【ニュースレター】vol.37を配信しました!

新年のご挨拶

IPJ理事長・理事・事務局長・委員長から、年頭のご挨拶を申し上げます。

理事長 石塚 章夫

年頭にあたって

 イノセンス・プロジェクト・ジャパンの活動にとって、今年は大きな山場を迎えることになりそうです。昨年は、当法人が支援していた今西事件について逆転無罪判決が出されました。弁護団の活動のほかに、接見や法廷傍聴等の支援活動が実を結んだものです。また、袴田事件の無罪判決や福井女子中学生殺人事件の再審開始決定、大川原化工機事件やプレサンス事件での身柄拘束と取調問題等、再審手続と人質司法についての関心がひと際高まっています。支援事件に引き続き取り組むと共に、再審と取調についての立法問題にも積極的に参加して行きたいと思います。皆様のご支援をお願い致します。


理事(財務担当)渕野 貴生

安定的な財政基盤の確立に向けて 

 昨年も、多くの方からご支援を賜りましたことを改めて感謝いたします。雪冤を果たすべき事件に対して積極的かつ躊躇なく支援を行うためには、財政的な裏付けが必要不可欠です。本年も、継続的に支援していただける方を増やすための取り組みを進めていきたいと考えております。また、本財団は現在、一般財団法人という組織形態を取っていますが、本年は、公益財団法人化に向けた具体的な準備を進めていきたいと考えております。公益財団法人化は、安定的な財政基盤の確立にとっても大きなメリットがありますが、他方で、一定の財政基盤が確立していることが公益財団法人化の前提条件でもあるというジレンマがございます。皆様には、一層のご支援を賜りますよう、引き続きよろしくお願いいたします。


理事(審査担当) 川﨑 拓也

充実した審査で支援につなぐ

 明けましておめでとうございます。
 昨年は、IPJ支援事件である今西事件で、大阪高裁において、逆転無罪判決が下されました(後に検察官による上告申立)。慎重に審査した結果、支援決定に至った事件が、こういった形で実を結んだことは、審査委員会としても格別の喜びがありました。
 審査委員会では、昨年も慎重に審査を進め、さらなる支援決定をして参りました。今年は、これらの事件が、再審請求や高裁での判決等の新たな局面を迎えることとなります。
 継続的に支援決定ができるよう、審査委員会では複数の目で多角的な視点から雪冤の可能性を検討して参ります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。


事務局長 笹倉 香奈

えん罪救済の波をさらに広げたい

 2024年は、IPJが支援する今西貴大さんが大阪高等裁判所で逆転無罪の判決を得ました。緒方秀彦さんの神戸質店事件では、再審請求の準備が進められています。支援事件は1件増え、5件になりました。支援事件につきまして、早く無罪判決を確定させるとともに、さらにえん罪救済の波を広げられるよう、メンバーと学生ボランティア一同、まい進してまいります。

 人質司法や、再審法改正の問題にも社会の注目が集まっています。IPJも、「ひとごとじゃないよ!人質司法」プロジェクトなどを通して、司法の改革に尽力していきます。本年も、どうぞよろしくお願いいたします。


科学者ネットワーク委員長 稲葉 光行

司法における「科学的適正性」の推進に向けて

 新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。昨年、袴田事件において証拠の捏造を理由に逆転無罪が確定し、捜査および証拠の扱いにおける「科学的適正性」の重要性が社会全体で再認識されました。私たちIPJは、司法における科学的適正性の推進を目指し、国内外の最新動向の調査や、えん罪が疑われる事件に対する科学的検証を進めてまいりました。本年も、科学の力を通じて、公平で信頼される司法制度の実現に向けて尽力してまいります。皆様のご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。


広報委員長 古川原 明子

IPJサポーターの皆様、ありがとうございます

 昨年も、たくさんの応援をいただきました。ご寄付をはじめ、イベントへのご参加、情報の拡散、ニュースレターの登録など、えん罪問題に関心をもってくださる皆様方からの支えが、私たちの大きな励みになっています。

 えん罪被害者や、そのご家族、支援者からのご協力もあり、複数のシンポジウムやイベントはどれも成功裡に終わりました。今年もさっそく2件のイベントの開催が決まっています。ぜひご参加ください。IPJメンバー、学生ボランティアをこれからも応援していただけますよう、よろしくお願いいたします。

今西事件総括シンポジウムを開催します!

