11⽉11⽇に京都市で開催されたシンポジウム「トクソウの再犯〜またやった!?いつもやってる?」(主催:京都弁護士会、共催:日本弁護士連合会)に参加しました。これは、取調べへの弁護人⽴会いを実現するためのシンポジウムで、弁護⼠や研究者、⼈質司法の当事者の⽅々が取調べの問題点を指摘しました。
第一部 人質司法の実態
第⼀部では、プレサンス元社長冤罪事件で、業務上横領の疑いをかけられた⼭岸忍さんと、弁護⼈を担当した秋⽥真志弁護士、⻄愛礼弁護士が登壇されました。
共犯と疑われた周囲の⼈間から順次、威迫によって罪を認めさせていく検察官の取調べの⼿⼝についてお話を聞きました。一番印象に残ったのは、山岸さんの心情の変遷です。逮捕当初は「悪いことはしていないのだからすぐ釈放されるだろう」と考えていた⼭岸さんでしたが、なかなか釈放されず、塀の中でなにもできない無⼒感や家族や会社の不安でいっぱいになっていったそうです
当事者の生の声から、密室で⾏われる取調べと⼈質司法の問題点が明らかになりました。
*参考* 山岸忍さんの人質司法サバイバー・ストーリー「太陽の見えない248日」
第二部 反省を生かす
第⼀部に引き続き秋⽥真志弁護⼠と⻄愛礼弁護⼠から、プレサンス元社長冤罪事件後の検察の対応と明らかになった課題が報告されました。
2008 年に起きたえん罪事件(厚労省元局長冤罪事件)では、最⾼検察庁が事件の検証報告書(厚労省元局長無罪事件における捜査・公判活動の問題点等について:公表版)を出したり、証拠を改ざんした検察官が証拠隠滅罪などで有罪判決を受けたりしましたが、それだけでは不⼗分だと述べて検察の対応を批判しました。西弁護士からは過去のえん罪に学び、機会・動機・正当化という不正の原因を取り除く必要があるということ、秋田弁護士からは取調べ資料の複写の許可は検察官の裁量であるなど、使⽤できる場合が限定的であることなどの指摘がありました。
*参考* 村木厚子さんの人質司法サバイバー・ストーリー 「検察官『私の仕事は、あなたの供述を変えさせることです』」
第三部 理念だけでは変われない
第⼀部の登壇者に刑事訴訟法学者の内藤⼤海教授を交え、遠⼭⼤輔弁護⼠をコーディネーターとしてパネルディスカッションが⾏われました。
厚労省元局長冤罪事件を受け、最⾼検察庁は「検察の理念」を掲げましたが、内藤教授は、それは憲法の内容を確認したにすぎず、それだけでえん罪を⽣み出す体制の是正は期待できないと指摘しました。
「健康的に⽣きよう」という理念を掲げても、「三⾷⾷べよう」「〇時には寝よう」といった具体的な⽬標がなければ理念は達成できないことと⼀緒ではないでしょうか。えん罪の防⽌には、それを実現させる具体的な法制度の改正が必要だと感じました。
シンポジウムに参加して
私は、このシンポジウムを聞いて、⼤きく⼆つの理由から、取調べに弁護⼠をつけるべきだと考えました。
⼀つ⽬は、違法な取調べをさせないためです。プレサンス・コーポレーション事件では、録⾳録画されていたのにも関わらず、威迫などの違法な取調べが⾏われていました。それに加え、その映像は世に出ることはなく、国⺠が議論することもできません。
⼆つ⽬は、実質的な当事者対等の実現のためです。現状の取調べ制度のもとでは、警察・検察の強⼤な権⼒に⽐べ、被疑者・被告⼈には最低限の権利しか与えられておらず、刑事訴訟法の原則である当事者対等主義に反します。⼭岸さんの⾔葉を借りれば、「プロVSアマ」の状態です。
取調べへの弁護人⽴会いが実現されれば、その場で違法な取調べをやめさせることや、法的な助⾔をすることができます。その実現がえん罪という、警察・検察による犯罪の“再犯”の防⽌に資すると思います。
今後もえん罪についての学習を深め、えん罪問題を知ってもらうための活動をしていきたいです。
(⿓⾕⼤学4年生 K・S)