ニュースレターvol.7を配信しました!

「ひとごとじゃないよ!人質司法」プロジェクト始動! 

 6月30日、イノセンス・プロジェクト・ジャパン(IPJ) ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)の共同プロジェクト「ひとごとじゃないよ!人質司法」が始まりました!IPJとHRWは、これから数年かけて、えん罪の原因にもなっている日本の「人質司法」と呼ばれる刑事司法のあり方を改革していくことを目指し、ともに活動していきます。プロジェクト始動に合わせて、 特設サイトを公開しました。今後、このサイトにプロジェクトに関する最新情報を掲載していきます。ぜひブックマークしてください。
 一緒に、「ひとごとじゃないよ!人質司法」を広めていきましょう!Twitterでのハッシュタグは、#ひとごとじゃないよ人質司法、#EndHostageJusticeJapanです。本プロジェクトの名称にもなっている「ひとごとじゃないよ!人質司法」の誕生秘話は こちらから。

ひとごとじゃないよ!人質司法のパネル

立ち上げイベント「人質司法を考える」は大成功!

 2023年6月30日、「ひとごとじゃないよ!人質司法」プロジェクトの立ち上げイベント「人質司法を考える」を大阪にて開催しました。
 会場には約90名の皆様がお越しくださり、ウェブでは100名以上の皆様にご視聴いただきました。衝撃的な人質司法の体験談、弁護団の苦悩と奮闘、そして人質司法が日本のビジネスにもたらす弊害が熱く語られ、会場は一体感に包まれました。プレサンス・コーポレーションの元社長で、人質司法のサバイバーでもある山岸忍さんの飾らない語り口が何より魅力的で、あっという間の2時間でした。
 イベントの アーカイブ動画を公開しています。IPJのこれまでのイベント動画と合わせて、ぜひご覧ください。

「ひとごとじゃないよ!人質司法」を合言葉に、終了後、参加者と集合写真を撮影しました!

アンケート

 参加された方々にアンケートをお願いしたところ、「非常に満足」と「満足」で合計約95%という高い評価をいただきました。以下は、いただいたご感想の一部です。

・「自分の身に何かあったら、取り調べには真摯に答えよう、それが善良な市民だ!」と信じて疑っていませんでした。人質司法について聞くようになって、黙秘することの大切さを感じています。
・ひとごと…ではない、いつ自分が当事者になるか分からない。
・日本には「プロセスとルールがない」との指摘に納得しました。
・「まいにち検事と話をしたいと思っていた、取り調べがない日はつらかった」「弁護士より検事が信頼できると思っていた」など、山岸さんの率直な口調での体験談はとても迫力があった。
・「ひとごと」ではなく「我が事」として身近な人にも訴えたい。
・深刻な話しなのにユーモアを混ぜながら伝えてられていて理解しやすかった。
・本当に「ひとごと」ではないと感じられ、今後もっと多くの人に認識してもらい、早く法改正をしてほしいと思いました。
・人質司法の問題点が法学者、人権団体、被疑者、ビジネスマンと多角的な視点で捉えられ、立体的に浮かび上がった。

 ご参加くださった皆様、本当にありがとうございました!また、イベント開催にあたってご協力をくださいました下記の皆様にもお礼申し上げます。
■プレサンス元社長えん罪事件弁護団
■龍谷大学 刑事司法・誤判救済研究センター
■KONAN(甲南大学)プレミア・プロジェクト「多分野の力を集結して「えん罪救済」に取り組むプロジェクト」

▼ 次回イベントのご案内
 この秋に東京で、「人質司法サバイバー国会」を開催予定です。人質司法を生き抜いた方々と手を取り合って、「ひとごとじゃないよ!人質司法」を力強く訴えるべく企画を進めています。どうぞご期待ください。

学生ボランティアが大活躍

 今回のイベントにも多くの学生ボランティアが駆けつけ、案内・受付・設営・タイムキーパー・撮影などスタッフとして大活躍してくれました。また、終了後はオンライン視聴の学生ボランティアも含めて多くのレポートが届きました。その一部をご紹介します。

