今西事件逆転無罪判決に対する検察官の上告に強く抗議します
【IPJ声明】
IPJの支援事件である今西貴大さんの事件について、2024年11月28日に大阪高等裁判所が言い渡した全面的な無罪判決に対し、本日、検察官は上告を申し立てました。
私たちは、検察官の上告に対し満身の怒りをこめて、強く抗議します。
本件は、一審に2年、控訴審に3年半以上をかけて、20人以上に及ぶ専門家証人の尋問を経て無罪判決が言い渡されたものです。控訴審判決の内容を踏まえても、およそ上告すべき事件とは言えません。
今西さんは、6年間の長期にわたり被疑者・被告人の地位に置かれ続けています。公益の代表者たる検察官としては、上告せずに早く無罪判決を確定させ、本件のえん罪原因について早急な検証をすべきでした。
私たちは支援決定以降、一丸となって今西さんの雪冤に向けて闘ってきました。一刻も早く、今西さんとご家族が刑事司法の負担から解放されるよう、無罪判決が確定するまで、今西さんの支援を続けます。
引き続きましてのご支援を、よろしくお願いいたします。
2024年12月12日
イノセンス・プロジェクト・ジャパン メンバー一同
年明けに、今西事件逆転無罪判決についてのシンポジウムを予定しております。詳細が決まり次第、皆様にお知らせします。ぜひご参加ください。
【今西事件についての検察官の上告申立に対する弁護団の抗議声明】
許しがたい暴挙です。
検察官は、本日、今西貴大さん(以下、「今西さん」といいます)に対する大阪高等裁判所第3刑事部の逆転無罪判決(2024年11月28日)について上告を申し立てました。
冤罪によって、今西さんを6年以上もの長期にわたり被疑者・被告人の立場に起き続けた検察官は、この苦しみをさらに甘受させ続けようというのです。
逆転無罪判決が明快に認定したとおり、本件の証拠は、本件の事件性を全く示していません。そして、逆転無罪判決が明確に述べるとおり、今西さんが虐待していた事実をうかがわせる事情も一切ありません。これは、本件事件性の推認を妨げる消極的事実です。逆に、今西さんが本児をこよなく愛し、大切に育てていたのです。そして、今西さんを知る多くの支援者たちが、今西さんの無実を確信して、多数の署名を集めたのです(オンライン署名を含めて、短期間に7000筆を超える署名が集まりました)。証拠を正当に評価しようとせず、今西さんだけでなく、多くの人の思いをも踏みにじった検察官の上告は、「検察の理念」(2011年9月30日)が求める検察官のあるべき姿勢を忘れたあまりに不公正で愚かな暴挙であり、著しく正義に反します。弁護団は激しい怒りをもって上告申立に強く抗議します。
検察官による上告申立は、一審で13名の専門家が証言台に立ち、控訴審においても、さらに8名の専門家が証言台に立つという異例の事実調べを経て、十二分に証拠関係を精査した上でなされた大阪高裁の逆転無罪判決に対して、上告理由など全く見い出せません。
検察官による上告申立は、日常生活を取り戻したいという今西さんの切実な願いを踏みにじるものであり、有罪主張をしてきた検察庁の面子を保とうとするものという他ありません。今西さんが抱く失望感や無力感に思いを致すにつけ、強い憤りを感じざるを得ません。
弁護団は、不当な上告申立に決して屈することなく、最高裁において、一刻も早く、正しく証拠関係を評価した大阪高裁判決が確定するよう、全力で取り組んでいく所存です。
今西さんは無実です。本件は明らかな冤罪です。無実の人が、一日でも早く日常を取り戻すことができるよう、また日本の刑事司法が冤罪を生み出すことのない健全なシステムであるよう、みなさまには今西事件を注視し続けていただきたくお願い申し上げます。
2024年12月12日
主任弁護人 弁護士 川﨑拓也
弁護人 弁護士 秋田真志
弁護人 弁護士 西川満喜
弁護人 弁護士 湯浅彩香
弁護人 弁護士 川﨑英明
*SBS検証プロジェクトのブログより転載