【学生ボランティア(獨協大学)】裁判傍聴に行ってきました!

 獨協大学IPJ学生ボランティアでは、7月11日にさいたま地方裁判所へ裁判傍聴に行きました。今回の裁判傍聴は、新しく中央大学からIPJ学生ボランティアに入会した新メンバーと行う、初の他大学との対面合同イベントとなりました。今回、私たちが傍聴したのは、拐取者身の代金要求・同取得罪という人を連れ去り家族に身代金を要求したとされる事件の裁判員裁判でした。

 刑事裁判の手続きは、冒頭手続、証拠調べ手続、弁論手続という大きく3つの手続に別れて進行し、これらの手続の中で被告人に対する審理が行われ、最終的に判決が下されます。裁判員裁判では、裁判員がこれらの審理に立ち合い、被告人が有罪か否か、有罪だとしたらどのような刑にするべきかを判断することになります。

 私達が傍聴したのは、この手続のうちの、冒頭手続と証拠調べ手続の冒頭陳述部分でした。冒頭手続では、人定質問、起訴状朗読、黙秘権告知、被告人の意見陳述が行われます。冒頭陳述では、検察官がこれから証拠によって証明しようとする事実を述べ、次に弁護人が証明しようとする事実やその他の主張を述べます。その後、冒頭陳述で述べられたことが、書面や証言などを用いて立証されることになります。

 私はゼミで模擬裁判(裁判員裁判を想定したもの)を行ったことがあり、そこで学んだ手続きの流れを反芻しながら傍聴することができました。今回傍聴した裁判は、私たちが模擬裁判で行ったものよりも、多くの人物が登場し、時系列や場所など、とても複雑でした。しかし、そのような中でも、検察官と弁護人のそれぞれが裁判員に向けて、一つ一つ詳細に、わかりやすく事件の概要や争点を説明し、手続きが進められているように感じました。特に、冒頭陳述において、検察官が裁判員に、人物の相関図や時系列を整理した書面を配布し、それを示しながら説明し、弁護人も被告人の主張に基づいた文書を作成して説明している姿がとても印象的でした。

 また、弁護人が、裁判員に向けて、被告人が有罪か否かは、検察官によって「合理的な疑問を残さない程度の証明」がなされたかどうかで判断するよう強調していました。この「合理的な疑問」とは、私達の常識に基づいた疑問を指します。常識に照らして、検察官の立証に少しでも疑問が残る場合は無罪、疑問の余地はないと確信できる場合は有罪と判断することになります。無実の人に対し、有罪判決を言い渡すことはその人の自由や権利を不当に奪い、人生を大きく狂わせることになります。そのため、被告人は無罪と推定され、検察官が十分な証明ができなければ、有罪とすることはできないものとされています。弁護人がこの原則を強調している姿を見て、なんとなく怪しい、かもしれないといったことのみで事実を認定してはならないことを実感しました。 

 私はこれまでにも裁判傍聴に何度か行っているのですが、その度にこれが現実で起こっていることなのだと強く意識するようになりました。ドラマや映画の話ではなく、現実に事件が起きて、それに対する裁判が行われています。だからこそ、いい加減な審理や判決がなされてはいけません。裁判の結果は、被告人の人生だけでなく、被害者の人生も大きく左右します。適正な手続のもと、証拠をもって審理を尽くし、事実を明らかにすることが重要なのだと改めて感じました。

 この記事を読んで下さっている皆様の中には、裁判と聞くと難しい印象を持たれる方がいらっしゃるかもしれません。確かに、法律用語やそれに関わる知識が出てくるため、一概に簡単とは言えません。しかし、実際に裁判で争われるのは、ほとんどが私達の日常生活で起こったことが中心なので、何が起こって何が争点となるのかイメージしやすいかと思います。特に、裁判員裁判は、裁判員の方達に向けて、検察側・弁護側それぞれがわかりやすく説明してくれるため、法律的な知識を持たない人でも理解がしやすいです。裁判員裁判は、それぞれ地方裁判所のホームページにて開廷期日が掲載されているので、気になった方や興味のある方は、是非、一度足を運んでみてください。

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獨協大学4年生 S.Y.