1)立命館大学

 今回のシンポジウムは、僕にとって、人質司法を本格的に見つめる初めての機会でした。
 拷問のような尋問はひと昔前で、今やドラマの中にしか存在しないと思っていました。
 パネルディスカッションでは、山岸忍さんの実体験から問題に切り込んでいて、生の声を聞くことができたので、とても貴重な経験ができたと思います。
 また、イェスパー・コールさんを交えたディスカッションパートでは国際的な視点にまで展開されていて、問題の多面性に驚きました。
 現在僕は法学部で法律学や政治学を学んでいるので、そこでの学びも大切にして、より深くこの問題について考えられるようになりたいと思いました。(全文は こちらから)

2)中央大学

 私は、中央大学法学部に在籍しながら獨協大学IPJ学生ボランティアと一緒に活動を行っています。6月30日に行われたHRW.IPJ第1回シンポジウムをオンラインで視聴し、人質司法について次のように考えました。
 人質司法の現状と国際基準は乖離しており、捜査過程では、弁護人の立会いなく被疑者などが取調べられるため、人権侵害や自白の強要による冤罪は、いまだに無くなっていません。否認、黙秘などをしていると保釈されない日本の司法の現状を変え、国際基準の適正な手続きが必要です。
 今回のシンポジウムで発表されたキャッチフレーズ「#ひとごとじゃないよ!人質司法」にもあるように、この問題を自身のことと考えて、多くの方に情報発信をしてもらえるよう活動していきたいと思います。(全文は こちらから)

3)甲南大学

 6月30日に行われた人質司法についてのシンポジウムに学生ボランティアとして参加しました。
今回のシンポジウムでは人質司法を体験された山岸さんやエコノミストであるイェスパー・コールさんだけでなく、元検察官や元裁判官の方の話も聞くことができ、良い経験になりました。
 私は、改めてこのプロジェクトはとても大事で素晴らしい活動だと感じました。そのような活動に学生ボランティアとして関われることは貴重な体験でした。今後も人質司法について深く学び、このプロジェクトに携わっていこうと思います。(全文は こちらから)

刑事弁護OASISとのタイアップ

 刑事弁護に関する的確な情報を広く市民に提供し続けてきた 刑事弁護OASISが、「ひとごとじゃないよ!人質司法」プロジェクトとタイアップすることが決まりました。
 イベント「人質司法を考える」には、プロジェクト始動とタイアップ決定を記念して、素敵なトートバッグを提供していただきました。

IPJサポーター募集中!

 えん罪は過去のものではありません。支援を受けることができずに苦しんでいる方が、まだまだ多くいらっしゃいます。IPJは、えん罪被害者が適切な支援につながるための窓口となることを目指して活動しています。
 皆様からのご寄付により、「人質司法を考える」イベントではIPJのリーフレットを配布し、多くの方にIPJの存在を知っていただくことができました。また、今西事件の概要を紹介するリーフレットも作成することができました。心よりお礼申し上げます。

専門家によるコラムがスタート!

 様々な分野の専門家から成るIPJメンバーが、えん罪の原因や刑事司法制度の課題などについて語るコラムを本格的に開始しました。今月は、平岡義博(元科学捜査研究所主席研究員)による韓国調査旅行記と、浜田寿美男(発達心理学)による袴田事件における自白の問題を掲載しています。ホームページで全文をお読みいただけます。

1)韓国の科学捜査がすごい!

 韓国調査旅行記の第一回は、警察大学を取り上げた。この韓国警察大学の最大の特徴は、一般市民が受験して入学できる超難関の国立大学で、警察幹部育成のために設立された大学という点にある。同大学は併設の研究所とも連携して、法科学や情報科学に関する警察官への教育システムを確立している。(全文は こちらから)

2)袴田事件:自白こそが最初の、そして最大の「証拠偽造」だった

 確定死刑囚の再審開始決定は1989年の島田事件以来、33年ぶり。「快挙」ではある。しかも、捜査側の証拠偽造を認めたのは、まささに画期的である。しかし、振り返ってみれば、そもそも当時の取調官たちが袴田巌さんから「自白」を搾り取ったこと自体が「証拠偽造」ではなかったか。そして偽造されたこの自白が袴田さんを長く確定死刑囚として獄に縛りつけ、その精神を破壊してしまった事実を思えば、ただ単に「快挙」と言って喜んではいられない。この大冤罪を引き起こした原因にまで踏み込んだ再審無罪の判決を期待したい。(全文は こちらから)

