【IPJ学生ボランティア(甲南大学)】高校でえん罪に関するワークショップを開催!

 甲南大学IPJボランティアは、昨年に引き続き、甲南高校でえん罪問題に関するワークショップを開催しました。今年は、今西事件の控訴審判決のわずか3日前というタイミングで実施され、高校生に事件への関心を持ってもらうとともに、日本の刑事司法の問題点について考えるきっかけを提供することを目的としました。

 ワークショップでは、今西事件の「強制わいせつ致傷」「傷害致死」「傷害」の各事案について、授業形式で丁寧に解説しました。特に「強制わいせつ致傷事件」についてはグループワークを取り入れ、高校生たち自身に刑事司法の原則に照らし合わせて意見を交わしてもらいました。その結果、多くの生徒が刑事裁判において有罪判決に必要な「合理的な疑いを超える証明」という基準を理解し、「無罪であるべきだ」との結論に至りました。このように、高校生たちが今西事件や刑事司法の課題について深く考える機会を持てたことは、ワークショップの大きな成果だと感じています。

 今回のワークショップに向けた準備は11月上旬からスタートしました。各事件を担当するために1回生と2回生が合同チームを結成し、発表内容を作り上げました。1回生にとっては本格的な準備に関わる初めての機会でしたが、事件の勉強段階から積極的に取り組んでくれました。また、2回生の中にも今西事件を初めて学ぶメンバーがいましたが、高校生にもわかりやすく伝えるための工夫を凝らし、1回生をしっかりサポートしてくれました。

 こうしたメンバー全員の努力により、事件や刑事司法の本質を高校生たちに伝える意義深いワークショップとなりました。

 また、このワークショップで取り上げた今西事件の控訴審では、無罪判決が言い渡されました。この判決は、大変喜ばしい結果であると同時に極めて当然の結果であると考えています。今後は、この事件に関わった者の一人として、えん罪問題についてより多くの方に関心を持っていただけるような活動に取り組んでいきたいと思います。

【甲南大学法学部2回生・藤尾幸樹】

 私たち甲南大学IPJ学生ボランティアは、11月下旬、甲南高校でワークショップを行いました。ワークショップは、IPJが支援している今西事件を通して、刑事司法の様々な問題点を高校生に教えることを目的とするもので、当日は、事件の概要を説明し、強制わいせつ致傷罪についてはグループワークも用いて理解を深めました。

 事件の概要説明では、大学生がパワーポイントを用いて事件の概要を説明しました。高校生には理解するのが難しい内容であったと思いますが、みんな真剣に話を聞き、理解に努めてくれました。グループワークでは、大学生3人と高校生3人ほどの計6人ほどが1グループとなり、自分が裁判官であったら有罪にするか否か、またその根拠などについて考えました。話し合う過程で刑事司法の原則や今西事件判決の問題点についても考えることで、より議論が活発になり、とても有意義な時間になりました。

 私はこのワークショップの準備をしていく中で、どのように解説したら高校生が理解しやすくなるかを考えることに時間を割きました。人に教えるためには自分の中の理解だけでは足りず、体系的に要点を理解していなければなりませんでした。今回の活動を通して、人に自分が伝えたい内容を適切に理解してもらう難しさと、どうすればより相手に伝わるかを考える楽しさを学びました。

 今西事件の勉強は、日本の司法制度の問題点について深く考える機会になりました。日本の刑事司法では、「無罪推定の原則」があります。無罪推定の原則とは、被告人または被疑者の有罪が確定するまでは、原則として無罪の人として扱わなければならないというものです。無罪推定の原則があるにも関わらず、被告人または被疑者が長い間身体拘束を受けたり、マスコミがまるで有罪であるかのように取り上げたりすることに疑問を覚えました。

また、日本の刑事裁判には、「疑わしきは被告人の利益に」というルールがあります。疑わしきは被告人の利益というのは、合理的な疑いを差し挟む余地のない証明を検察官がしなければ、被告人を有罪にしてはいけないというものです。私は、今西事件において、検察官が合理的な疑いを超える証明をしているかについては疑問が残ると考えています。

 日本には、これらのような私が知っているもの以外にも、多くの刑事司法の問題点があるのではないかと考えています。今回は、甲南高校へのワークショップという形で、高校生に刑事司法の問題点とそれによって人生を奪われる人が少なからず存在している現状を伝える機会になりました。これからも多くの活動を通じて現状を世間に広め、刑事司法制度改革につながれば幸いです。

【甲南大学法学部1回生・溝端一登】