韓国の大検察庁(最高検察庁)にはデジタルフォレンジックセンターがある。2008年に設立され、デジタル捜査課・サイバー技術犯罪捜査課の他にDNA型・法化学・法工学・法心理学・文書鑑定など法科学鑑定分野を含む。
NDFCの鑑定職員は170名で、大学の修士・博士の学位取得者が採用される。
NDFCの業務
鑑定のチェック
NDFCは、警察機関や法科学研究院(国科捜を含む)から送致された鑑定の再調査・再鑑定の他に、直接(独自)捜査も行う。ここで重要な点は、検察の補充捜査の一環として、専門家が科学的証拠(鑑定書)のチェックを行うという機能である。つまり訴追機関の内部ではあるが、第三者の法科学研究所が鑑定書を見直し、問題があれば再鑑定するのである。
このような機能は日本にはなく、地方警察本部の科学捜査研究所から提出された鑑定書は、ほとんどチェックがなされないまま裁判所に上がってしまうのである。台湾の法務部にも法医研究所などがあって、警政署(日本の警察庁)の鑑定をチェックする機能を有している。
検察庁の独自捜査の鑑定
独自捜査の例としては次の捜査があり、有罪立証を客観的に確立するための鑑定が実施される。
・国家情報院からの通報によるサイバー事件
・海外からのサイバー攻撃
・国家の犯罪
DNA型鑑定課
DNA型鑑定課では、一般に実施されるSTR型検査のほかに、Y染色体DNA、ミトコンドリアDNA検査も実施される(日本の科捜研ではミトコンドリアDNA鑑定は実施していない)。DNA型データベースは法科学研究院(NFS)が構築したものを使用するが、それとは別に独自に収集した被疑者DNA型データベースも使用する。また植物など人間以外のDNAも収集しデータベースを構築している。
法科学鑑定課
次の鑑定が実施される。
・化学鑑定科:毛髪や爪などから規制薬物の検出
・マルチメディア科:不明画像の可視化・鮮明化・データ復元
・火災原因捜査科:防火設備・建物の設備不良などチェック
・文書鑑定科:不明文字・追加文字の検出、インクの種別鑑定
・心理鑑定科:子供、供述弱者や(トラウマ状態の)被害者の供述分析
デジタル捜査課
・デジタルデータの採取
データのコピーは全体の情報をリスト化し、必要な物を選別採取するが、現場で大変な場合は、立会いのうえ丸ごとコピーする。
・PCやモバイルのセキュリティー安全性に関する職員教育を実施している。
サイバー捜査課
・ハッキング、フィッシュング詐欺など発信位置情報の特定
・麻薬取引、ダークサイトの摘発
・技術流出犯罪の捜査
・AIを用いた画像・声の検出・解析を基に著作権侵害事件を捜査
(3)につづく
平岡 義博(ひらおか・よしひろ)
過去の記事はこちらから
【コラム】韓国の捜査もすごい!ー韓国調査旅行記
(1)ソウル特別市警察庁捜査局」