令和7年11月20日 参議院法務委員会 古庄玄知議員による質問

冤罪・再審無罪判決の多発に対する法務大臣の考え

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  • 古庄玄知君
     では、次の質問にまいりたいと思います。
     再審についてお伺いしたいと思います。
     袴田事件、有名な袴田事件、この前ありました。無罪判決が出ました。それから、福井女子中学生殺人事件、前川さん、これも無罪判決が出ております。それから、冤罪としては、大川原化工機、こういう事件もありました。
     こういうふうに、この頃というか、冤罪や再審無罪判決が多発しているんじゃないかなということを我々思うんですけれども、こういう状況に対する法務大臣の認識、特に訴追者である検察官との関係においていかなる認識を持っているのか、法務大臣の見解をお伺いしたいと思います。
  • 国務大臣(平口洋君)
     個別事件における裁判所の判断に関わる事項について、法務大臣として所感を述べることは差し控えたいと思います。
     その上で、当然のことながら、犯人でない人を処罰することはあってはならないということだと認識しております。
     あくまで一般論として申し上げれば、検察当局におきましては、無罪判決等があった場合には、当該事件における捜査・公判活動の問題点を検討し、必要に応じて検察官の間で問題意識を共有して、反省すべき点は反省し、今後の捜査、公判の教訓とするなど、「検察の理念」を踏まえ、基本に忠実で適正な捜査・公判活動の遂行に努めているものと承知をいたしております。
     引き続き、こうした基本に忠実で適正な捜査、公判遂行に努めていくことが肝要であるというふうに考えております。

