IPJメンバーの安部祥太と鴨志田祐美が、誤判・冤罪や再審に関する書籍を執筆しました

 IPJメンバーの安部祥太(関西学院大学)と鴨志田祐美(京都弁護士会)が、誤判・冤罪や再審手続に関する一般向け書籍を現代人文社より刊行しました。事務局長の笹倉香奈(甲南大学)やメンバーの斎藤司(龍谷大学)も、コラムを担当しています。

 本書は、刑事司法を学んだことがない方を主に想定した一般向け入門書です。日本の犯罪捜査・刑事裁判やそこに潜む冤罪リスク、再審手続(裁判のやり直し手続)のリアルな現状をお伝えするとともに、日本に学んで刑事司法制度を構築した台湾と韓国の再審法制の改革動向をご紹介し、刑事訴訟法の再審規定を改正する必要性を多くの方々と共有することを目的としています。

 2023年に日本弁護士連合会が行った「えん罪と再審制度に関する意識調査」によると、冤罪に関心がある方は調査対象者の6割近くを占めました。しかし、再審手続の実情をよく知っている人は、4人に1人でした。再審手続の実情を知った後で、再審規定の改正が必要であると考える人は、9割以上でした。

 本書は、誤判・冤罪や再審手続に関心を寄せる多くの方にとって、「痒いところに手が届く」一冊です。日本の刑事手続、冤罪、再審のリアルな現状や、日本に学んで刑事司法制度を構築した台湾と韓国の再審法制の改革に向けた動きを知れば、再審規定を改正する必要性がお分かりいただけるはずです。それは、立法府に法改正を実現させる大きな原動力にもなるでしょう。刑事手続や誤判・冤罪問題と再審手続に関する入門書として、本書を是非ご活用ください!             

安部祥太=鴨志田祐美=李怡修編
『見直そう!再審のルール――この国が冤罪と向き合うために』(現代人文社、2023年)
本体2,400円+税、A5判240ページ
ISBN 978-4-877-98842-5
2023年7月刊行
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犯罪捜査・刑事裁判や再審制度とその問題点を知る
日本の犯罪捜査・刑事裁判は、法学部で専門的に学ばないとイメージを持ちにくいです。難しい印象を持たれる方も少なくないかもしれません。そこで、本書は、冒頭に小説を掲載し、刑事司法手続の流れをイメージしやすいように工夫しました。

 この小説は、パソコン遠隔操作事件をモチーフに京都弁護士会が製作したドラマ「なぜ人は『やっていないこと』を自白するのか?〜えん罪(冤罪)を生み続ける国、日本〜」を文章化したものです。小説の冒頭にドラマのQRコードを掲載していますので、ドラマを視聴して視覚的に理解することもできます。本書は、この小説に沿って、日本の犯罪捜査や刑事裁判、そこに潜む冤罪原因、再審手続の流れ、再審制度の問題点などを平易に解説します(Part1、Part2)。IPJとHRWが共同で取り組む「人質司法」問題にも言及しています。

 本書は、刑事司法を学んだことがない方を主に想定した一般向け入門書です。しかし、Topic、Further Lesson、Columnを挿入することで、より幅広い知識を得られたり、専門的知見を深められる内容を目指しました。新証拠の明白性に関する議論や、再審請求審と再審公判の関係など、専門的で難解な内容にも言及して議論を整理しています。誤判・冤罪や再審手続に関心をお持ちの方はもちろん、高校の「総合的な探究の時間」で課題探究を行う方や、法学部や法科大学院で学ぶ方など、様々な方にお役立ていただける内容です。

誤判・冤罪の身近さを知る
 映画「それでもボクはやってない」をきっかけに、痴漢冤罪を身近に感じる人は少なくないでしょう。しかし、報道では、重大事件の誤判・冤罪事件が特に注目されます。誤判・冤罪に関心がある方でも、どこか他人事のような感覚を拭えないかもしれません。

 本書では、統計を踏まえて、誰もが行い得る過失犯や交通事件、企業犯罪や政治事件などでも再審手続が用いられていることをお示しします。誤判・冤罪が、実は身近で他人事ではないとお分かりいただけるでしょう。

再審規定改正の必要性を知る
 日本の再審請求事件で実際に起こった問題点を示し、再審関連規定を改正する必要性を指摘します。また、日本の法制度に倣って刑事司法制度を構築した台湾と韓国の改革動向を紹介します(Part3)。台湾と韓国から日本が学ぶべきことが浮き彫りになり、日本の再審関連規定を改正する方向性や、我々が考えるべきことが見えるでしょう。

安部祥太(あべ しょうた)


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