【学生ボランティア(中央大学)】人質司法サバイバー国会レポート

人質司法サバイバー国会と冤罪被害者支援

はじめに

私は刑事事件(特に冤罪事件)に興味があり、学部でも刑事系及び憲法科目に力を入れて学習しています。今年度からイノセンス・プロジェクト・ジャパン獨協大学学生ボランティアと合同で活動しています。令和5年(2023年)11月10日に参議院議員会館で開催された人質司法サバイバー国会に学生ボランティアとして参加してきましたので報告します。

刑事収容施設と医療

身体拘束という重大な権利制約がある中で、杜撰な捜査と証拠により逮捕、勾留された大川原化工機事件の技術顧問の相嶋 静夫さんは、保釈請求が認められず、進行胃がんと診断され、適切な医療も受けられずに令和3年(2021年)2月7日に死去されました。

刑事収容施設における医療については、刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律第56条が「刑事施設においては、被収容者の心身の状態を把握することに努め、被収容者の健康及び刑事施設内の衛生を保持するため、社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」と定め、さらに、同法第62条1項は、被収容者が「疾病にかかっているとき、又はこれらの疑いがあるとき」には、刑事施設の長は、「速やかに、刑事施設の職員である医師等による診療を行い、その他必要な医療上の措置を執るものとする。」とし、同3項は、「必要に応じ被収容者を外の病院又は診療所に通院させ、やむを得ないときは・・・入院させることができる。」と定めています。

相嶋さんは、大学病院を受診しても「刑事被告人」であることを理由に検査すら受けることが出来なかったそうです。それだけでなく、胃がんに関する診療が行われない拘置所の医療レベルの低さを息子さんが切実な思いで語ってくださいました。

社会一般の病院や診療所に求められる医療水準と同程度の医療を提供することが法律に定められているにもかかわらず、「刑事被告人」という理由で検査や診療が拒否されることは、到底許される問題ではないと感じました。

令和3年の通常地方裁判所の第一審における被告人の保釈率は31.4%と非常に低いデータが出ています。

相嶋さんも、保釈されず適切な医療も受けられないまま、お亡くなりになられたと思うと胸が締め付けられる思いがしました。

国会議員の先生方には、起訴前保釈だけではなく、取調べの弁護人立会いの制度化などを法務委員会で審議していただけることを切に願います。

冤罪被害者支援

人質司法の中で被疑者・被告人は、たとえ無実であっても自由を得るために虚偽自白をするか、あるいは、無実を貫くために自由を犠牲にしてでも否認や黙秘して争うかという不条理な選択を迫られることになります。

今回の人質司法サバイバー国会では、学生ボランティアの一員としてスピーチのタイムキーパーも務め、約20組の当事者やご遺族の声を間近で聞くことができ、人権と保釈のあり方について学ぶことができました。

イノセンス・プロジェクト・ジャパン学生ボランティアで、これからも同じ目標を持った仲間たちと活動を続けたいと思っています。

中央大学法学部3年生 中野 栄二