【学生ボランティア(甲南大学)】DNA鑑定実習レポート その2

甲南大のメンバーが、甲南大学のフロンティアサイエンス(FIRST)学部・研究科が主宰した学内交流企画で、DNA鑑定実習に参加しました。JST次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)第1回文理融合ワークショップ「生命化学×えん罪」 実験講座として開催されたものです。
参加したメンバーのレポート第二弾です! *この投稿は、甲南大学・地域連携センターに掲載したレポートを、許可を得て一部修正のうえ、転載したものです。

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甲南大学フロンティアサイエンス学部(ポートアイランドキャンパス)での「生命科学×えん罪」実験講座に参加してきました。内容は、実際にDNA鑑定を行ってみるものでした。法学の勉強をする中で、犯人の特定や親子関係の証明に用いられるDNA鑑定がどのような方法で行われているかを実際に目の当たりにすることで、より知識を深めようと思い参加しました。
 
今回の実験では、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と電気泳動法を用いて遺伝子鑑定を行いました。PCRという言葉は、新型コロナウイルス感染症の検査でも聞いたことがありました。DNAが細胞の中で複製されることを応用して特定の領域の遺伝子を増幅するものです。元となるDNA資料に、DNAプライマーとDNAポリメラーゼを入れて加熱、冷却、加熱を行い、DNAを増幅します。この技術を用いて、DNA型のウイルス感染や遺伝病、遺伝子組み換えの検査や、古代生物の研究などにも行われています。

次に、PCRによる生成物の電気泳動です。PCRで増幅したDNAを確認するために、ポリアクリルアミドゲル電気泳動を行いました。個々のDNA片の分子量の大きさの違いを利用するものです。分子量が大きければゲルの網目に引っかかりやすく、分子量が小さければすき間を抜けやすいので、 電気を通して移動距離が異なることを利用している手法です。

実験は、外の空気や人の体に触れてしまうと結果が変わり失敗するため、気が抜けませんでした。さらに、扱うものの単位が1㎖の千分の一の単位だったので、ひとつひとつの手順をとても丁寧に行う必要がありました。
 
実験の合間に、ポートアイランドキャンパスの中を案内していただきました。一定の温度をキープしている部屋や、電子顕微鏡などの名前だけは知っているような大きな器具の見学をしたり、現役の院生の方から今行っている研究がどのようなものか分かりやすく教えて頂いたりしました。DNAには二重らせんだけでなく三重、四重らせんのものもあるなど、色々なお話も聞くことが出来ました。実験室にもお邪魔させていただくなどこのような機会がなければ、知っていても見たことすらないようなものをたくさん見学することが出来ました。普段とは違う教室などの雰囲気は新鮮でとても楽しかったです。

実験が終了して、ひとまず結果がしっかり出たので、実験中の大きなミスが無かったことに安心しました。自分のDNA型を他の人と比べたとき、確かに違っていました。当たり前の話ですが、この違いが大切ということです。

DNA型が同じなのは、一卵性双生児を除けばありえないそうです。DNA型は兄弟姉妹であっても、同じになることは確率でいうと18兆分の一以下という途方もない数になります。このことから、赤の他人が同じDNA配列をしている可能性は0といっても過言ではない確率になるそうです。となると、法学的視点から見れば、これは非常に重要な情報であり、被疑者や被害者が犯罪現場とのかかわりがあるかを確実にする科学的な証拠になります。

しかし、ここで注意しなければならないのが、そのDNA型を採取する際に適切な収集をしているか、そして証拠として鑑定を行うまでに適切な管理が出来ているかという点です。ドイツでは、捜査に用いる綿棒に製造工場の従業員の毛がついていたため、各地の捜査でその従業員のDNA型が犯人のDNA型として扱われ、架空の連続犯罪者が誕生したこともあります。今回の実験は実験室の整えられた環境で行いましたが、実際の証拠収集では、地面や雨、体液などで汚れていたり、公共の場であれば他人の毛などを誤って収集したりする可能性があるのではないかと疑問が湧きます。そのため、証拠収集の際の問題が無いことも証拠能力を認めるための一つの基準として設ける必要があるのではないかと感じました。また、裁判員裁判などでは、法学だけでなくこのような自然科学の専門知識が新たに必要となると、裁判員の負担や拘束時間が新たな問題になるのではとも思います。

こうして遺伝子鑑定がどのような手法、工程で行われて、その鑑定の科学的な裏付けがあるかを自ら体験することでより理解することが出来ました。DNA鑑定と言っても細かくどのような事をしているのか知らなかったところが、例を挙げれば足利事件についての最高裁決定をより深く理解することが出来ました。 実験自体が非常に興味深いものであったと同時に、自然科学にも近づくきっかけになる一日でした。この熱が冷めないうちに、法学だけではなく、自然科学的な視点を身に着けてさらに勉強していきたいなと思いました。

 このような場を設けて実験を経験させていただきかつご教授いただいたフロンティアサイエンス学部の川上純司先生、村嶋貴之先生、赤松謙祐先生、松井淳先生、博士課程のティーチングアシスタントの皆さま、ありがとうございました。


甲南大学3回生 梶田 裕貴