この度、韓国に続き台湾の法科学情勢を視察してきたのでその概要を報告する。この視察は台湾国立中央警察大学の林裕順教授の取り計らいにより実現したものである。
法科学関係の組織と体制
台湾の法科学研究所は、警察機関だけでなく検察庁にも存在する。そして検察庁の法科学研究所の方が、国内で最も権威のある指導的な研究所なのである。実際の捜査も地方の検察署(日本の地方検察庁)の検察官が采配し、鑑定の必要性に応じて鑑定依頼先を指示する。
直轄市(臺北市、新北市、臺中市、臺南市、高雄市、桃園市の6市)の警察局管内の事件の鑑定はその警察局の刑事鑑識センターで、県市警察局(16市)の事件ではその鑑識課が採取した資料を、警政署(日本の警察庁)の刑事鑑識センターで鑑定が実施される。
- 薬毒物鑑定
薬毒物は「毒品鑑験分工表」により1級~4級に分類され、薬物の押収量によって5段階(1g以下~100g以上)に区分されている。これは、薬毒物の種類と押収量によって量刑が異なるためである。
- DNA型鑑定
事件が発生すると、地方の警察局が事件現場の資料を採取し、地方の検察署が鑑定嘱託を指示する。変死事件の遺体の解剖は、地方検察署の法医学病理検査室で実施され、殺人事件など重要事件では法務部法医研究所で解剖される。
鑑定の分担はDNA資料採取条例 (2012)に基づき次のように実施される。
以上のように、台湾の各法科学研究所は法務部の法医研究所・調査局を含め、事件の鑑定実務を日常的に実施しており、研究が主業務とする日本の国立科学警察研究所とは基本的に異なる。
平岡 義博(ひらおか・よしひろ)
ー(2)に続く