はじめに
学会で京都に行く機会があったため、IPJ支援事件(今西事件)ですでに約5年間も勾留されている今西貴大さんの面会に行って参りました(事件について詳しくは、こちらをお読みください)。当日は、関西学院大学、甲南大学の学生ボランティアと日程を合わせ、三大学合同で大阪拘置所に行くことができました。
私は感染症の罹患者やその周囲の方々の健康問題の支援も行っていることから刑事収容施設内の医療に関心があり、今西さんに拘置所内でのコロナワクチンの接種状況について伺いました。
刑事収容施設と新型コロナウイルス感染症
令和元年(2019年)12月に中国湖北省武漢市で原因不明の肺炎(新型コロナウイルス)の発生が報告された後、新型コロナウイルスは世界中に拡大しました。日本国内では新規感染者数が増加したため、政府は令和2年(2020年)4月7日以降、緊急事態宣言を発出しました。
刑事収容施設は「三密」、すなわち、密閉空間、密集場所、密接場所という3つの条件が重なる感染を拡大させるおそれの大きい場所といえます。施設内での感染症対策はとても重要です。そこで、新型コロナワクチン接種の手続きについて今西さんに伺ったところ、住民登録地から接種券を送付してもらったそうで、煩瑣な仕組みだと思いました。
勾留されている人たちが健康を害した場合には、訴訟資料を十分に読むことすらできなくなり、集中力を欠いた状態では十分な防御の準備すらできなくなってしまいます(この点については、学生ボランティアレポート「人質司法サバイバー国会と冤罪被害者支援」https://innocenceprojectjapan.org/archives/4747も、ご覧いただければと思います)。
ワクチンを受ける際は、感染症予防効果と副反応のリスクの双方について、正しい知識を持つ必要があり、ワクチンを打つかどうかは基本的に本人の意思に委ねられると考えます。ただ、必要としている人々にワクチンの提供が遅れることは問題であると感じました。
さいごに
20分間という制限のある面会を通して、短い時間ではありましたが、改めて刑事収容施設の医療環境のあり方について学ぶことができました。貴重なお話をしてくださった今西貴大さんに深く感謝申し上げます。
今西さんは勾留中に哲学系の本だけではなく、刑事訴訟法や民事訴訟法などの法律の本まで読まれているとのことで勉強熱心な方だと思いました。なによりも早急に保釈されて、閉鎖的空間ではなく公園などの青空の下で会えることを願っています。
中央大学法学部3年生 中野 栄二