【学生ボランティア(中央大学)】アメリカにおける非行問題と社会学

令和6年(2024年)8月24日、中央大学OBから勉強会のお誘いを受け、國學院大学名誉教授の横山實先生の講義を拝聴しました。講義のテーマは「アメリカにおける非行問題研究の原点―なぜ社会学者が研究しているのか」であり、非行がどのようにして社会学の研究対象となり、現在の犯罪社会学の基礎を築いたのかを学びました。

講義の冒頭では、社会学の誕生が説明されました。フランスの哲学者オーギュスト・コントがフランス革命後の社会秩序を再構築するために「社会学」を提唱し、社会の安定と変化を理解するために「社会静学」と「社会動学」という2つの視点から社会を分析しようとした点が紹介されました。

次に、アメリカにおける非行問題がどのようにして社会学の研究対象となったのかが詳しく説明されました。17世紀初頭から18世紀にかけて、アメリカでは植民地時代にあり、移民の増加に伴い青少年の非行や犯罪が顕著化しました。特に都市部で問題が深刻化し、移民の子供たちが社会に適応できない状況が非行増加の一因とされました。

この青少年非行に対する対策として、アメリカでは19世紀初頭から「養育院」や「感化院」などの施設が設立され、貧困者や孤児、非行少年を収容しました。国家が親代わりとなり、子どもを保護する「国親(parens patriae)」の思想に基づき、非行少年を更生させるシステムが構築されました。

また、保護観察制度(Probation)の起源についても触れられ、1841年にジョン・オーガスタスがこの制度を導入し、犯罪を犯した青少年を刑罰ではなく社会復帰に導く取り組みが始まりました。この制度は、非行少年のリハビリテーションや犯罪防止の基礎となり、その後の更生システムに影響を与えました。

さらに、シカゴ学派の社会学者たちが都市化や移民の影響を研究し、犯罪社会学の発展に貢献したことも解説されました。シカゴ大学のアルビオン・ウッドベリー・スモールやロバート・エズラ・パークは、移民が直面する社会的課題に注目し、非行や犯罪が単なる個人の問題ではなく、社会構造と関連していることを明らかにしました。

講義の終わりには、1899年にイリノイ州で設立された少年裁判所についての説明がありました。この裁判所は、非行少年を単に裁くだけでなく、彼らの社会適応を支援する役割を担い、現代の非行少年更生システムの原型となりました。

今回の講義を通じて、アメリカ社会における移民問題が青少年非行と深く関係していること、そして社会学が非行研究に果たした重要な役割を学びました。犯罪や非行は個人の問題として捉えられがちですが、背後には社会的要因があることを改めて認識しました。今後も、非行や犯罪に対する社会学的視点を深め、現代社会の課題解決に役立てていきたいと考えています。

この貴重な学びの機会をいただいたことに感謝し、今後の勉強に生かしていきたいと思います。

中央大学法学部4年 中野 栄二