■企画趣旨■

 SBS検証プロジェクトの設立によってSBS/AHTに関する本格的な検証が開始されてから8年が経過しました。SBS/AHT事件やそれらが依拠するSBS/AHT仮説そのものをめぐって日本でも議論の進展が見られ、SBS/AHT仮説の妥当性・科学性が争点化され、2018年以降には11の事件で無罪判決が確定しました。

 2024年11月28日に控訴審で逆転無罪判決が言い渡された「今西事件」(検察官が上告中)では、改めてSBS/AHT仮説の問題点に反省が迫られました。この間、いわゆる「三徴候」に基づく起訴は行われなくなり、厚労省「子ども虐待対応の手引き」も改訂されて、三徴候に関する記述は削除されました。しかし、個々の事件では新たな「徴候」に基づく虐待診断・判断が行われ続けています。その最たる例が、今西貴大さんの事件です。

 本シンポジウムでは、今西事件・逆転無罪判決を総括し、SBS/AHTをめぐる議論の現在地を振り返るとともに、今後の課題についての議論を深めます。


■日時■

 2025年2月28日金曜日 18時~20時(17時45分開場)

■対面会場■

 リファレンス大阪駅前第4ビル貸会議室2307AB

  〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1-11-4

 【ウェブ配信あり】※撮影禁止ゾーンあり ※参加無料、お申込み必要

■お申込み・お問い合わせはこちらから


■プログラム・登壇者(予定)■

①今西事件逆転無罪判決の位置づけ

川上博之(大阪弁護士会、SBS検証PJ)

②今西事件控訴審を医学的に検証する 

司会 宇野裕明(大阪弁護士会、SBS検証PJ)

秋田真志(大阪弁護士会、今西事件弁護団、IPJ、SBS検証PJ)

小保内俊雅(多摩北部医療センター)

③これまでを振り返って

司会 陳愛(大阪弁護士会、SBS検証PJ)

川崎拓也(大阪弁護士会、IPJ)

今西貴大(今西事件当事者)ほか


共催:イノセンス・プロジェクト・ジャパン /  SBS検証プロジェクト

協力:今西事件弁護団、今西貴大さんを支援する会、日本国民救援会、JSPS科研費JP23K01152、IPJ学生ボランティア

第二回人質司法サバイバー国会を開催します!

 昨年の袴田事件の再審無罪判決は、人質司法による虚偽の自白の強制を「捏造」として強く批判しました。このイベントは、袴田事件発生から約60年が経過した今も続く、人質司法の実態を明らかにします。昔のそして今の「人質司法サバイバー」たちが永田町・国会に集まり、60年間の被害の実態をつなぎ、検証し、法律と制度の改正を提言します。

 2023年11月第一回イベントでは様々なサバイバーが集合し、人質司法の全体像を明らかにしました。そして昨年3月記者会見は拘置所の医療問題にフォーカスしました。今回の第二回イベントでは、人質司法が日本経済に与える影響、ビジネス界からどう見えるのか、に焦点を当てていきます。

■日時■

 2025年3月4日火曜日 12時~13時半(11時50分開場)

■会場■

 参議院議員会館(予定) ※撮影禁止ゾーンあり ※参加無料、お申込み必要

■お申込み・お問い合わせはこちらから

■登壇者(予定)■
 国会議員の皆様
 袴田ひで子さん
 袴田事件弁護団
 江口大和さん(「黙秘権」を問う国賠訴訟)
 大川原正明さん(大川原化工機事件)
 島田順司さん(大川原化工機事件)
 角川歴彦さん(角川人質司法違憲訴訟)
 村木厚子さん(法制審議会 新時代の刑事司法制度特別部会委員)
 山岸忍さん(プレサンス元社長冤罪事件)
 村山浩昭さん(元裁判官・弁護士)
 小坂井久さん(日本弁護士連合会取調べ可視化本部本部長代行)
 イェスパー・コールさん(エコノミスト)ほか

■基調講演(随時、更新します)
 袴田事件弁護団

共 催
 ひとごとじゃないよ!人質司法プロジェクト
 (by ヒューマン・ライツ・ウォッチ × イノセンス・プロジェクト・ジャパン)
 袴田事件弁護団

[お問い合わせ] endhostagejustice@gmail.com

IPJ活動報告

(1)支援状況

新規申込件数:8件(11月)、4件(12月)

審査中件数:31件(11月)、29件(12月)

現在支援件数:5件

(2)神戸質店事件

 目撃証言に関する専門家意見書が届き、その内容を検討しております。再審請求書の作成にも取りかかっており、春頃に再審請求を行う予定です。

 また、学生ボランティアが主体となったシンポジウムを4月頃に開催予定です。詳細が決まり次第、ホームページ、SNS、ニュースレターでお知らせしますので、ぜひご参加ください。

IPJメンバーの活躍

西愛礼『冤罪 なぜ人は間違えるのか』出版!

