第三弾は甲南大学から2本のレポートです!
1、「ひとごと」から「自分ごと」へ
現在、私はIPJの活動に学生ボランティアの一員として参加しています。
活動に興味をもったきっかけは高校生の頃、冤罪についての本を読んだからです。冤罪の発生する原因や日本の法制度に問題点がある原因を知るためのヒントを得たいと感じIPJ学生ボランティアに加入しました。
イベントでは、初めにヒューマン・ライツ・ウォッチの代表である土井香苗先生からはHRW人質司法報告書のまとめをお聞きしました。私はあらかじめ日本語訳された報告書を読んでいたこともあり、日本の法制度が国際人権基準に違反していることを実感しました。
渕野貴生先生(IPJ理事)からは人質司法の問題点についてお聞きしました。黙秘や否認は「罪を認めない」ということだから証拠隠滅の動機があるとみなされているということ、諸外国と異なり、日本の取調べは「捜査機関の要求を呑めば、身体を解放する」といった考えのもとで行われていること、自白の強要は黙秘権の侵害であることなどがわかりました。刑事裁判の根本的なルールである無罪推定の原則が守られていないことに対して根本的なルールが守られていない現状で適切な司法手続きが運営できるはずがないという違和感を抱きました。
パネルディスカッションでは、えん罪事件の当事者である山岸忍さん(プレサンスコーポレーション元社長)の話や事件の弁護に当たった先生方の話を直接お聞きすることができました。勾留期間中に取調べを連日受けていた山岸さんは「 検察官が敵ではなく理解者のように感じるようになっていった」と仰っていました。初めは「なぜだろう」と疑問に思いましたが、シンポジウムで知った日本の拘置所の現状はまさに「人質司法」の言葉がぴったりで、そのような状況が背景にあるのだと気付きました。山岸さんの話を聞いて感じたことは、被疑者・被告人の尊厳が守られていないということでした。
エコノミストのイェスパー・コールさんからは日本の司法は不透明かつ無責任で、ルールがどこにあるのかが曖昧であるとの指摘がありました。不透明である点については、これまでも数多くの提言等はされ続けているはずです。しかし、制度面の改善がみられない理由がどこにあるのか、不思議に思いました。
誰も被害を訴えないため、人質司法が明るみになることなく「人質司法は当たり前」の現状がよくなっていないのが今の日本の現状であり、司法が変わらない原因です。人々が「ひとごと」であると考えてしまう意識が背景にあると先生方はおっしゃっていました。
また、検察の人々が有罪と思った事案が有罪であるのが彼らにとっての正義であり絶対に無罪にならないようにするというプレッシャーがあることから人権侵害を生んでしまうという深刻な問題があるとの指摘が郷原信郎先生よりありました。
「ひとごと」という意識を変えるために「自分ごと」と思えるような活動に積極的に取り組んでいこうと思います。私もえん罪問題や日本の司法の諸問題について、今回のイベントで学んだことをもとに、さらに知識を深めていきたいです。
甲南大学1回生 京本 真凜
2 スタッフとしても関わった「人質司法」イベント
6月30日に行われた人質司法についてのシンポジウムに学生ボランティアとして参加しました。
私が担当したのは会場の設営や来場者の案内です。会場はビルの一室だったので、入り口が多く少し分かりづらい場所でした。実際に会場への行き方を聞かれることも多く、案内の役割は大事だなと感じました。こういった形でこのシンポジウムに少しでも貢献できて、嬉しく思い、良い経験ができたと実感しています。案内を終え、シンポジウムが開かれてからは、控室で同じ学生ボランティアのメンバーと一緒にオンライン参加しました。
私はこのボランティア活動で人質司法を学ぶまでその言葉の意味も、こんなことが日本で起きていることも何も知りませんでした。この共同イベントのキャッチコピーは「ひとごとじゃないよ!人質司法」ですが、本当にひとごとだったのです。今回、実際に人質司法を体験されたプレサンス元社長の山岸さんの話をパネルディスカッションという形で聞くことができました。
山岸さんのお話では、長期間拘束され、1日8時間も検察官に寄り添われ、取り調べを受けたそうです。そこでは、敵だと思わせない、気付かせないような演技で近づき、黙秘が卑怯と刷り込まれ、また、家族や知人等、外の世界とも遮断された状態で取り調べを受けたそうです。私はこの話を聞き、実際にこのようなことをされると、無罪を主張したり黙秘を貫くことが難しく、嘘の自白をしてしまう人が多いのではないかと感じました。自分がそうだったように現在では「ひとごと」だと思っていて、実際に体験するまでこの現状を知らない人が多いことも、嘘の自白をしてしまうことにつながっていると考えられます。
エコノミストのイェスパー・コールさんからは国際的な視点で話を聞くことができました。日本の司法は不透明かつ無責任で取り調べの過程にルールがないことを問題点としてあげられていました。そして、それはグローバル・スタンダードではなく、この点で国際的な批判があると指摘されていました。私は、日本の司法は日本の中だけの問題と考えていた部分もありましたが、グローバルな問題として考えることも重要だと感じました。
今回のシンポジウムでは人質司法を体験された山岸さんやエコノミストであるイェスパー・コールさんだけでなく、元検察官や元裁判官の方の話も聞くことができ、良い経験になりました。私は、改めてこのプロジェクトはとても大事で素晴らしい活動だと感じました。そのような活動に学生ボランティアとして関われることは貴重な体験でした。今後も人質司法について深く学び、このプロジェクトに携わっていこうと思います。
甲南大学2回生 栗岡 周平