【学生ボランティア中央大学】受刑者選挙権制限訴訟を傍聴してきました

現在、受刑者に選挙権を認めるよう求める裁判が行われています。私は、九州大学法学部(憲法学)南野森先生から日程を教えていただき、令和5年(2023年)10月16日と令和6年(2024年)3月13日に、東京高等裁判所に傍聴に行きました。

10月の裁判では、原告の意見陳述の代読が行われていました。原審の東京地方裁判所が「公務を的確に遂行できないと考えられる者は選挙人団に含まれないようにすることが望ましい。」と述べたことを受けてか、原告が「公務性」に何度も言及していたのが印象的でした。

私は、大学1年生の時にこの受刑者選挙権訴訟に関するレポートを書いたことがあります。当時は、選挙権の歴史や関連の法律を検討して、①受刑者に対する選挙権制限を正当化する事由はないものの、②受刑者に選挙権を認めるべきだという議論は憲法学説上の通説、多数説になっておらず、国会等における議論も深まっていないこと、受刑者の選挙権制限規定を廃止すべきことが明白な状態であったともいえないことから、立法不作為が国家賠償訴訟法上違法だとはいえないという結論を出していました。

しかし、本件の原告側代理人による陳述で、吉田京子先生の「どうして受刑者は選挙ができないのですか」との声が法廷内に響くのを聴き、私の頭に衝撃が走りました。いままで机の上だけで勉強をしていたのだと考えさせられた一幕でした。

選挙権は市民の基本的な権利であり、罪を犯した人々にも、この権利が認められるべきであると考えます。刑務所内での投票制度の整備を行い、受刑者が社会復帰を目指す際に政治参加の機会を提供することは、再犯防止や社会の再統合につながる可能性があります。また、現行法制の下では、罪を犯した受刑者だけでなく、袴田巌さんのような冤罪被害者まで選挙権の制限がなされることになり、制度上の問題だけでなく、倫理的な疑問を感じます。

最高裁判所は(在外国民の選挙制限が争われた事案において)、選挙権を制限するには「やむを得ないと認められる事由」が必要であると述べました。くわえて国際的な人権規範を踏まえると、受刑者の選挙権制限はその合理性や必要性を再検討する必要があり、法の下の平等という基本原則に照らして、受刑者もその市民権を尊重されるべきです。そのため、受刑者の選挙権を制限する現行制度の見直しと、受刑者の人権と社会参加の観点からの改正が求められます。

3月の判決では、東京高裁は受刑者に対する選挙権の制限を合憲と判断しました。しかし、受刑者の選挙権を巡る議論はこれからであり、受刑者の権利と再犯の防止のための改革が求められます。その過程で、法律や制度の改革だけでなく、社会的な意識や偏見の変革も不可欠であると強く思います。

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中央大学法学部3年生 中野 栄二