IPJ活動報告

(1)新規支援申込……6月2件(6月末現在)
(2)審査中の事件……32件
(3)支援中の事件……4件
 チーム制による新たな審査体制のもと、毎月の審査会議は順調に進んでいます。また、審査手順をより適正で透明性のあるものにすべく、検討を重ねています。

今西事件最新情報

 2023年6月15日、第2回公判期日が開催されました。
 控訴審の審理では異例の大法廷での審理でした。大勢の支援者が駆け付け、傍聴席は今西貴大さんを見守る方々で埋め尽くされていました。
 この日は、強制わいせつ致傷被告事件に関し、検察側から皮膚科の医師、消化器外科兼小児外科の医師の合計2名が、弁護側からは元皮膚科医で肛門外科の医師が証人として出廷しました。
  強制わいせつ致傷被告事件の争点は、A子ちゃんの肛門周囲の傷から今西さんが異物挿入を行ったといえるのかという点です。
  A子ちゃんの肛門の外側には、あかぎれのように割れたような傷が1cm程度ありました。この傷の写真のみから、今西さんが異物挿入を行ったといえるのかが争われています。
 弁護側の医師は、A子ちゃんが皮脂欠乏症等の診断も受けており、写真からも明らかに皮膚が荒れている状態であったことを踏まえれば、肛門周囲も乾燥して伸縮性のない突っ張った皮膚の状態であった可能性があり、おむつを替えるときに足を持ち上げる、トイレットペーパーで拭く等する、そういったことがなくとも自然にあかぎれの様な皮膚亀裂が生じた可能性があると指摘しました。実際の診察でもウォシュレットでの洗い過ぎなどによりA子ちゃんの傷と同様の傷ができている患者さんを何人も診てきたとのことでした。
 これに対し、検察側証人の皮膚科の医師は、垂直方向に皮膚に力が加わったと証言していましたが、弁護人の反対尋問の際には、実際のところ、A子ちゃんの傷がどのようにしてできたのかはわからないとも発言していました。検察側証人の消化器外科の医師は、肛門付近に物を押し当てて入れようと左右に広げた際に生じた傷ではないかと証言しました。これまで検察官が主張してきた傷のでき方とは全く異なる見解でした。
 今西さんがA子ちゃんの肛門に異物挿入をしたというにはあまりに根拠が乏しいことが明らかになったと思います。
 期日後の支援の会への報告会でも、弁護側が優勢であったように感じた、今西さんの異物挿入は立証できていないと感じたなどの感想をいただいています。

次回期日

 10月26日10時30分から大阪地方・高等裁判所201号法廷で実施されます。傷害致死被告事件に関して、検察側・弁護側双方から放射線科の医師が証人として出廷します。次回の争点は、A子ちゃんのCT画像から、何が言えるのかという点です。

今西事件リーフレット

今西事件を分かりやすく説明する三つ折りリーフレット(ver.2)を作成しました。ご希望の方は、 IPJ事務局までお知らせください。

学生ボランティアの活動

 月に1回の広報会議を行う中で、大学同士の交流も深まってきました。大学ごとに活動内容や課題は様々ですが「えん罪のない社会に向けて」という共通した目標のもと、一緒に成長しているようです。
 ホームページでは学生ボランティアの活動を紹介しています。6月は多くの学生ボランティアを擁する甲南大学から、活動の活性化のための新たな取り組み、一年生を対象とした裁判傍聴ツアー、専門家を招いての講演会についてレポートが届きました。生き生きとした学生の様子が伝わる写真もありますので、ぜひ 全文をお読みください。

編集後記

・審査体制の拡充やホームページの更新、そして「ひとごとじゃないよ!人質司法」プロジェクトの始動など、IPJの活動が大きく広がってきた2023年度上半期でした。再審問題への関心も高まる中、歩みを止めることなく活動を続けていきたいと思います。
・IPJでは広報活動を手伝ってくださるボランティアを募集しています! 動画や音声の編集、ライティング、デザインができる方など、IPJにお力を貸していただける方はぜひ ご連絡ください。