IPJメンバーの西愛礼が、『冤罪学』を出版しました

書籍『冤罪学』

IPJメンバーの西愛礼(しんゆう法律事務所)が『冤罪学』を出版しました。

これまで、冤罪について専門的な知見にアクセスするためには、専門書を何冊も読まなければその体系的・全体的知識に触れることが難しかったところ、『冤罪学』は、人はなぜ間違うのかという点について法律的・心理学的視点などを元に冤罪に関する知見をまとめた「冤罪の基本書」になっております。「人は誰でも間違える」ということを前提に刑事司法関係者全員が協働して冤罪予防に取り組むことを提唱しておりますので、弁護士だけでなく裁判官・検察官・警察官にも読んでいただきたいですし、刑事司法関係者のほか広く冤罪に関心のある方々、例えば司法修習生や法学部生、マスメディアの方にも読んでいただきたい本になっております。

西愛礼
『冤罪学』(日本評論社、2023年)
本体4,500円+税、A5判416ページ
2023年9月29日刊行
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「冤罪を学び、冤罪に学ぶ」

日本には優れた研究がいくつもありますが、冤罪に関しては原因が多岐にわたるうえ、その各原因や分野ごとに散在してしまっていると思っておりました。

冤罪について知ろうと思うと、虚偽自白の本や目撃供述の本など分野ごとに勉強して、たくさんの本を読まなければなりません。

確かに、経験豊富な方々はこれらの本をどこかの過程で読まれていることも多いと思うのですが、事件の大小を問わず冤罪が発生し得ることからすれば、ベテランの人だけでなく、1年目の裁判官・検察官・警察官・弁護士・マスメディア等の全ての刑事司法関係者が冤罪について簡単に知る手段があった方がいいはずです。

また、経験豊富な方々をしても、他分野に関する知識や国外で紹介されている知識へのアクセスは容易ではありません。

人がなぜ間違えるのかということを考えた時、認知バイアス等の認知心理学や社会心理学の知見は必要不可欠であり、航空安全や医療安全等の状況も参考になるところ、このような隣接分野の国内外の知見をまとめることは役に立つと思いました。

それだけではなく、刑事司法は裁判官・検察官・弁護士で見えているものが違うように感じられることもありますから、法曹三者において冤罪防止という共通の目標について議論するためには、中立的な共通の土台が必要になると思いました。

私は、冤罪を減らすために冤罪を学び教えないといけない、そのためには冤罪という事象そのものの知識化が必要だ、そう考えました。

そこで、冤罪に関する知識を399頁に簡潔かつ体系的に整理し、1冊の基本書『冤罪学』としてまとめました。

冤罪を学び、冤罪から学ぶ」という本書のテーマだけでも広まってくれたら嬉しいと思います。

西 愛礼(にし よしゆき)