甲南大学の夏のオープンキャンパスで、IPJ学生ボランティアが模擬裁判を上演しました。午前・午後に1回ずつ開催された模擬裁判には、合計で150名以上が来場しました。
模擬裁判で扱った事案は殺人被告事件。シナリオは甲南大学法学部を2020年3月に卒業した学生たちが3年次のゼミで作成しました。神奈川県で2017年に起きた実際の事件がモデルです。同事件については東京高裁で2020年1月23日に出た無罪判決が確定しています。
模擬裁判に出演したのは、2回生から4回生の甲南大IPJボランティア6名でした。裁判員役は、来場者の中から希望者を募りました。刑事裁判の大原則「疑わしきは被告人の利益に」を、模擬裁判をとおして来場者に伝えられたでしょうか。甲南大法学部2回生の西村がレポートしてくれました。
甲南大学法学部教授・笹倉香奈
夏期オープンキャンパスで、IPJボランティアとして法学部の模擬裁判に参加しました。
これまで笹倉教授のゼミで模擬裁判に取り組んでおられる先輩方の姿を近くで見ていましたが、私自身、模擬裁判に参加するのは初めての経験でした。大学受験を控えている高校生に向けて行った模擬裁判ですが、私にとっても非常に良い経験になりました。普段学んでいる法律学が、よりリアルに感じられ、改めて法律が社会にもたらす影響について考えさせられました。
当日は、予想以上に多くの方にご参加いただきました。私は証人役として参加しました。証人尋問の最後には、裁判員役の高校生から鋭い質問をいただき、終始程よい緊張感のある良い雰囲気で進めることができていました。模擬裁判終了後には、多くの方に、「勉強になり、おもしろかった」というようなありがたい感想をいただき、非常に嬉しく思っています。
今回、扱った事件は実際に起こった、無罪判決が確定した事件です。改めて刑事事件の鉄則である「疑わしきは被告人の利益に」という言葉の重みを感じました。刑事裁判は非常に重大な事件を扱うため、絶対に間違いがあってはいけません。検察官が立証の責任を負い、その立証に合理的な疑いが残る場合には、被告人は無罪とされなければなりません。しかし、実際には起訴された事件の99.8%に有罪判決が言い渡され、えん罪で苦しむ方々がいらっしゃいます。えん罪を起こしてはいけないという思いは、法曹三者、どの立場であっても共通です。刑事裁判の世界が、「本来の正義を守る場所」であるため、よりIPJボランティアの活動を積極的に行っていきたいと思います。また、今回の模擬裁判をきっかけに甲南大学法学部を志望し、いつか私たちと一緒にIPJボランティアとしてえん罪救済に取り組んでいけたら光栄です。
甲南大学2回生 西村友希