私たちは 9 ⽉ 5 ⽇に、⼤阪地⽅裁判所で裁判傍聴をしてきました。参加した学⽣の⼤半にとっては、初めての裁判傍聴でした。
公判は、検察官による起訴状の読み上げから始まります。その後は被告人側の主張の確認等、冒頭陳述、証拠の取り調べという流れで審理が進められます。
今回は、日本語を十分に理解しない韓国語話者の被告人のために、日本語と韓国語の通訳する法廷通訳人が複数いました。通訳の質や、⽂化的な差異による誤解は、裁判の公平性に影響を与える可能性があります。そのため弁護人は、⾔葉の意味を慎重に確認しながらやり取りを進めていました。例えば、「万引き」という⽇本語に対応する⾔葉は、韓国語には存在しないそうです。「代⾦を⽀払わずに無断で持ち去る」というこの⾏為を、「窃取」と⾔い換えて、その後は進められました。このように、被告人の権利を保障して、適正な裁判を実現するために、弁護⼠が尽⼒していた姿がとても印象的でした。
そして、検察官と弁護人は、被告人が被害者を追いかけて怪我をさせ、カバンを奪った行為について「強盗致傷罪」か「恐喝罪」のどちらに当たるかについて対立していました。検察官は、被告人が被害者を脅して財物を奪おうとしたと主張し、「強盗致傷罪」を適用すべきだと主張しました。一方、弁護人は被告人の行為は被害者を抵抗できない状況に追い込むほどのものではなかったと反論し、「恐喝罪」が適切だと主張しました。この事件の争点は、被告人の行為が強盗罪の暴行脅迫にあたるか否かです。裁判官は双方の主張を検討し、適切な判断を下すことになります。
私は⾃⾝の意⾒を明確にしようと傍聴に挑んだのですが、両者の主張に説得⼒を感じ、審理が進むにつれてますます判断に迷ってしまいました。裁判官は、冷静な分析⼒を持つ者にしか務まらないことを実感させられました。
法廷で交わされる言葉の一つ一つが、誰かの未来を左右する可能性があることを考えると、司法の重みをひしひしと感じます。論理的な思考力や表現力を持つことの重要性を再認識すると同時に、巧みな弁論をすることへの憧れも抱きました。
そして、傍聴後は法廷通訳⼈の役割と課題について調べてみました。法廷では証拠に基づく裁判が行われ、発言は証拠となります。そのため、法廷通訳には正確性と中立性を厳しく求められます。しかし実際には、言語間や文化間の差異、特に文化的背景を持つ訳語などでは、通訳人の判断や解釈は避けられません。
法廷通訳における「正確性」とは、単一の意味を持つ概念ではなく、常に解釈が入り込む余地があることを理解しました。今後の課題として、この認識を前提に、より公正で透明性の高い法廷通訳のあり方を模索していく必要があると考えます。
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