12月7日に龍谷大学で行われた国際シンポジウム「東アジアにおけるえん罪救済のこれまでとこれから」に参加しました。
当日はIPJだけでなく、台湾、マレーシア、韓国でえん罪救済に取り組んでいる方々が参加されていました。
シンポジウムは「取調べと人質司法」、「再審法改正」、「死刑とえん罪」の3つのセッションで構成され、それぞれのセッションでは、各国の制度改革や問題点について議論されました。来年1月から放送予定の、IPJをモデルとしたWOWOW連続ドラマ「シリウスの反証」の松本優作監督によるスペシャルトークもありました。
当日の議論を通して、日本の司法制度の改革が近隣の国に比べて大きく遅れている印象を受けました。
台湾と韓国では、刑事事件において自白が重要とされています。その自白を得るために様々な問題が発生してきたため、その問題を是正していくために刑事訴訟法の改正か進んでいます。しかし日本は、未だに捜査官の思い描いたストーリー通りの供述を被疑者から得ようとしています。その供述を得るために、長時間にわたる取調べや、取調べでの被疑者への脅迫紛いの行為が行われることもあります。被疑者が黙秘や否認を続けると、複数の被疑事実を使い分けることで、長期間勾留されるなど、人質司法といわれる状況が蔓延しています。このような取調べや身体拘束から逃れるために虚偽の自白をしてしまう事例もあり、えん罪が発生しています。
韓国では長期間にわたる取調べが規制されたり、取調べへの弁護士の立会いも被疑者の権利として2007年に認められました。台湾でも同じく、弁護士の立会いが2021年から被疑者の権利として認められており、取調べの録音・録画などもかなり前から行われています。
このように近隣の国では、取調べの可視化や長時間にわたる取調べの規制、取調べにおける弁護士の立会いの権利などが、過去の反省を踏まえて導入されています。一方で、日本では2016年になって刑事訴訟法において一部の事件(全体の2~3%)の取調べの録音・録画が義務付けられました。しかし取調べの可視化が義務付けられた今も、虚偽の自白によるえん罪や、自白を取るための人質司法は発生しています。
逮捕されていない被疑者の取調べを含め、全ての事件の取調べの録音・録画、弁護士の立会いなどを義務付けてこそ、現在も日本で続いている人質司法が解決され、えん罪の減少に少しでも繋がっていくのではないかと思います。
今回のシンポジウムを通して、日本の刑事司法で、えん罪が生まれる原因のひとつが捜査段階にあるとさらに強く思いました。
刑事訴訟法の更なる改正や、再審法改正など近隣の国の方が進んでいる仕組みを日本も取り入れ、えん罪の根本的な減少への取り組みや、現在えん罪で刑務所に服役中の方の救済がもっと迅速に進んでいって欲しいと思いました。
【甲南大学2回生 関根舞弥】

12月8日にアジア・イノセンス・ネットワーク大会2日目の交流会に参加しました。イノセンス・プロジェクト・ジャパンのメンバーのほか、台湾イノセンス・プロジェクトと台湾民間司法改革基金会、そしてマレーシアの関係者が参加しました。この交流会は、東アジアでえん罪救済に関わる関係者のみで、各団体の活動の現状や課題について共有し、意見交換をするものでした。私たちIPJの学生ボランティアも、交流会に参加することができました。
交流会を通して、日本の再審制度の課題を知ることができました。日本では、確定有罪判決に対して再審請求を行った場合、裁判所の判断までの間に数年、時には十数年の年月を要することがあります。台湾の司法制度の話を聞いていると、日本よりもはるかに速いペースで再審請求に対する判断が行われていました。慎重に判断されることが一概に悪いことだとは言えないかもしれませんが、日本では再審請求に対して裁判所と打ち合わせる機会も与えられず、数年後に棄却の判断のみが下されることがあります。日本の再審制度を見直す良い機会になりました。
また、台湾の司法機関の再審に対する考え方が日本と大きく異なるものであることを知りました。日本では、検察官・裁判官は全体として再審制度に消極的です。それに比べて台湾では、最高裁は再審に積極的だということでした。再審に対する考え方が日本と大きく異なっていることを知り、興味を持ちました。
交流会に参加された方々は非常に親しみやすく、私たちを「仲間」であると言ってくださいました。それぞれが各国でえん罪事件に真摯に向き合っていることを知り、強い刺激を受けました。全世界で仲間が頑張っているのを見て、私たちもさらに積極的に活動していこうと思える機会になりました。
私たちが行っているえん罪事件の救済や、司法制度の改革は短い期間で結果が出るものではなく、結果を出すには胆力が必要です。制度の改革を促すには世界の潮流が大きな意味を持ちます。今回のような交流を今後も行い、私たち市民の中で現行の制度に問題意識を持つ人が少しずつ増えていくことが重要だと考えています。
【甲南大学2回生 溝端一登】



