【学生ボランティア(中央大学)】グアンタナモ収容所から見る人権と許し

令和6年(2024年)3月20日に開催された、一般社団法人「刑事司法未来」主催のイベント「憎しみを越えて〜元グアンタナモ収容者と考える 世界の分断と和解」に参加してきました。

グアンタナモ米軍基地収容所は、アメリカがキューバから租借した土地に設置され、アメリカ同時多発テロ事件後にアルカイダの首謀者などを収容するために使用されました。ブッシュ大統領の大統領命令により、アルカイダとの関係が疑われる者が「敵性戦闘員(enemy combatant)」として無期限に身体拘束され、国防総省管轄の軍法委員会(military commission)で裁かれることとなりました。

その運用に対しては、人権侵害や国際法違反の疑いが指摘され、被収容者に対する法的な保護や裁判手続きの不足、不当な拘束、自白を強要するなどの尋問、拷問の報告が相次ぎました。特に、拷問や非人道的な取り扱いは国際社会から広範な非難を受け、収容された人々の多くが中東やアフリカ系の出身であり、イスラム教徒であることから人種や宗教に基づく差別も指摘されました。

2009年、オバマ政権でグアンタナモ米軍基地収容所の閉鎖が表明されたにもかかわらず、現在も収容されている人々がいます。

イベントでは、モハメドゥ・ウルド・スラヒさんを取材した動画を視聴し、リモートでご本人との質疑が行われました。モハメドゥさんは、アルカイダの首謀者という濡れ衣を着せられ、約15年間もグアンタナモ収容所に不当に拘束されました。2010年に釈放命令を勝ち取ったにもかかわらず、実際に釈放されたのは2016年でした。彼の経験から、公権力による人権侵害は許されるべきではないことが改めて確かめられました。

モハメドゥさんは、ご自身の経験を通じ、「どん底に落とされたら許す準備が出来る。」、「調査官だけでなく、国も全て、皆を許す。」という回復のあり方を示唆しました。そのお話から、過去の出来事から解放されるだけではなく、国家の過ちを許し、和解し、再び結束し、平和を取り戻す必要性を感じさせられました。しかし、日本政府からビザの発給を拒否されたモハメドゥさんにとっての回復は今も続いています。人権侵害に対する取り組みとして、情報開示による公平な審査の必要性を強く感じさせられました。彼の訴えから、人権を尊重し、公正な裁判の原則を守ることの重要性を改めて考えさせられました。

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中央大学法学部4年生
中野 栄二