勾留請求が容易に認められてしまう問題
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- 福島みずほ君
次に、人質司法についてお聞きをいたします。
令和六年十二月九日、最高検察庁刑事部長がまさにペーパーを出しています。およそ取調べにおいては、相手方の主張や弁解に十分に耳を傾け、自白という結果に固執しないこと、誹謗中傷や罵詈雑言の類は固く禁じ、これ当たり前のことですよね。こういうことを今言わなくちゃいけないというのは極めて問題だと思います。
で、質問をいたします。
憲法三十一条などから、被疑者、被告人に無罪推定原則があります。無罪推定原則が存在する以上、本来は身体拘束されないことが原則であり、刑事訴訟法上身体拘束があり得るとしても、例外的で最終的なものと位置付けられねばならないという身体不拘束原則があるということでよろしいですね。 - 政府参考人(森本宏君)
刑事訴訟法におきましては謙抑性の原則等がございますので、任意捜査を原則とするという考え方の下に日本の刑事司法は成り立っているというのはそのとおりだと、こういうふうに考えております。 - 福島みずほ君
でも、罪を認めなければ長期間にわたって身体拘束をされること、無実であるほど保釈が認められずに、長期間勾留されて自白を迫られてしまい冤罪の温床となるということが極めて問題です。これ、見直すべきじゃないですか。 - 政府参考人(森本宏君)
身柄拘束をするかどうかに至っては、逮捕、勾留の要件を考えて、まず警察が逮捕状の請求をし、それから検察官が勾留請求を経て、裁判官の勾留を認めるかどうかという判断に従ってやっているということでございまして、その運用は適切に行われているというふうに当局としては承知しております。 - 福島みずほ君
保釈の場合に、自白をしていれば、なかなか保釈がされない。大川原化工機事件で八回、八回、がんだと分かっても八回保釈は認められていなくて、結局保釈が一度も認められないまま御本人はがんで亡くなりました。
保釈が認められない、自白をしなければ、冤罪でも自白をしなければ出られないんですよ。だから、自白を、もううそでもいいからとにかく認めて命からがら外に出るか、あるいは、一生おまえはここから出られないぞ、生きては出られないからななんて言われながらとにかく中にいるか、がんで死ぬか、どっちかなんですよ。おかしくないですか。
ドイツにおける罪証隠滅要件、罪証隠滅のおそれが認められるのは、明白な嫌疑という趣旨に沿って要求される高い蓋然性が存在する場合に限られ、具体的な事実に基づかない単なる臆測だけではこれを満たさないなどと、明らかな差し迫った危険に近い解釈がされています。ドイツの実際の運用も、二〇二一年の統計では、刑法犯全体の事件が八十二万三千五十一件、勾留は二万五千四百六十件、僅か三%、罪証隠滅勾留は〇・二%にしかすぎません。罪証隠滅のおそれというのは明らかに差し迫った具体的な危険である必要がある。
今まで、人質司法に乗っかって捜査機関は人質司法を利用してきた、裁判所はまさに人質司法の追認をしてきた。これ、今こそ変えるべきだと思いますが、いかがですか。 - 政府参考人(森本宏君)
まず、刑事訴訟法における逮捕、勾留の要件につきまして、逮捕の場合には被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときというふうにされております。そして、明らかに逮捕の必要性がないと認められる場合を除き逮捕状を発付しなければならないというものが刑事訴訟法上の定めでございまして、それに基づく運用がなされているということで、委員御指摘の具体的かつ現実的な罪証隠滅のおそれが認められる場合に限って例えばまず逮捕状の発付をすべきという趣旨であれば、そのような解釈は取っておりませんということでございます。
また、勾留の要件である被告人が罪証隠滅すると疑うに足りる理由があるときにつきましては、一般に証拠に対する不正な働きかけによって終局的判断を誤らせたり捜査や公判を紛糾させたりおそれがあるときをいうものと解されておりまして、そのおそれの程度については、単なる抽象的な危険性では足りないものとして解釈、運用されているものと承知しております。
もっとも、それが、お尋ねがその一般的な解釈、運用で求められている程度を超えた罪証隠滅のおそれが認められる場合をいうべきであるとすれば、そういった解釈は相当でないというふうに考えます。 - 福島みずほ君
それ建前で、実際は全く違って、違憲的な運用がされているんですよ。無罪の推定も、身体不拘束は極めて例外的であるべきだ。さっきのドイツの例と全く違うじゃないですか。自白しなかったら出られないんですよ。実際、統計がそれを示しているじゃないですか。これこそやっぱり変えなくちゃいけない。起訴前保釈も認められていないし、弁護人の立会いも、まあほぼほぼ、検察の場合、一度も認められていないじゃないですか。でも、やっぱり保釈の要件、罪証隠滅のおそれを抽象的に解していることが極めて問題です。
最高裁、大川原化工機事件で、がんと分かって、そしてこれ、起訴が取り消されたようなケースですよ。このケースで保釈しなかったと。問題じゃないですか。 - 最高裁判所長官代理者(平城文啓君)
お答え申し上げます。
最高裁判所の事務当局として、個別の事件の判断について、その所感を述べる立場にないため、そのお答えを差し控えさせていただきます。 - 福島みずほ君
捜査機関による人質司法の利用と裁判所による人質司法の追認、これ変えなければ駄目ですよ。
早期の再審法改正
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- 福島みずほ君
大臣、一月、ごめんなさい、三月十一日夜、狭山事件を無罪で再審請求中の石川一雄さんが八十六歳で亡くなりました。受け止めをお聞かせください。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
御指摘の件、報道で承知をしているところであります。
御指摘のいわゆる狭山事件でありますけれども、これについては再審請求がなされた事件でありまして、個別事件の当事者の方の身の上に関わる事柄につきまして、ここは法務大臣という立場でおりますので、その立場からは所感を述べることは差し控えたいと思います。済みません。 - 福島みずほ君
私は狭山事件の末席の末席の弁護人で、東京高裁で行われている三者協議などにも行ってきました。これは、門野裁判長が証拠開示で例えば取調べテープやたくさんの資料を出してくれて、新たな発見が本当にありました。でも、これは、いい裁判官に当たって証拠開示されなければ出てこないんですよ。そうでなければ出てこないんですよ。再審法における不備じゃないですか。刑事訴訟法における再審の規定の不備です。
これは、法制審議会を開くと言っていますが、もう石川さん、途中で亡くなったんですよ。一刻の猶予も許されない、一日たりとも許されないというのが再審事件ですよ。これ、議員連盟で法案を今国会中にでも超党派で出したいという動きもありますが、本当に、再審法、一刻も、一日も早くこれ改正すべきであると思いますが、いかがですか。 - 国務大臣(鈴木馨祐君)
この件につきましては、法制審の方に諮問をさせていただいているところであります。私どもとしては、しっかり充実した議論を期待したいと思いますし、その状況の中で、なるべく早期にそういった結論を出していきたいと考えています。 - 福島みずほ君
証拠開示の規定もなければ、それから検察官不服申立ての禁止もありません。
袴田さんは生きて再審無罪勝ち取りましたけれど、一刻の猶予もないんですよ。ですから、これは本当に今国会成立させるべきだと思い、法制審議会で何年も議論しましたでは済まないんですよ。そのことを強く申し上げます。一刻も早い成立をお互いにやりたいと、法務省もそれに是非一緒に協力してやっていただきたいということを強く申し上げます。うんうんと言ってくださったので、ちょっとそれを、うんうんということを強く受け止めて頑張りたいと思います。これは超党派ですが、頑張りたいと思います。