 IPJメンバーの西愛礼が集英社インターナショナルから『冤罪 なぜ人は間違えるのか』を出版しました。2023年出版の『冤罪学』を一般市民にも分かりやすくという思いで、新書の形にまとめたものです。IPJの意義、活動についても触れられています。冤罪から導かれた教訓を全ての人々に届けたいというメッセージ、ぜひこちらからお読みください。


IPJメンバー2人が季刊刑事弁護新人賞を受賞!

 拝地旦展と松本亜土(いずれも大阪弁護士会)が、第22回季刊刑事弁護新人賞(主催:現代人文社、協賛:株式会社TKC)で、優秀賞と特別賞をそれぞれ受賞しました。IPJの活動に尽力しながらも個々の弁護活動で素晴らしい成果を上げた両者の受賞レポートは、季刊刑事弁護121号に掲載されています。

  なお、第21回季刊刑事弁護新人賞でも、IPメンバー2人(最優秀賞を西愛礼、優秀賞を湯浅彩香)が受賞しています。


連載コラム「韓国の捜査もすごい!」最終回

 韓国調査旅行を振り返り、法律家と科学者の協働の重要性、そして日本における課題をまとめた最終回をホームページに写真と共に掲載しています。全文はこちらから!

学生ボランティア活動報告

(1)京都女子大学

【青木惠子さんへの聞き取り調査】

私は、今回初めて聞き取り調査に参加させて頂きました。

青木さんからは、当時の心境もふまえた違法な取調べの実態や、刑務所内での生活から、現在の活動に至るまで、貴重なお話を伺うことができました。取調べにおいては、想像を遥かに越える捜査官による暴言があったことや、自白強要のために、手段を選ばず、酷い状況下に置かれていたことを知り、とても驚きました。

またお話の中で特に印象的だったのは「再審請求をする上で引き受けてくれる弁護士が少ない」ことです。このような背景事情により、えん罪被害者の方が、長期に渡ってえん罪事件と戦うことに繋がるのだと思いました。

そして今回の聞き取り調査は、改めて人質司法の恐ろしさを実感するとともに、刑事司法の課題や、裁判におけるサポートの見直しなどを考えさせられる機会になりました。(京都女子大学 M.O)>全文はこちら

【鴨志田先生への聞き取り調査】

 京都女子大学IPJ学生ボランティアでは、11月21日(木)に大崎事件を担当されている、鴨志田先生の事務所に伺い、聞き取り調査を行いました。鴨志田先生は、私たちの質問に対して、分かりやすく要点をまとめてお話してくださったので、資料だけでは理解するのが難しい部分も理解することができました。再審制度やジェンダーバイアスの問題についても鴨志田先生のご意見をお聞きすることができたので、12月15日(土)に京女IPJ学生ボランティア主催で開催されるシンポジウム、『すべての人に公正な司法を​∼えん罪事件調査を通じて∼​』でもこの経験を活かして準備を進めていきたいです。(法学部法学科4回生 岡田優奈)>全文はこちら


(2)甲南大学

 2024年度も、甲南大学のIPJボランティアは活発に活動中です!夏休み以降の活動を、まとめてお知らせします。

1)まとめ記事 → 全文はこちら

2)高校でえん罪に関するワークショップを開催! → 全文はこちら

3)今西事件控訴審 判決期日を傍聴しました → 全文はこちら

4)SDGマルシェに出展しました! → 全文はこちら


(3)龍谷大学

 9月5日に大阪地裁に裁判傍聴に行きました。弁護人の主張にも検察官の主張にも説得⼒を感じ、審理が進むにつれて判断に迷ってしまいました。法廷で交わされる言葉の一つ一つが、誰かの未来を左右する可能性があることを考えると、司法の重みをひしひしと感じます。論理的な思考力や表現力を持つことの重要性を再認識すると同時に、巧みな弁論をすることへの憧れも抱きました。法廷通訳人がいる裁判だったので、傍聴後に法廷通訳⼈について調べ、公正で透明性の高い法廷通訳のあり方が課題であることを学びました。>全文はこちら