再審法改正に関する法制審議会の設置との委員の人選

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  • 古庄玄知君
     今、再審の法律を整備すべきだというふうな機運が高まっております。
     どういうふうな考え方を持ってこの再審に取り組むかというのが大きな問題であって、再審というのはこれは邪魔なものだと、こんなものは要らぬと、そういうふうな消極的な考えで取り組むのか、それとも、冤罪被害者を最後に救済する、本当、人権救済のための制度だと、そういうふうな考えで取り組むかによって、取り組み方というのは大きく変わってくるというふうに思います。
     そこで、法務大臣にお尋ねしますけれども、法務大臣は、この再審制度というのは無駄な制度である、あるいは邪魔な制度であるというふうに考えるのか、人権救済の最後のとりでだというふうに考えておるのか、そこを法務大臣の見解をお尋ねします。
  • 国務大臣(平口洋君)
     言うまでもなく、人権救済の最後の手段であると考えております。
     ただ、内容については、現在法制審議会で審議中でございますので、お答えは差し控えたいと思います。
  • 古庄玄知君
     再審に関しては、再審冤罪議連が、鈴木宗男先生が御尽力されて立ち上げた議連があるんですが、こういう議連が一年以上にわたって研究、検討をし、本年の六月十八日に、野党六党の共同提案で改正案を国会に提出しております。
     今まで、検察庁とすれば、この再審については極めて後ろ向きであった、再審なんか要らないと、そんなもの改正する必要はないと、そういうふうな考え方であっただろうと我々は認識しておりますけれども、どういうわけか、その議連が法案を提出するちょっと前の四月になって、法制審議会再審部会というのを急に立ち上げたんですね。
     そこで、法務大臣、法務大臣じゃないか、済みません、刑事局長にお尋ねしますけれども、この時期にあえて法制審議会というのを、議連のじゃなくて別建てで、この時期にあえてこれを立ち上げたその真意というか目的というか、それについてお尋ねしたいと思います。
  • 政府参考人(佐藤淳君)
     お答えいたします。
     再審制度につきましては、近時、一部の再審請求事件について審理の長期化が指摘されるなど、法改正に関するものを含めまして様々な議論がなされているものと承知しております。
     また、法務省で開催していた、改正刑訴法に関する刑事手続の在り方協議会という協議会が開催されておりまして、ここにおきまして複数回にわたり御協議いただいていたところ、令和七年二月の会議におきまして、再審制度については法制審議会において更に検討を深めるべきとの御意見が示され、異論が見られなかったところでございます。
     そこで、こうした議論の動向等を踏まえまして、再審手続に関する規律の在り方につきまして、再審請求事件の実情を踏まえつつ、幅広い観点から検討していただくため、法務大臣において、同年三月、法制審議会に諮問をし、以後、法制審議会において精力的に御議論をいただいているところでございます。
  • 古庄玄知君
     こういうふうに、議連が法案の提出を図っているのと軌を一にして、同一案件について法務省の方が法制審議会を立ち上げて審議したことというのは、過去事例はあったんでしょうか。それとも今回が初めてでしょうか。
  • 政府参考人(内野宗揮君)
     お答え申し上げます。
     議員立法による法案提出の動きと同時期に、法制審議会におきましてその法案の内容に関連する事項につき部会を立ち上げて審議した例が過去にあったか否かということにつきましては、法務省としては、そういった事例、把握はしておらないということでございます。
  • 古庄玄知君
     そうすると、少なくともあったということについては把握はしていないということですね。
  • 政府参考人(内野宗揮君)
     そういう理解をしております。我々としては把握をしていないということでございます。
  • 古庄玄知君
     そうすると、そういう形で法制審議会立ち上げたのは今回が初めてだと、そう理解してよろしいですか。
  • 政府参考人(内野宗揮君)
     繰り返しの御答弁でありますけれども、法務省としてはそのような、過去に、事例につきましては、事例として把握はしておらないということでございます。
  • 古庄玄知君
     今日お配りした資料の一と二を示します。
     資料一がこの法制審議会のメンバーですね。これを資料二で私の方が分析というか分けたんですが、これによると、裁判官が三人、学者が八人、弁護士が四人、検察官五人、法務省、警察庁が五人。検察、法務省、警察合わせて十人、こういう構成になっております。もちろん、検察、法務、警察というのは再審について後ろ向きな姿勢だというふうに思います。
     今度、学者八人。学者八人に関して、時事通信の方が再審を専門的に研究している人たちに行ったアンケート、十九人が回答したんですが、そのうち十三人がこの学者委員については不適切、四人がどちらかといえば不適切というふうに、十九人のほとんどがこの学者委員は不適切な人選だと、こういうふうに言っています。中には、この学者委員は再審法改革に消極的な法務省の意見を代弁する研究者ばかり、あるいは、これまで積極的に研究してきた方が選ばれていないと、こういうふうに、再審の専門の研究者の方はそういうふうに言っています。
     これ、法制審議会、法制審議会と言うけれども、要は、法務・検察寄りの人選をして法務・検察寄りの構成メンバーで固めれば、法務・検察寄りの、そういう再審について後ろ向きの意見が出てくるのは当然だと思いますね。
     今一番大きな問題は、証拠開示の範囲をどうするか、それから、検察官の再審開始決定に対する抗告を認めるか認めないかという点が極めて大きな問題です。それが認められなければ、袴田さんが無罪になっていない可能性も高いし、福井事件の前川さんが無罪になっていない可能性だって高いわけなんです。
     そういうふうに、人選によって大きくこの再審法改正が変わってくるということで、この人選について、法務省とすれば、これは公正な人選だというふうに考えるのか、あるいは何らかの意図を持った人選なのか、その辺について法務省の見解をお伺いいたします。
  • 政府参考人(佐藤淳君)
     お答えいたします。
     法制審議会令におきましては、法制審議会の委員、臨時委員、幹事につきましては、学識経験のある者から法務大臣が任命し、また、そのうち部会に属すべき委員、臨時委員、幹事は、法制審議会の承認を経て会長が指名することとされております。なお、審議会において表決権を有するのは委員でございまして、幹事とは委員を補佐する立場でございまして、表決権は持っていないほか、先ほど検察出身者という話がありましたけれども、この幹事のうち三名は事務局の者でありまして、部会長を補佐する立場にある者でございます。
     その上で、お尋ねにつきましては、個別の人事に係る検討の過程に関する事柄でありまして、お答えを差し控えるところでございますけれども、法務当局としては、諮問の内容に照らしまして、再審請求事件の実情を踏まえつつ、再審制度について幅広い観点から検討を行っていただくのに適した方々に委員等をお引き受けいただいたものと承知しております。
  • 古庄玄知君
     この答申結果が出たら、これは、法務省とすれば、どういうふうに利用しようと考えておるんですか。
  • 政府参考人(佐藤淳君)
     現段階ではっきりお答えすることは、はっきりお答えすべき内容はございませんが、その法制審議会の結果を踏まえまして、適切な対応を取りたいと考えているところでございます。
  • 古庄玄知君
     時間ちょっと前ですけれども、これで終わらせていただきます。