【学生ボランティア(甲南大学)】人質司法サバイバー国会参加レポート

甲南大学からは、7名が、夜行バスや新幹線で人質司法サバイバー国会に駆けつけて、イベントの運営サポートをしてくれました。法学部1回生の中西愛実さんが、参加した感想を書いてくださいました。是非お読みください。

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 11月10日に東京にある参議院議員会館で人質司法サバイバー国会があり、学生ボランティアとして参加しました。私は法学部に入ってIPJの学生ボランティアになるまで人質司法についてどころか、えん罪という言葉も聞いたことがありませんでした。ですから、えん罪について全く考えたことがなく、もし知らずに説明を受けたとしても自分には関係ないと人ごとにしていたと思います。

 今回のイベントが、学生ボランティアとして初めての大きな活動でした。参加した理由は、実際にえん罪の被害に遭われたサバイバーの方、そして今もなお戦っておられる方から直接お話を聞けるのは貴重な機会だと思ったからです。 イベントがスタートすると数々の議員の方やメディアの方がいらっしゃったので、緊張と不安で担当だった係の仕事をあまり全うすることができませんでしたが、同じ学生ボランティアとして参加していた先輩方のサポートもあり、なんとかやり遂げることができました。

 サバイバーの方のスピーチは、本当に胸が苦しくなるばかりで非常に辛かったです。無実であるのに被疑者の自白を獲得しようと取調べを行い、身体を拘束し、体力だけでなく自由も奪い、収容されている部屋には日も当たらない、お風呂にもあまり入れない。そして、特に私が驚いたのは、病気であるにも関わらず適切な治療を受けることができないというお話でした。無実であったことが判明しても謝罪することもなく、拘束された時間も戻って来ない。誰も責任も取らない。こんなことが実際に起こっているということはあり得ないと思いました。そんな現状を変えようとして、思い出すだけでも辛く悔しい経験を、時に涙ぐむのを抑えながらお話してくださるサバイバーの皆さんのお話を決して無駄にしてはいけないと思いました。

ある方が、日本だけでなく世界に発信するべきだと主張されていました。私も同意見で、えん罪で苦しむ方を増やさないためにもたくさんの方に知っていただく必要があると思います。

 これからも学生ボランティアとして活動することで、少しでも皆さんの力になることができましたら幸いです。このイベントに参加できたことは、自分にとってプラスになり、とても有意義な時間になったと思います。貴重な機会を設けてくださり、ありがとうございました。

【甲南大学法学部1回生・中西愛実】

 11月10日に開催された「人質司法サバイバー国会」に、IPJ学生ボランティアとして参加しました。実際に冤罪事件の被害者になった方や、そのご家族の方など、沢山のサバイバーのお話を聞くことが出来ました。
 

 何人かのサバイバーは「自分は本来ここに居るはずではなかったと」おっしゃっていました。サバイバーの皆さんは、本来であれば逮捕されず、いつも通りの日常生活を送っていたはずです。しかし、ある日突然無実の罪で逮捕・拘留されました。この言葉を聞き、まさに人質司法が「ひとごと」ではないと感じました。

 勾留時に体調不良を起こしても適切な治療を受けさせてもらえないということも、多くの方が話されていました。もし、勾留中の方に適切な治療を受けさせずにそのまま亡くなられた場合、どう責任を取るつもりなのだろうと思いました。同時に、そのような責任自体取らないのではないかとも思いました。

 サバイバーのお話を聞いているだけで辛く苦しい思いになりました。そのような経験を、伝えて頂いたことに深く感謝しています。また、多くのメディアの方がいらっしゃっていたので、サバイバーの言葉を広く社会に伝えることができるのではないかと期待しています。一度に沢山の冤罪被害者のお話を聞くことが出来た、非常に貴重な機会でした。冤罪は絶対に無くすべきであるという思いがより一層強くなりました。

【甲南大学法学部2回生・藤井春奈】

 参議院議員会館で行われた人質司法サバイバー国会にIPJ学生ボランティアとして参加しました。

 私は6月に大阪で行われた人質司法のシンポジウムの内容を受けて、人質司法問題に興味を抱きました。前回のシンポジウムでは司法が変わらない原因として市民が「ひとごと」であると考えてしまう心理が根底にあるとの話があり、その心理を変えていくために、周囲の人々に伝えていくことが重要であることを学びました。

 今回のイベントの中では、史上初となる人質司法サバイバー当事者の方々20名から、実体験を基にしたスピーチをお聞きしました。内容は常軌を逸するもので、人質司法の内容をありありと描き出すものでした。

 日本の法制度に対しての「裁判が始まる前に罰を受けることへ対する違和感」や、この10年間の刑事司法改革の中で、録音録画の義務化が一部の事件で導入されたので改善したかと思っていたけれども、逮捕後の取り調べの対策はされておらず、自白を引き出すような態度は変わっていないので結局は取り調べと自白に頼っている捜査機関の現状があるとの話が冒頭にありました。長期間の勾留や自白を強要する捜査機関の問題点についても、多くの方から話を伺いました。

 私は、事前準備として会場内の資料設置やイベント参加者の誘導を行うだけでなく、当日連絡係として、議員の方々の退出時間をお伺いしたり、スタッフ間の連絡を伝達する役割を担当しました。述べ190名(国会議員8名メッセージをお寄せいただいた国会議員4名)の方々が参加したと伺い大きなやりがいを感じました。

今回のイベントのなかでも法制度改革を行うべきとの提言が多く見受けられました。私が参加したことのある日本弁護士会主催のシンポジウムや多くの文献の中でも司法制度改革の提言はされていました。多くの提言がされているのにも関わらず、現状において日本の法制度改革は順調に進んでいるとは言えません。原因とされる「えん罪を他人事として考えてしまう意識」を変えることは容易なことではないと考えられます。この意識を変えていくことでえん罪問題は今よりも身近なものとなり、一般の人が声を上げやすくなると思います。私自身、現状を改善していくために、今回のイベントに参加した経験を周りのIPJのメンバーに伝えていきたいと思います。専門家の方だけでなく当事者の方から話を伺っていく中でえん罪問題に触れていく中で、日本の法制度改革を取り巻く環境に対する言葉では言い表すことが困難な違和感が募っています。えん罪が発生してしまう原因として捜査機関や人々の「えん罪は私には関係ない」といった意識、立法機関、あるいはそもそも「えん罪問題」について知らないといった知識の差が原因であるのではないでしょうか。ニュースでは逮捕された人物をよく報道しています。しかし、その中には報じられていないえん罪によって苦しんだ人々の存在が隠れています。この活動から学んだ知識を深めていき、様々な刑事施設への見学にも参加していきたいと強く思いました。

【甲南大学法学部1回生・京本真凛】