揃い死亡するケースもあることが説明されました。事故によっても三徴候が生じることがあるという話は多くの人に知ってもらいたいです。

また、「法医は虐待かどうかを断定する立場にはない」ことが強調されました。医学が提供するのはあくまで医学的所見や意見であり、虐待の有無を決めるのは医学ではないという考え方に、法医としての責任を感じました。医師がこれは虐待だと決めてしまえば、その後の判断に大きな影響を及ぼす可能性があります。だからこそ、医学的に分かる事実と、法的・社会的に判断されるべき結論をきちんと分けて考える姿勢が重要なのだと気付かされました。同時に、このような明確な線引きがあるからこそ、医師の所見がより客観的で信頼されるものになるのだと思いました。

医学鑑定についてのアンケート結果では、医学鑑定を担う医師が刑事手続きに関する研修を受けていないことや、鑑定結果がどのように扱われたかのフィードバックがないという話がなされ、とても驚きました。医学鑑定が、裁判の中で別の意味に受け取られたり、誤解されたりする可能性があることを考えると、医療と司法の間に大きな溝があると思いました。

また、青木信彦医師による低位落下の危険性についての説明も印象的でした。一般的には低い場所から落ちても深刻な怪我にならないと考えがちですが、実際には重い損傷が起こることもあるということを知りました。揺さぶりと低位落下による脳への衝撃度を比較したグラフを見て、低位落下は交通事故同様の衝撃があることが分かり、一方、揺さぶりでそれを起こすことの非現実性を強く感じました。

最後のディスカッションでは、医学と司法の役割の違いが指摘され、印象的でした。医師は治療のために原因を追究し、推論を断言しないという姿勢をとります。一方、司法では事件の責任を明確にするための原因の調査、断定が求められます。この前提の違いによって問題が複雑になっているという話は、とても理解のいく内容でした。また、「虐待の証明は医学の仕事ではない」という意見や、「罪を確定するために医学鑑定を使うのは適切なのか」という指摘は、会場でも大きくうなずく人が多かったように感じました。

今回のシンポジウムを通して、医療と司法がそれぞれの役割と限界を理解し、連携していくことの重要性を実感しました。

獨協大学3年 K.H.