【学生ボランティア(甲南大学)】神戸刑務所を参観しました!

 甲南大学IPJボランティアは、2月中旬に神戸刑務所を参観しました。当日は、施設見学や職員の方々からのお話を通して、学びを深めることができました。刑務所は、一般市民が簡単に見学できる施設ではないため、非常に貴重な機会でした。

 初めて訪れた神戸刑務所は、閑静な住宅街にあり、一歩足を踏み入れると、とても緊張感のある場所でした。

 施設参観では、受刑者が生活する居室や、受刑者が作業を行う工場などを説明していただきながら、見学しました。刑務所について、私は、テレビドラマや映画、ドキュメント番組などから得られる「何となく怖そうで、受刑者を人間として扱わない場所」というイメージしか持っていませんでしたが、実際の刑務所は受刑者に対して厳しい規律がある反面、これまでの刑務所の処遇の反省や時代の流れから私のイメージに比べて受刑者の人権が見直されているように感じました。

 特に受刑者に対する呼び方の変化は印象に残っています。名古屋刑務所の刑務官による、受刑者への暴行問題をきっかけに、法務省により全国の刑務所で受刑者を呼び捨てではなく、「さん」付けで呼ぶことが決まりました。

 神戸刑務所の刑務官は、刑務所は受刑者に制裁を加える場所ではなく、あくまでも受刑者が更生するための処遇を行う場所だということを強調し、処遇が変化していくことの大変さや重要性をお話しくださいました。日頃メディアやSNSを見ていると受刑者の人権を脅かすような発言や投稿を目にすることが多々ありますが、受刑者も人間である以上、人権は守られるべきだと思います。名古屋刑務所での刑務官による事件は、相手が受刑者だとはいえ許されるものではありません。このような事件が起こってしまってから、処遇が見直されるのは遅く、非常に残念だと感じました。そして、一歩ずつでも、受刑者の人権を過度に脅かす処遇が見直されることを願います。

 また、近年では少子高齢化社会であるため、受刑者の高齢化も問題になっています。認知症などのために介護が必要な受刑者が増えることで、刑務官の負担も大きくなっています。刑務官が認知症をはじめとする病気の知識をもつことや、高齢者を作業のなかでも軽作業にあてるなどの工夫が必要不可欠です。この問題は今後も大きな課題になると思います。

 何度も犯罪を犯してしまう人の多くは、その行為がしてはいけない行為だと分かっているにもかかわらず、再び犯罪を犯してしまうそうです。彼らの再犯を防ぐために、ただただ犯罪を起こしたことに対して制裁を加えるのではなく、個々の状況に応じたアプローチをすることが重要になってきます。来年から懲役刑・禁錮刑の区別がなくなり、拘禁刑となることも、刑罰の目的が、従来の「刑罰を与えること」から、「再犯を防止すること」へと変化することが理由だということです。つまり、拘禁刑へと変化することは、受刑者の多様性から考えて、それぞれに必要な教育等を施すことにつながるのだと納得しました。しかし、どれだけ刑務官や受刑者が、再犯を防止するために努めたとしても、一度犯罪を行った人を社会は簡単に受け入れられるわけではありません。その点について神戸刑務所の刑務官は、再び社会に出て信頼を獲得できるか、社会の側が受け入れるかが鍵となるとおっしゃっていました。過去には、神戸刑務所で職業訓練を行った受刑者が再び社会に出てその技術を企業側から認めてもらい、その企業は、神戸刑務所で職業訓練をした人を積極的に雇いたいとも言ってくださったというようなことがあったそうです。このエピソードを伺った際に、マイナスからの再スタートになったとしても、実力で信頼を獲得し、認められ得るのだと感じました。また、社会が受刑者の社会復活に対してある程度、理解することも必要なのだと思います。

 普段は、弁護士の先生方、法学者の先生方からの見解を伺うことが多いですが、今回のような刑務所職員の方々からの見解も伺うことで多面的な視点で、日本の司法制度について学ぶことができたように思います。立場によって、考えの過程は、異なるかもしれませんが、「犯罪被害者を保護し、適切に犯罪行為を行った人の処遇を行う」という目標は同じだと思います。この目標に向けて、日本の司法制度の問題点を多様な立場から改善できるような社会になるように、私たち一般市民にもできることを少しずつ考え、実行していきたいと改めて思いました。

【甲南大学法学部2回生・西村友希】